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『ASTM F3340-18』によるマットのR値評価方法

アウトドア用マットの断熱力(R値、R-value)の測定規格『ASTM F3340-18』 が開発された背景、評価方法、採用メーカー一覧、新R値の温度チャートなどまとめました。

この新規格のお陰で、異なるメーカー間のマットの断熱力比較が明瞭になります。この新規格を採用しているのは、主に軽量・コンパクト・高断熱が求められる登山・トレッキング用途のマットを製造しているメーカーです。

採用メーカーの新入荷(2020年~)の製品パッケージには『ASTM F3340-18』評価のR値が表示されています。

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そもそもアウトドア用マットの断熱力(R値、R-value)とは?

EXPED DownMat Lite(エクスペド ダウンマットライト) 5 M

R‐Value(Thermal resistance value)は、日本語訳では"熱抵抗値"です。寝袋の下に敷くマットでは、R値、もしくはR‐Valueとカタログ表記されていることが多いです。(以下、主にR値の表現を使います)

R値は、建築業界等で断熱材の断熱力を表す指標として使われていますが、マットにおいても断熱力を表す指標として使われています。

アウトドア用マットの断熱力(R値、R-value)の測定規格『ASTM F3340-18』 とは?

『ASTM F3340-18』によるマットのR値評価方法

[出典:thermarest]

『ASTM F3340-18』以前のR値測定は各社独自の評価方法

『ASTM F3340-18』以前のR値測定は各社独自の評価方法で行われていたため、同じメーカー内でのマットのR値比較はできても、異なるメーカーのマットのR値比較は厳密にはできませんでした。

新R値の測定規格『ASTM F3340-18』は、2019年に完成&公開されたようですが、各メーカーのカタログに記載されるようになったのは、2020年からです。

※ASTMインターナショナル (ASTM International) は、世界最大・民間・非営利の国際標準化・規格設定機関。工業規格のASTM規格を設定・発行している。(wikipedia

新R値の測定規格が開発された背景

2016年から世界規模で活動しているマットメーカーが集まり、開発されていったようです。最終的に、ASTM F3340-18と呼ばれる規格は2019年に完成、公開されました。

以下、サーマレストに掲載されている英文と自動翻訳です。

In 2016, a group of industry leaders began developing a standard methodology for rating the insulative properties of sleeping pads. Therm-a-Rest teamed up with other companies to create what would become known as the ASTM F3340-18 standard. This standard allows campers to look at two or more sleeping pads and directly compare the R-value of each.

2016年、業界のリーダーのグループは、睡眠パッドの絶縁特性を評価するための標準的な方法論の開発を開始しました。Therm-a-Restは他の企業と協力して、ASTM F3340-18標準と呼ばれるものを作成しました。この規格により、キャンパーは2つ以上の睡眠パッドを見て、それぞれのR値を直接比較できます。


The standard was finalized and published in 2019. Therefore, all new Therm-a-Rest sleeping pad packaging will now feature the ASTM standard. We have the ASTM-approved testing device in our Seattle headquarters and are already looking for innovative ways to provide you with warmer and more comfortable nights at camp.

この規格は2019年に完成し、公開されました。したがって、すべての新しいTherm-a-Restスリーピングパッドパッケージには、ASTM規格が採用されます。シアトルの本社にはASTM認定の試験装置があり、キャンプでより暖かく快適な夜を提供する革新的な方法をすでに探しています

[出典:thermarest]

 

『ASTM F3340-18』を採用しているメーカー一覧

以下、2021年11月時点で、マットのR値測定方法として『ASTM F3340-18』を採用している主要なメーカーです。

  • Therm-a-Rest(サーマレスト)
  • NEMO(ニーモ)
  • EXPED(エクスペド)
  • SEATOSUMMIT(シートゥサミット)
  • BigAgnes(ビッグアグネス)
  • KLYMIT(クライミット)

現状、世界的なアウトドアメーカーは採用しています。

『ASTM F3340-18』によるマットのR値の評価方法

『ASTM F3340-18』によるマットのR値評価方法

[出典:thermarest]

実際に人がマットに寝た時を想定した評価環境で測定されます。

『ASTM F3340-18』によるマットのR値評価方法

『ASTM F3340-18』測定環境[出典:NEMO]

各装置は以下の設定されています。

  • ホットプレート(マットの上):35℃ (人間の体温を想定)
  • コールドプレート(マットの下):5℃ (キャンプ地の地面の温度を想定)
  • マットを膨らませる気圧(エア注入式マットのみ):3.5kpa ( 35mBar )
  • マットを上から押す圧力:2kpa (マット上に人が横に寝たときにマットにかかる圧を想定)
  • マットの測定箇所:3箇所(上部・頭側、中央部分、下部・足元側)
  • 評価サンプル数:3つ 

マットの断熱力(R値、R-value)は、人体の体温を想定したホットプレートの温度35℃を維持するのに必要となったエネルギー量を元に算出されます。

  • マットの断熱力が高い ⇒ ホットプレートの温度を維持するエネルギーは少ない ⇒ R値は高くなる
  • マットの断熱力が低い ⇒ ホットプレートの温度を維持するエネルギーは多くなる ⇒ R値は低くなる

『ASTM F3340-18』の解説動画(英語)

サーマレストがこの規格について、youtubeで解説しています。

Therm-a-Rest公式動画:スリーピングパッドR値:ASTM規格および季節性ガイドの使用方法

『ASTM F3340-18』 によるR値の温度チャート

『ASTM F3340-18』により算出されたR値がどの季節に対応できる程度の数値か、各メーカーが公開しています。

『ASTM F3340-18』温度チャート

[出典:thermarest]

 

『ASTM F3340-18』温度チャート

[出典:SEATOSUMMIT]

おおよそ分類すると

  • ASTM R値(0~2.0):夏向け
  • ASTM R値(2.0~4.0):3シーズン向け
  • ASTM R値(4.0~6.0):積雪期
  • ASTM R値(6.0~):高所・極地でも対応できる

となりますが、実使用による断熱力の体感には個人差があります。

実際、私自身の経験と照らし合わせると、ASTM R値2.0となるクローズドセルマットを過去何度も積雪期の登山で使用してきていますが、厳冬期(外気温-10℃以下)では深夜に底冷え感じることもありましたが、残雪期(-0℃~-10℃程度)の時期では底冷え感じること無く寝れていました。

ASTM R値は大まかには使用するシーズンの目安になりますが、細かな数値の違い(例えばR値0.1~0.5の違い)は、最終的には使用する人の経験とのすり合わせが必要になります。

傾向として、女性より男性の方が寒さを感じにくい、細身より体格の良い方の方が寒さを感じにくいと言えるでしょう。(そのため、SEATOSUMMITでは、寒さを感じやすい方はR値が0.5高めのマットを推奨しています。)

また、R値はあくまで断熱力を表す数値ですが、高すぎて問題になることはほとんどありません。春キャンプでR値9.0のマットを使用しても問題なく寝れると思います。(暑い夏の低地では、R値が低いほうが地熱が感じられて寝やすいかもしれません)

各マットの旧R値、新R値

海外のブログサイトにで、各マットの旧R値と新R値の一覧表が掲載されています。

旧R値と新R値(『ASTM F3340-18』)の一覧表

[出典:Section Hikers Backpacking Blog]

上記の表より

  • 『ASTM F3340-18』規格のR値は、各社独自の旧R値より、0.1~1.0程度R値は下がっているマットが多い
  • サーマレスト ネオエアーモデルは新R値の方が数値が上昇
  • 人気のクローズドセルマットサーマレスト、RidgeRest SOLite、Z Lite Solと共に数値低下。

となっています。

注意点として、R値の評価方法の違いによって数値が異なっているだけで、商品そのものは変わっていません。

最後に

『ASTM F3340-18』規格によるR値は新品のマットの断熱力指標のみ表す

新R値は、新品のマットの数値です。製品耐久性にもよりますが、何度も使用するとR値は下がっていく傾向にあります。

また、マットを評価としてR値以外にも、価格、重量、コンパクト性、膨らみやすさ、使いやすさ、快適な寝心地、耐久性など他の指標もあります。昨今、インターネット通販の普及により、実物を見ること無く購入する方も多いと思いますが、ご自身の用途を踏まえて、総合的に判断されることを推奨します。特にエア注入式マットは、パンクリスクがあるため、カタログスペックではわかりにくい耐久性、メーカー保証がどの程度であるか確認した上で判断されることおすすめします。

今後は日本も普及する?

日本のマット製造・販売メーカー(モンベル、イスカ、など)のWebサイトを見る限り、まだ『ASTM F3340-18』の測定結果は開示されていません。(メーカーによっては既にASTM F3340-18による測定結果を持っていると思われます)

今後、日本においても新規格によるR値は浸透していくと思われます。

2021年末に登山・ソロキャンプ向けマットレス比較一覧表(メーカー/モデル・R値・重さ・厚さ・断熱効率・タイプ)を作成しました。 約80程度の製品のR値を表にまとめました。ご参考に。

【2021年版】(全80以上)登山・ソロキャンプ向けマットレス比較一覧表(メーカー/モデル・R値・重さ・厚さ・断熱効率・タイプ)

 

参考サイト

[ASTM F3340-18規格] [各メーカーの説明] [参考ブログ]

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この記事を書いた人寝袋選びで大切なこと寝袋とマットは2つで1つ

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著者: Masaki T

2009年末から寝袋と関連装備に特化したこのサイトを開設。いつの間にか運営10年を超える老舗サイトに。ファミリーキャンプから無積雪期登山、厳冬期登山、バイクのキャンプツーリングに自転車旅行、車中泊など、アウトドアを幅広く経験。寝袋の宿泊数は100泊以上~500泊未満。狭い業界ですが、まだまだ知らないこと沢山あり、日々勉強中です☆

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雪山 クローズドセルマット

谷川岳の雪洞で宿泊

今まで様々な状況下で寝てきましたが、100泊以上経験してわかったのが、『保温力に余裕のある寝袋を用意すること』です。

雪山 テント泊 八ヶ岳

雪山テントは換気にも注意(テントが埋まると酸欠に)

雨風や断熱材で守られた家と違い、アウトドアフィールドでの宿泊は天候や外気温の変化を大きく受けます。事前の天気予報より、当日の気温が-5℃程度低かった、などは日常茶飯事です。また、多くのキャンプ場は、最寄りの市街地よりも標高が高い事が多く、天気予報で知ることのできる最寄りの市街地の最低気温よりも気温が低いことが多いです。

自然の中で睡眠をとる体験は素晴らしいですが、寝袋の保温力が足りないと真夜中に早朝に目が冷めます。これは外気温は日の出前の早朝4~5時あたりが最も気温が下がり、また体温も下がっているためです。一度このタイミングで目が冷めてしまうと、身体が芯から冷え切っているため、ここからなかなか眠ることができません。そして、寝不足の状態になります。

楽しいアウトドア体験するはずだったのが、思わぬ寝不足でボーーっとしてしまうのは、もったいないです(しかも連泊でこれが続くとかなりキツイです)。少し汗ばむくらいの保温力の寝袋を選んで、ぜひ素敵なアウトドア体験を満喫してください☆

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山岳・登山用の寝袋マットの選び方の基本(無積雪期)

寝袋と(キャンプ用の)マットは2つで1つです。

キャンプ用のマットの役割は主に『断熱』と『寝心地を快適にする』の2つです。

『断熱』について・・・アウトドア用の寝袋の中綿として、化繊やダウンが使われていますため、小さく圧縮して収納し持ち運ぶ事ができます。寝袋を収納袋から出して広げると、徐々に中綿が膨らみますが、人間が寝袋に入ったときに身体と地面に挟まれた中綿はぺちゃんこに潰れるため、断熱力がほとんどなくなります。大概の地面は冷たく、身体の重みで密着した部分から体温が逃げ(ヒートロス、熱損失)て、底冷えします。この現象は、体温と地熱の温度差が大きい春・秋・冬ほど熱損失量も増えます。

これを防ぐため、キャンプ用のマットを使います。キャンプ用のマット体重がかかっても断熱効果が得られるよう設計されています。

登山ルート上のキャンプ場・テント場

『寝心地を快適にする』について・・・最近、畳の上で寝たことはありますか?痛くて寝れなかったという方もいるのではないでしょうか。昨今の快適用品の普及により、強い刺激に敏感になっています。よほどふかふかの芝生以外、寝袋のみで寝ると地面の凸凹や石があたって痛くてまともに寝れません。その衝撃を吸収する役割としてキャンプ用マットが使われます。キャンプ用マットは大きくクローズドセルマット(銀マットなど)とエア注入式の2種類あり、寝心地はエア注入式の方が良いです。

テントの中で寝袋の下に敷くマットは、様々な用途に合わせて、多数の商品があります。皆さんの用途にあった、快適に寝れるマットが見つかりますように☆

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