<2023年更新!>寝袋の下に敷くマット(寝袋マット・シュラフマット・スリーピングマット・スリーピングパッド、以下マットで記載)のR値・R‐Valueについてまとめました。
- 2020年より、世界的なマットメーカーにおいて、アウトドア用マットの断熱力の測定規格『ASTM F3340-18』が採用されています。このページの内容もその内容を踏まえ更新しています。
- 登山・ソロキャンプ向けマットレス比較一覧表(メーカー/モデル・R値・重さ・厚さ・断熱効率・タイプ)を作成しました。 約80程度の製品のR値を表にまとめています。
目次
マットのR値(R-value)は、マットの断熱力
R‐Value(Thermal resistance value)は、日本語訳では"熱抵抗値"です。寝袋の下に敷くマットでは、R値、もしくはR‐Valueとカタログ表記されていることが多いです。(以下、主にR値の表現を使います)
R値は、建築業界等で断熱材の断熱力を表す指標として使われていますが、マットにおいても断熱力を表す指標として使われています。
具体例)
- サーマレスト Zライトソル:R値=2.0
- EXPED SYNMAT HL :R-Value=2.9
R値(R-value)の特徴
サーマレストのR値と温度チャート[出典:thermarest]
R値には
- 数値が高いほど断熱力が高い(R値1.5のマットより、R値2.5のマットの方が断熱力が高い)
- R値は足し算できる(R値1.5のマットと、R値2.5のマットを重ねると、R値はおおよそ4.0になる)
という特徴があります。
マットのR値(R-value)の実情
一見、便利そうなR値ですが、この数値を見てピンとくる方は様々なR値のマットを様々なシーズン(春夏秋冬)で使ってきている経験者で、これからマットの購入を検討している初心者の方には、実際の登山やキャンプシーンでのイメージが湧かない(「R値2.0ってどのくらい温かいの?春のキャンプで使えるの?みたいな)数値です。
長年、様々なアウトドア経験を体験してわかったのが、
- 基本的にマットのR値・断熱力高い方が快適
- 寝袋の断熱力(保温力)不足か、マットのR値・断熱力不足か判別しにくい
- 体感は個人差があり、R値から断熱力が連想するには経験が必要
ということです。
マットのR値・断熱力高い方が快適
EXPED Mega Mat(R値9.50、対応温度-48)はクッション性・断熱力ともに最高レベル
R値は、基本的に高い方が快適です。
例えば、厳冬期対応の雪の上に置いても底冷えしない高断熱マットを春のキャンプで使用しても全く問題ありません。マットの断熱力が高ければ高いほど、マットと密着している部分からの熱の損失が少なくなり、快適に睡眠できます。
ただ、テントの中で寝袋の中に入らずとも汗ばむような時期(夜でも気温が30℃くらいある真夏の低地キャンプ)の場合、断熱力の小さいマットの方が地面の冷たさが感じられて(体が冷やされて)気持ちいい、ということもあります。この暑い時期に、高断熱マットを使うと、マットから自分の体温が反射してくる感覚になり、マットと接している部分が汗ばみます。
登山の場合、2000m級のテント場も多く、夏でも夜は涼しくなります。紅葉時期は夜は一桁台の気温で氷点下になることもあります。その時の気温がどの程度下がるか、事前に予測することは難しく、ある程度断熱力に余裕のあるマットが扱いやすいです。
寝袋の断熱力(保温力)不足か、マットのR値・断熱力不足か判別しにくい
テント内で就寝時、寝袋の断熱力(保温力)不足か、マットのR値・断熱力不足か判別しにくいです。
上のグラフは、秋の八ヶ岳で、外気温とテント室内の気温が測定(22時~翌日10時頃)したものですが、気温が最も下がっている時間帯は早朝5時ごろです。この時間帯は体温も下がり、深い眠りについています。
経験的に寝袋もしくはマットの断熱力が足りていないと、体が冷えてこの夜中に目が覚めるのですが、感覚がぼんやりしているため、寝袋の保温力不足なのかマットの断熱力不足なのか、わからないことも多いからです。
「背中がなんだか冷たい、これはマットの断熱力だ」とわかるのは、明らかにマットの断熱力が足りていない時ぐらい(厳冬期の雪山テント泊など)で、多少足りていない程度では全体的に寒いと感じて、主要な熱損失原因が寝袋かマットか判別するのは難しいと思います。
体感は個人差があり、R値から断熱力が連想するには経験が必要
寝袋の保温力表記としてEN13537が普及(詳しくはこちら)していますが、主に女性が参考とする快適温度と、男性向けの下限温度の2つの表記が規格で決められています。
体の冷えに対する強さは、男性と女性では差があり、同じ性別でも個人差(やはり脂肪の多い方ほど冷えにくい傾向)あります。
例えば、紅葉時期のテント泊で、同じ3シーズン用マットを使っても、Aくんは快適に寝れても、Bさんは夜中寒くて起きた、背中が冷たかったとなる可能性があります。
「このR値なら快適に寝られだろう」という予想は、R値の公表されているマットを様々なアウトドアシーンで使って体感して、なんとなくわかってくるものかなと感じています。
マットのR値(R-value)は徐々に下がる傾向あり
どんな製品と同様に、マットも製造された直後が最も高性能で、何度も使用して月日が経過すると、製品性能が下がります。クローズドセルマットでは軟化(やわらかくなる)、体温を反射する銀フィルムも徐々に銀の色が薄くなる(反射性能が低下)などおこります。
数年経過すると銀フィルムの色が薄くなることも
アウトドア業界におけるマットのR値(R-value)の現状
R値(R-value)表記を採用しているのは登山用マットを制作するメーカーが中心
車移動のキャンプ向けマットは
- 基本車移動の通常キャンプでは、数十~百グラム単位でカリカリに軽量化する必要性がない⇒快適性を重視した余裕のある設計で作りやすい
- キャンプといえば、温暖な春から秋の需要が多い⇒R値の重要性が増す、寒い時期のキャンプユーザーがそれほど多くない。また、登山に比べ、車は積載量に余裕があるため容易にマットの買い足しで解決できる。
の背景あり、キャンプ用品中心のメーカーのマットにはR値表記が無いです。
登山では、紅葉の一桁台の気温のテント泊、雪山登山など、軽量・コンパクト性と共に高いマットの断熱性が求められるニーズがあり、マットにR値など断熱力表記されていることが多いです。
(余談:その登山用品中心のメーカーのキャンプ向けマットにも、断熱力表記される傾向があります。そのため、キャンプ用で断熱力がわかるマットを探されている方は、次に記載しているR値記載メーカーを参考にマットを探されるのがおすすめです。)
R値(R-value)の標準規格は無い(2019年11月時点) ⇒2020年より標準規格『ASTM F3340-18』が大手メーカー中心に正式採用
2019年まで、マットメーカー各社から公表されているR値(R-value)は、測定方法に関する標準規格がありませんでしたが、2020年から大手メーカー中心に標準規格『ASTM F3340-18』が採用されています。
2020年以降(大手メーカー中心にR値の測定規格『ASTM F3340-18』を採用)
アウトドア用マットの断熱力(R値、R-value)の測定規格『ASTM F3340-18』 が世界的な大手マットメーカー中心に採用されています。
この新規格のお陰で、異なるメーカー間のマットの断熱力比較が明瞭になります。(この新規格を採用しているのは、主に軽量・コンパクト・高断熱が求められる登山・トレッキング用途のマットを製造しているメーカーです。)
採用メーカーの新入荷(2020年~)の製品パッケージには『ASTM F3340-18』評価のR値が表示されています。
新R値の測定規格が開発された背景
2016年から世界規模で活動しているマットメーカーが集まり、開発されていったようです。最終的に、ASTM F3340-18と呼ばれる規格は2019年に完成、公開されました。
『ASTM F3340-18』を採用しているメーカー一覧
以下、2020年5月時点で、マットのR値測定方法として『ASTM F3340-18』を採用している主要なメーカーです。
- Therm-a-Rest(サーマレスト)
- NEMO(ニーモ)
- EXPED(エクスペド)
- SEATOSUMMIT(シートゥサミット)
- BigAgnes(ビッグアグネス)
- KLYMIT(クライミット)
現状、世界的なアウトドアメーカーは採用しています。2021年11月時点ですが、日本のアウトドアメーカーではまだ採用されていないようですが、今後普及するのではないかと思われます。
『ASTM F3340-18』 によるR値の温度チャート
『ASTM F3340-18』により算出されたR値がどの季節に対応できる程度の数値か、各メーカーが公開しています。
[出典:thermarest]
[出典:SEATOSUMMIT]
おおよそ分類すると
- ASTM R値(0~2.0):夏向け
- ASTM R値(2.0~4.0):3シーズン向け
- ASTM R値(4.0~6.0):積雪期
- ASTM R値(6.0~):高所・極地でも対応できる
となりますが、実使用による断熱力の体感には個人差があります。ASTMによるR値は大まかには使用するシーズンの目安になりますが、細かな数値の違い(例えばR値0.1~0.5の違い)は、最終的には使用する人の経験とのすり合わせが必要になります。
2019年以前(各社独自のR値測定) -[2019年11月に作成した内容]
個人的考察
『ASTM F3340-18』規格によるR値は新品のマットの断熱力指標のみ表す
新R値は、新品のマットの数値です。製品耐久性にもよりますが、何度も使用するとR値は下がっていく傾向にあります。
また、マットを評価としてR値以外にも、価格、重量、コンパクト性、膨らみやすさ、使いやすさ、快適な寝心地、耐久性など他の指標もあります。昨今、インターネット通販の普及により、実物を見ること無く購入する方も多いと思いますが、ご自身の用途を踏まえて、総合的に判断されることを推奨します。特にエア注入式マットは、パンクリスクがあるため、カタログスペックではわかりにくい耐久性、メーカー保証がどの程度であるか確認した上で判断されることおすすめします。
今後は日本も普及する?
『ASTM F3340-18』により、この規格で測定した他社間のマットのR値比較が明瞭になりました。日本のマット製造・販売メーカー(モンベル、イスカ、など)のWebサイトを見る限り、まだ『ASTM F3340-18』の測定結果は開示されていません。(メーカーによっては既にASTM F3340-18による測定結果を持っていると思われます)
今後、日本においても新規格によるR値は浸透していくと思われます。
最後に
【新】マットの断熱力(R値,R-value)測定規格『ASTM F3340-18』の評価方法、旧R値と新R値の比較等については別のページに詳しく掲載しています。ご参考に。
【新】マットの断熱力(R値,R-value)測定規格『ASTM F3340-18』の開発された背景、評価方法、採用メーカー一覧、新R値の温度チャート
主に日本で流通している複数メーカーのマットのR-valueリスト一覧も作成しました。
【2021年版】(全80以上)登山・ソロキャンプ向けマットレス比較一覧表(メーカー/モデル・R値・重さ・厚さ・断熱効率・タイプ)
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◎ 特集
- 【80製品以上】登山・ソロキャンプ向けマットレス比較一覧表(メーカー/モデル・R値・重さ・厚さ・断熱効率・タイプ)
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- 【雪山・冬山登山】の寝袋マットの選び方(積雪期)
- 【山岳・登山】の寝袋マットの選び方の基本(無積雪期)
- 【実験】八ヶ岳テント場で各マット寝心地比較[クローズドセル(厚さ1.0/1.5/2.0),セルフインフレータブル(厚さ2.5),エアーマット(厚さ5.0)]
◎ 寝袋マット・スリーピングパッド全般
- 登山・キャンプ用マットにおけるR値(R-value)とは?
- 【新】マットの断熱力(R値,R-value)測定規格『ASTM F3340-18』
- エアー注入型マットを購入する前に
- インフレータブル&エアーマットの不具合(パンク、エア漏れ、剥離)と修理
- SEA TO SUMMITのポンプがEXPED/モンベルのエアマットでも使えた
◎ 登山用マット関連
谷川岳の雪洞で宿泊
今まで様々な状況下で寝てきましたが、100泊以上経験してわかったのが、『保温力に余裕のある寝袋を用意すること』です。
雪山テントは換気にも注意(テントが埋まると酸欠に)
雨風や断熱材で守られた家と違い、アウトドアフィールドでの宿泊は天候や外気温の変化を大きく受けます。事前の天気予報より、当日の気温が-5℃程度低かった、などは日常茶飯事です。また、多くのキャンプ場は、最寄りの市街地よりも標高が高い事が多く、天気予報で知ることのできる最寄りの市街地の最低気温よりも気温が低いことが多いです。
自然の中で睡眠をとる体験は素晴らしいですが、寝袋の保温力が足りないと真夜中に早朝に目が冷めます。これは外気温は日の出前の早朝4~5時あたりが最も気温が下がり、また体温も下がっているためです。一度このタイミングで目が冷めてしまうと、身体が芯から冷え切っているため、ここからなかなか眠ることができません。そして、寝不足の状態になります。

楽しいアウトドア体験するはずだったのが、思わぬ寝不足でボーーっとしてしまうのは、もったいないです(しかも連泊でこれが続くとかなりキツイです)。少し汗ばむくらいの保温力の寝袋を選んで、ぜひ素敵なアウトドア体験を満喫してください☆
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寝袋と(キャンプ用の)マットは2つで1つです。
キャンプ用のマットの役割は主に『断熱』と『寝心地を快適にする』の2つです。
『断熱』について・・・アウトドア用の寝袋の中綿として、化繊やダウンが使われていますため、小さく圧縮して収納し持ち運ぶ事ができます。寝袋を収納袋から出して広げると、徐々に中綿が膨らみますが、人間が寝袋に入ったときに身体と地面に挟まれた中綿はぺちゃんこに潰れるため、断熱力がほとんどなくなります。大概の地面は冷たく、身体の重みで密着した部分から体温が逃げ(ヒートロス、熱損失)て、底冷えします。この現象は、体温と地熱の温度差が大きい春・秋・冬ほど熱損失量も増えます。
これを防ぐため、キャンプ用のマットを使います。キャンプ用のマット体重がかかっても断熱効果が得られるよう設計されています。

『寝心地を快適にする』について・・・最近、畳の上で寝たことはありますか?痛くて寝れなかったという方もいるのではないでしょうか。昨今の快適用品の普及により、強い刺激に敏感になっています。よほどふかふかの芝生以外、寝袋のみで寝ると地面の凸凹や石があたって痛くてまともに寝れません。その衝撃を吸収する役割としてキャンプ用マットが使われます。キャンプ用マットは大きくクローズドセルマット(銀マットなど)とエア注入式の2種類あり、寝心地はエア注入式の方が良いです。
テントの中で寝袋の下に敷くマットは、様々な用途に合わせて、多数の商品があります。皆さんの用途にあった、快適に寝れるマットが見つかりますように☆
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