アウトドア用のスリーピングマットの断熱力(R値)を測る統一規格『ASTM F3340』。現行版F3340-22と旧版F3340-18の違いから、R値の目安、2026年最新の採用メーカー事情までやさしく解説します。

R値の意味がわかると、夏用・3シーズン用・冬用のマットを迷わず選べるようになります。
この規格のおかげで、メーカーが違うマット同士でも断熱力を正しく比べられるようになりました。
主に採用しているのは、軽さ・コンパクトさ・高い断熱性が求められる登山やトレッキング向けマットのメーカーです。
採用メーカーの製品には、2020年以降のモデルからパッケージに『ASTM F3340』のR値が表示されています。2026年現在では、多くの主要ブランドで当たり前の表示になりました。


この記事でわかること
- R値とは何か、なぜ大切なのか
- 『ASTM F3340-18』と『ASTM F3340-22』の違い
- 季節別のR値の目安と採用メーカー
登山・ソロキャンプ向けマットレス比較一覧表(メーカー/モデル・R値・重さ・厚さ・断熱効率・タイプ)です。約80程度の製品のR値を表にまとめています。
著者PROFILE


名前:Masaki T
経歴:大手アウトドアショップで寝袋・マットのコーナーを中心に約4年間の接客経験に加え、独自の調査・研究を重ね、アウトドア情報を発信し15年以上。無積雪登山・雪山登山・クライミング・アイスクライミング・自転車旅行・車中泊旅行・ファミリーキャンプなど幅広くアウトドアを経験。(詳細プロフィール)
そもそもアウトドア用マットの断熱力(R値、R-value)とは?


R値(R-Value)は「熱抵抗値」を意味する言葉です。マットのカタログでは「R値」または「R-Value」と表記されることがほとんどです。もともとは建築業界で断熱材の性能を示す指標として使われてきました。
それをアウトドア用マットの断熱力にも応用したのがR値です。



難しく感じるかもしれませんが、簡単に言うと「地面から体温がどれだけ逃げにくいか」を表す数値です。
マットは、体と地面の間に挟む断熱材のようなものとイメージするとわかりやすいでしょう。
体温は地面に向かって逃げようとします。マットのR値が高いほど、その熱の流れをしっかりせき止められます。
寝袋は空気を暖めて保温するものです。地面からの冷えまでは防いでくれません。そのため、冬用の暖かい寝袋を使っていても、マットのR値が低いと底冷えしてしまうことがあります。
数値の感覚としては、R値0.1〜0.5程度の違いは体感しにくいものの、R値2.0と5.0のように差が大きくなると、暖かさの違いをはっきり感じられます。
アウトドア用マットの断熱力を測る規格『ASTM F3340』とは?
ここからは、断熱力を正しく比べるためのものさし『ASTM F3340』について、詳しく見ていきましょう。
- 各社バラバラだった測り方と、統一規格が生まれた理由
- 『ASTM F3340』を採用しているメーカー一覧


[出典:thermarest]
各社バラバラだった測り方と、統一規格が生まれた理由
統一規格が登場する前は、R値の測り方がメーカーごとに異なっていました。そのため、同じメーカーの製品同士なら比較できても、他社製品との比較は難しい状況だったのです。
きっかけは2016年。複数のマットメーカーが集まり、断熱力を正しく比較できる共通の測定方法づくりが始まりました。サーマレストを中心とした企業連合の取り組みが実を結び、2019年に規格が完成しました。
サーマレストの公式ブログによると、この規格ができたことで、キャンパーは複数のマットのR値を直接比較できるようになったとのことです。
※ASTMインターナショナル (ASTM International) は、世界最大・民間・非営利の国際標準化・規格設定機関。工業規格のASTM規格を設定・発行している。(wikipedia)
『ASTM F3340』を採用しているメーカー一覧
2026年7月時点で、マットのR値測定に『ASTM F3340』を採用している主なメーカーは次のとおりです。
- Therm-a-Rest(サーマレスト)
- NEMO(ニーモ)
- EXPED(エクスペド)
- Sea to Summit(シートゥサミット)
- Big Agnes(ビッグアグネス)
- KLYMIT(クライミット)
- Mountain Equipment(マウンテンイクイップメント)
- REI Co-op(アールイーアイ)
- mont-bell(モンベル)
主要な海外アウトドアブランドでは、広くこの規格が採用されています。モンベルは公式サイトでスリーピングパッドのR値を公開しており、国産メーカーの採用も少しずつ進んでいます。一方で、イスカのように製品にR値は表示していても、ASTM F3340準拠かどうかを明記していないメーカーもあります。
普及の後押しをしたのはアメリカの大手アウトドア用品店REI。自社サイトで販売するマットに『ASTM F3340』のR値表示を必須にしたことで、業界全体に広がりました(SectionHikerなど海外メディアが報じています)。
『ASTM F3340-18』と『ASTM F3340-22』の違いは?



2020年ごろから知られている名前は、最初のバージョンである『ASTM F3340-18』です。
この規格は2022年6月に見直され、現在の正式名称は『ASTM F3340-22』になっています(ASTM公式ページ)。
条文レベルでの具体的な変更点は、ASTM規格そのものが有料の文書のため、一般には公開されていません。ただし、ホットプレート35℃・コールドプレート5℃といった測定の骨格は現在も変わっておらず、測定の基本的な考え方は大きく変わっていないと考えられます。
ややこしいのは、2026年現在もモンベルをはじめ多くのメーカーが、製品ページやパッケージで「ASTM F3340-18」の表記をそのまま使い続けている点です。店頭やカタログで探すときは、「F3340-18」の表記もASTM F3340系のR値表示として理解しておけば問題ありません。
本記事のURLには旧名称の「f3340-18」が残っていますが、この名前で検索する方も多いため、あえてそのまま維持しています。
『ASTM F3340』によるマットのR値の評価方法
それでは、実際にどうやってマットのR値を測っているのか見ていきましょう。


[出典:thermarest]
実際に人がマットに寝た時を想定した環境で測定されます。


ASTM F3340測定環境[出典:NEMO]
測定条件は、次のように細かく決められています(NEMOおよびTherm-a-Restの解説より)。
- ホットプレート(マットの上):35℃ (人間の体温を想定)
- コールドプレート(マットの下):5℃ (キャンプ地の地面の温度を想定)
- マットを膨らませる気圧(エア注入式マットのみ):3.5kPa(35mbar)
- マットを上から押す圧力:2kPa (マット上に人が横に寝たときにマットにかかる圧を想定)
- マットの測定箇所:3箇所(上部・頭側、中央部分、下部・足元側)
- 評価サンプル数:3サンプル
マットの断熱力(R値)は、35℃を保つのに必要なエネルギー量から算出されます。
- マットの断熱力が高い ⇒ 温度を保つエネルギーは少ない ⇒ R値は高くなる
- マットの断熱力が低い ⇒ 温度を保つエネルギーは多くなる ⇒ R値は低くなる
『ASTM F3340』の解説動画(英語)
サーマレストが公式YouTubeでこの規格についてわかりやすく解説しています。動画自体は前身の『ASTM F3340-18』時代に公開されたものですが、測定の考え方は現在の『ASTM F3340-22』でも同じです。
Therm-a-Rest公式動画
スリーピングパッドR値:ASTM規格および季節性ガイドの使用方法
『ASTM F3340』 によるR値の温度チャート
『ASTM F3340』のR値がどの季節に対応できるか、各メーカーが目安を公開しています。


[出典:thermarest]


[出典:SEATOSUMMIT]
おおよそ分類すると、次のようになります。
| ASTM R値の目安 | 向いている季節 |
|---|---|
| 0~2.0 | 夏向け |
| 2.0~4.0 | 3シーズン向け |
| 4.0~6.0 | 積雪期 |
| 6.0~ | 高所・極地でも対応できる |



ただし、実際の使用感には個人差があります。私自身、ASTM R値2.0のクローズドセルマットを何度も積雪期の登山で使ってきました。
厳冬期(外気温マイナス10℃以下)は深夜に底冷えを感じることもありましたが、残雪期(0℃~マイナス10℃程度)は底冷えなく眠れています。
ASTM R値は使用シーズンの目安になりますが、0.1~0.5程度の細かな違いは、最終的に自分の経験とのすり合わせが必要です。傾向として、女性より男性、細身より体格の良い人の方が寒さを感じにくいといわれています。寒さを感じやすい方は、目安よりR値が0.5高めのマットを選ぶのがおすすめです(SEATOSUMMITも同様の考え方を紹介しています)。



R値は高すぎて困ることはほとんどありません。春キャンプでR値9.0のマットを使っても、快適に眠れるはずです。暑い夏の低地では、あえてR値が低めのマットの方が地熱を感じられて寝やすいこともあります。
ただし、R値が高いマットほど重量・収納サイズ・価格は上がりやすい傾向があります。オーバースペックにも注意しましょう。
また、同じR値でもエアマットとクローズドセルマットでは寝心地が異なります。R値だけで選ばず、実際の使用感も確認しておきたいところです。


最近は、2枚のマットを重ねて使う「スタッキング」も定番の使い方になっています。R値は基本的に足し算できるため、R値2.0のクローズドセルマットとR値3.0のエアマットを重ねると、合計はおよそR値5.0相当になります。
手持ちのマットを買い替えなくても、真冬用の断熱力を作れるのが魅力です。



下にクローズドセルマットを敷けば、エアマットのパンク対策にもなります。
調理用のナイフ等を落下させてエアマットをパンクさせるケースもあります(私の山仲間が昔やってしまいました)ので、クローズドセルマットが上がいいか、下が良いかは、難しいところですね。
ASTM F3340の導入でR値はどう変わった?
海外のブログサイトに、各マットの旧R値と新R値を比較した一覧表が掲載されています。


[出典:Section Hikers Backpacking Blog]
上記の表からわかることをまとめると、次のとおりです。
- 『ASTM F3340-18』のR値は、各社独自の旧R値より0.1~1.0程度下がっているマットが多い
- サーマレスト ネオエアーモデルは新R値の方が数値が上昇
- 人気のクローズドセルマット(サーマレスト RidgeRest SOLite、Z Lite Solなど)は数値が低下
注意したいのは、R値の測り方が変わっただけで、多くの製品では仕様そのものが変わったわけではないという点です。
なお2022年には規格が『ASTM F3340-22』に改訂されていますが、この時のような大きな数値変動は特に報告されていません。
ASTM F3340とR値を理解して、自分に合うマットを選ぼう
ここまでの内容を踏まえて、マット選びで押さえておきたいポイントをまとめます。
- R値はあくまで「新品時点」の断熱力の目安
- 国内メーカーにも広がる『ASTM F3340』
R値はあくまで「新品時点」の断熱力の目安
新R値は、あくまで新品時点でのマットの数値です。フォームのへたりやエアマット内部構造の劣化により、使い込むうちに断熱性が落ちる可能性があります。



マット選びではR値以外にも、価格・重量・コンパクトさ・膨らませやすさ・寝心地・耐久性など、見るべきポイントがたくさんあります。
最近はネット通販で実物を見ずに購入する方も多いと思いますが、ご自身の用途に合わせて総合的に判断することをおすすめします。特にエア注入式マットはパンクのリスクがあるため、耐久性やメーカー保証もあわせて確認しておくと安心です。
国内メーカーにも広がる『ASTM F3340』
以前は「日本ではまだ普及していない」規格でしたが、状況は少しずつ変わってきました。モンベルは公式サイトでスリーピングパッドのR値を公開しています(表記は現在も「ASTM F3340-18」ですが、規格としては現行の『ASTM F3340-22』と同じ内容です)。
一方で、イスカのように製品にR値は表示していても、ASTM F3340準拠かどうかまでは明記していないメーカーもあります。今後も、国内メーカーへの普及は少しずつ進んでいくと考えられます。
よくある質問(FAQ)
Q. ASTM F3340とは何ですか?
A. スリーピングマットの断熱力(R値)を、メーカーをまたいで公平に比較できるようにした測定規格です。
Q. ASTM F3340-18とF3340-22の違いは何ですか?
A. F3340-18は2019年に完成した最初の版、F3340-22は2022年に見直された現行版です。測定の骨格は変わっていないと考えられます。詳しくは本文の「『ASTM F3340-18』と『ASTM F3340-22』の違いは?」の項目をご覧ください。
Q. R値は高いほど良いですか?
A. 断熱力は高いほど暖かくなりますが、その分マットは重く、かさばり、価格も上がりやすくなります。使うシーズンに合わせて選ぶのがおすすめです。
Q. 冬キャンプ・雪山ではR値はいくつ必要ですか?
A. 目安はR値4.0~6.0程度です。寒さの感じ方には個人差があるため、心配な方は目安より0.5~1.0高めのマットを選ぶと安心です。
Q. R値はマットを重ねると足し算できますか?
A. はい。クローズドセルマットとエアマットを重ねて使うと、R値をおおよそ合計した断熱力が得られます。
Q. 日本メーカーのマットもASTM F3340に対応していますか?
A. モンベルは対応が進んでいますが、イスカのようにR値は表示していてもASTM準拠かどうかを明記していないメーカーもあります。
参考にした公式情報・メーカー情報
[ASTM F3340規格]
- ASTM F3340-22 – Standard Test Method for Thermal Resistance of Camping Mattresses Using a Guarded Hot Plate Apparatus(最新版)
- ASTMインターナショナル – Wikipedia
[各メーカーの説明]
- Therm-a-Rest(Cascade Designs):The ASTM R-Value Standard: Rating Sleeping Pad Insulation
- Sea to Summit: The new ASTM R-values for sleeping mats
- NEMO:new standardized r-value: nemo’s involvement in and approach to astm f3340
- NEMO Japan:NEMOのR値(ASTM F3340)への関わりとアプローチ
- EXPED:2001: A SLEEPING MAT ODYSSEY 28.02.2020
- Mountain Equipment:What Is an R Value? | The New Standard Test for Sleeping Mats
- mont-bell:スリーピングパッドの選び方 ―アウトドアでも快眠を―
[参考ブログ]
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