<2024年更新!>八ヶ岳の行者小屋のテント場まで一般テント装備とクローズドセルマット3個(厚さ1.0/1.5/2.0cm)、セルフインフレータブルマット1個(厚さ2.5cm)、エアーマット(インシュレーテッドマット)(厚さ5.0cm)1個を担いで登って、寝心地・クッション性を比較してきました。
※検証時に使用したマットが、2023年時点で廃盤になっているものもあります。ただ、このページの主眼は主にマットの種類による寝心地比較ですので、十分参考になると思っています。
著者PROFILE
経歴:大手アウトドアショップで寝袋・マットのコーナーを中心に約4年間の接客経験に加え、独自の調査・研究を重ね、寝袋・マットの情報を中心としたこのサイトを運営して10年以上。無積雪登山・雪山登山・クライミング・アイスクライミング・自転車旅行・車中泊旅行・ファミリーキャンプなど幅広くアウトドアを経験。(詳細プロフィール) 名前:Masaki T
最初に
八ヶ岳の行者小屋のテント場で検証してきました!
最近、登山用のマットの記事について書いているのですが、各種マットを個別に登山で使ったことはあっても、山のテント場で寝比べてみたことないな、と思って自宅から車で約3時間→登山口から2.5時間登って行者小屋のテント場で寝比べてきました。
75L+10Lのザックに、通常のテント装備+マット5個+一眼レフ+三脚を入れる&外付け(合計20キロぐらいか)し、美濃戸から南沢を登りました。すれ違う登山者の方々から「すごい荷物ですね」と何度も言われ、「どこまでいくんですか?」「行者小屋までです」と答えるのが少し恥ずかしい感じがしました。(それだけに荷物背負ってそこまでしかいかないんですか、みたいな)
きっと皆さんのマット選びの参考にもなると思います☆
荷物重かったですが、今回山のテント場で実際に寝比べてみて、私自身とても勉強になりました。
南八ヶ岳 行者小屋のテント場
今回、実験の場として行者小屋を選んだのは、私自身がアクセスしやすかったのもありますが、テント場内に様々な地面があり、1箇所で様々テストできるからです。
- 石が少なくほぼ平ら(下界のキャンプ場レベル)[写真左上]
- 所々直径2-3cm程度の小石混ざり[写真右上]
- 直径2-3cm程度の小石ゴロゴロ[写真左下]
- 直径5cm以上の石ゴロゴロ[写真右下]
条件のいい場所でテストしてはわざわざここまで来た意味がないので、様々な場所がある中、今回は
- ①ある程度の傾斜&小石ゴロゴロ
- ②ある程度の傾斜&直径5cm以上の石ゴロゴロ
の2箇所で寝心地テストしました。
①ある程度の傾斜&小石ゴロゴロ
②ある程度の傾斜&直径5cm以上の石ゴロゴロ
経験上、①程度の場所は、行者小屋に限らず他の山々のテント場でも散見され、この程度の場所で快適に寝れるマットでなければ、登山用マットとして使いにくいといえます。
②程度のテント場は多くはありませんが、
- 河原沿いのテント場
- 沢登りでのビバーク
でみられます。
北アルプス 槍平小屋のテント場(2011/09/14撮影)
また、山のテント場は平坦で石の少ないいい場所から優先的に埋まるため、混雑時期にテント場への到着が遅れると、それだけ荒れた場所しか残っておらず②程度の場所になることは十分に起こりえます。
今回テストに使用したマット
基本的に寝心地はマットの厚さ、マットの種類に依存します。
そこで、今回はマット厚や形状の異なるクローズドセルマット3個、セルフインフレータブルマット1個、エアーマット(インシュレーテッドマット)1個を使用しました。
MAGICMOUNTAIN Sirex(マジックマウンテン シレックス) RBライトウェイト
- スペック:マット厚1.0cm,長さ185×幅55,重さ170g,R値1.4(メーカー独自評価)
超軽量のクローズドセルマットです。日本語表記ではマット厚は1.2cmですが、英語表記では1.0cmです。裏表の最大幅が1.0cm程度ですが、それ以外の部分は5mm程度です。マット自体は柔らかめ。
「シレックス RBライトウェイト」の購入者レビューと実売価格
Therm-A-Rest Z LITE SOL R(サーマレスト Zライトソル レギュラー)
- スペック:マット厚2.0cm,幅51×長さ183cm,重さ410g,R値2.0(ASTM)
登山用3シーズン用のクローズドセルマットレスの定番。アコーディオンのように折りたたんで収納可。表側にはアルミを蒸着。アルミ蒸着なしのモデルと比較して、断熱性が20%向上。
Therm-A-Rest RIDGEREST SOLIT R(サーマレスト リッジレスト ソーライト レギュラー)
- スペック:マット厚1.5cm,幅51×長さ183cm,重さ400g,R値2.1(ASTM)
ロール収納式のクローズドセルマット。アルミ蒸着加工により体から出る熱を反射し、表面の凹凸に閉じ込めて温かさを保ちます。軽さとコンパクト性を重視したソーライトは、厳冬期をのぞく初春から初冬までに対応。
尚、手持ちのリッジレストが購入して数年経過のため、アルミ蒸着が薄くなり、マット自体も少し柔らかくなってます。
NEMO ZOR(ニーモ ゾア) 20M
- スペック:マット厚2.5cm,幅51×長さ160cm,重さ360g,R値 2.7(ASTM)
軽量・コンパクトなセルフインフレータブルマット。セルフインフレータブルマットは厚さ2.5cmのもの多く、製品による寝心地もそれほど変わらないため、ゾアで十分検証できる。
EXPED DownMat Lite(エクスペド ダウンマットライト) 5 M
- スペック:マット厚5.0cm,幅52×長さ183cm,重さ620g,R値3.8(ASTM)
マット内部に650フィルパワーダウンが封入された厳冬期でも快適に寝れる断熱力をもつエアーマット(インシュレーテッドマット)です。
すべてのマットの重ねると各マットの厚さの違いがわかります。
以上5つのマットで寝心地の比較実験を行いました。
寝心地の比較実験
実験環境
マットはテント内で使用するため、テントのグランドシートを敷いた上にマットを乗せて寝心地比較しています。
三脚で固定し、撮影しました。
なお、撮影に使用したpentax k-70 には電子水準器が搭載されており、カメラを水平にし、テント場の傾きをできるだけ適切に再現されるよう、配慮しました。
実験①ある程度の傾斜&小石ゴロゴロ
最初にマットなし、グランドシートのみの上に寝てみたが、痛くて苦行でした。
シレックス RBライトウェイト(マット厚1.0cm)はマットなしに比べれば格段に寝やすくなりますが、下の石の突き上げが背中にあたります。
石の突き上げが痛い
寝る以外の動作では座った時、膝をついた時に、下に石があると非常に痛いです。
このマットで快適に寝れるか、と聞かれたら「なんとか寝れるかもしれませんが、その後のテント泊が嫌になるかもしれません」というところでしょうか。
リッジレスト(マット厚1.5cm)、Zライト(マット厚2.0cm)は、下の石感は多少ありますが、安心して寝れる感じがあります。Zライトはマット全体の厚みがリッジレストよりあること、そもそも凸凹形状なこともあり、マットの凸凹に石の突き上げが隠れる感がありました。
ゾア(マット厚2.5cm)は、クローズドセルマットに比べると、抜群の寝心地で、全く下の石の突上げを感じません。
ただ、座ると突上げが高い部分がお尻に当たり、膝をつく動作になると、完全に底づきし、下の石に当たります。そのため、マットにのった状態で諸動作(荷物の整理など)はちょっとやりにくそうです。
ダウンマットライト(マット厚5.0cm)は、寝ている時はもちろんのこと、座っても底づきしません。
どれだけパンパンに入れるかによりますが、マット厚があるため、膝をついても底づきしにくかったです。
この場所での個人的寝心地評価(星5段階)
- RBライトウェイト(マット厚1.0cm):★
- リッジレスト(マット厚1.5cm):★★★
- Zライト(マット厚2.0cm):★★★
- ゾア(マット厚2.5cm):★★★★
- ダウンマットライト(マット厚5.0cm):★★★★★
実験②ある程度の傾斜&直径5cm以上の石ゴロゴロ
ここで快適に寝れるマットなら、ほぼどこでも快適に寝れると思われる場所です。(行者小屋ではよほどテント場が混雑した時でないとここにテント設置とならないと思います)
シレックス RBライトウェイト(マット厚1.0cm)はマットを広げて上に立った時点で「痛い、これは無理だ」となり、寝てません。
リッジレスト(マット厚1.5cm)とZライト(マット厚2.0cm)は、石の突上げを感じますが、なんとか寝ていられるかな、という感じですが、マット厚とマットの形状から、リッジレストよりZライトの方が石の突上げが気にならなかったです。
リッジレストはフォーム自体はZライトより厚さりますが、下の石の突き上げをほぼフォームのクッション性のみで吸収するのに対し、Zライトはその凹凸形状のまま盛り上がってくるため、体を乗せた時の石の突き上げ感がより緩和されれ、クッション性がより高いことがわかりました。
ゾア(マット厚2.5cm)は、寝ている状態であればほとんど下の石がきになりません。ただ、マットの上に座る&膝をつくは底づきして痛いです。
ダウンマットライト(マット厚5.0cm)は、マットの上に座るっただけでは、下の石は全く気にならず、膝をついてもそれほど強く当たらない、当たる場所でもマットの反発でかなり軽減されました。
この場所での個人的寝心地評価(星5段階)
- RBライトウェイト(マット厚1.0cm):測定不能(痛くて寝れません)
- リッジレスト(マット厚1.5cm):★★
- Zライト(マット厚2.0cm):★★★
- ゾア(マット厚2.5cm):★★★★
- ダウンマットライト(マット厚5.0cm):★★★★★
まとめ
クローズドセルマットは、ある程度荒れたテント場では、マットの厚さや形状によりまともに寝れるかどうか変わってくるのを実感しました。
Zライトの凹凸形状は最大限緩和できる非常に合理的なものと再認識でき、多くの登山者に愛されている理由を実感できました。(登山中にザックにマットを外付けしている登山者の方々とすれ違いましたが、私が見る限り全員Zライトでした)
エアー系(空気注入型)は、地面の凸凹を吸収する能力がクローズドセルマットより断然高く、大概の場所でも快適に寝れる安心感があります。
特にマット厚があるエアーマット(インシュレーテッドマット)は寝心地に関しては「これがあればどこでも快適に寝れる」絶大な安心感がありました。
安価でパンクせず高い耐久性を誇るクローズドセルマットも良いですが、寝心地を重視される方はセルフインフレータブルマットやエアーマット(インシュレーテッドマット)も検討されても良いと思いました。
今回、マットの寝心地(どれだけ凸凹を緩和するか)に焦点をあて、実験しましたが、マットには断熱性、軽量・コンパクト性、耐久性、価格帯など、検討する内容があり、その内容については、別のページに様々記載しています。
[関連ページ]また、最近、マットの断熱力(R値,R-value)の測定規格『ASTM F3340-18』が公開されている登山・ソロキャンプ向けマットレス(以下、マットと記載)比較一覧を作成しました。メーカー名/モデル、R値(ASTM F3340-18)、重さ[g]、厚さ[mm]、断熱効率、マットのタイプ、を記載しています。ほとんどの方が知らない製品を多数掲載しています。まとめるの結構手間かかりましたが、面白いページになったと感じています(^^)
[関連ページ]今回テストに使用したマット一覧
MAGICMOUNTAIN Sirex(マジックマウンテン シレックス) RBライトウェイト
- スペック:マット厚1.0cm,長さ185×幅55,重さ170g,R値1.4(メーカー独自評価)
超軽量のクローズドセルマットです。日本語表記ではマット厚は1.2cmですが、英語表記では1.0cmです。裏表の最大幅が1.0cm程度ですが、それ以外の部分は5mm程度です。マット自体は柔らかめ。
「シレックス RBライトウェイト」の購入者レビューと実売価格
Therm-A-Rest Z LITE SOL R(サーマレスト Zライトソル レギュラー)
- スペック:マット厚2.0cm,幅51×長さ183cm,重さ410g,R値2.0(ASTM)
登山用3シーズン用のクローズドセルマットレスの定番。アコーディオンのように折りたたんで収納可。表側にはアルミを蒸着。アルミ蒸着なしのモデルと比較して、断熱性が20%向上。
「サーマレスト Zライトソル レギュラー」の購入者レビューと実売価格
Therm-A-Rest RIDGEREST SOLIT R(サーマレスト リッジレスト ソーライト レギュラー)
- スペック:マット厚1.5cm,幅51×長さ183cm,重さ400g,R値2.1(ASTM)
ロール収納式のクローズドセルマット。アルミ蒸着加工により体から出る熱を反射し、表面の凹凸に閉じ込めて温かさを保ちます。軽さとコンパクト性を重視したソーライトは、厳冬期をのぞく初春から初冬までに対応。
尚、手持ちのリッジレストが購入して数年経過のため、アルミ蒸着が薄くなり、マット自体も少し柔らかくなってます。
「サーマレスト リッジレスト ソーライト レギュラー」の購入者レビューと実売価格
NEMO ZOR(ニーモ ゾア) 20M
- スペック:マット厚2.5cm,幅51×長さ160cm,重さ360g,R値 2.7(ASTM)
軽量・コンパクトなセルフインフレータブルマット。セルフインフレータブルマットは厚さ2.5cmのもの多く、製品による寝心地もそれほど変わらないため、ゾアで十分検証できる。
※私が使ったモデルからリニューアルされているため、新モデルを掲載しておきます。(耐久性、バルブ形状が改善され、色も明るい黄色に)
「ニーモ ゾア」の購入者レビューと実売価格
EXPED DownMat Lite(エクスペド ダウンマットライト) 5 M
- スペック:マット厚5.0cm,幅52×長さ183cm,重さ620g,R値3.8(ASTM)
マット内部に650フィルパワーダウンが封入された厳冬期でも快適に寝れる断熱力をもつエアーマット(インシュレーテッドマット)です。
「エクスペド ダウンマットライト 5 M」の購入者レビューと実売価格
マット・スリーピングマット
関連の記事
登山用マットを買う前に知っておきたい情報
無積雪期・3シーズン
雪山・冬山
実験・How to
スペック比較
個別製品の紹介
著者PROFILE
2009年末から寝袋と関連装備に特化したこのサイトを開設。いつの間にか運営10年を超える老舗サイトに。ファミリーキャンプから無積雪期登山、厳冬期登山、バイクのキャンプツーリングに自転車旅行、車中泊など、アウトドアを幅広く経験。寝袋の宿泊数は100泊以上~500泊未満。狭い業界ですが、まだまだ知らないこと沢山あり、日々勉強中です☆
谷川岳の雪洞で宿泊
今まで様々な状況下で寝てきましたが、100泊以上経験してわかったのが、『保温力に余裕のある寝袋を用意すること』です。
雪山テントは換気にも注意(テントが埋まると酸欠に)
雨風や断熱材で守られた家と違い、アウトドアフィールドでの宿泊は天候や外気温の変化を大きく受けます。事前の天気予報より、当日の気温が-5℃程度低かった、などは日常茶飯事です。また、多くのキャンプ場は、最寄りの市街地よりも標高が高い事が多く、天気予報で知ることのできる最寄りの市街地の最低気温よりも気温が低いことが多いです。
自然の中で睡眠をとる体験は素晴らしいですが、寝袋の保温力が足りないと真夜中に早朝に目が冷めます。これは外気温は日の出前の早朝4~5時あたりが最も気温が下がり、また体温も下がっているためです。一度このタイミングで目が冷めてしまうと、身体が芯から冷え切っているため、ここからなかなか眠ることができません。そして、寝不足の状態になります。
楽しいアウトドア体験するはずだったのが、思わぬ寝不足でボーーっとしてしまうのは、もったいないです(しかも連泊でこれが続くとかなりキツイです)。少し汗ばむくらいの保温力の寝袋を選んで、ぜひ素敵なアウトドア体験を満喫してください☆
寝袋と(キャンプ用の)マットは2つで1つです。
キャンプ用のマットの役割は主に『断熱』と『寝心地を快適にする』の2つです。
『断熱』について・・・アウトドア用の寝袋の中綿として、化繊やダウンが使われていますため、小さく圧縮して収納し持ち運ぶ事ができます。寝袋を収納袋から出して広げると、徐々に中綿が膨らみますが、人間が寝袋に入ったときに身体と地面に挟まれた中綿はぺちゃんこに潰れるため、断熱力がほとんどなくなります。大概の地面は冷たく、身体の重みで密着した部分から体温が逃げ(ヒートロス、熱損失)て、底冷えします。この現象は、体温と地熱の温度差が大きい春・秋・冬ほど熱損失量も増えます。
これを防ぐため、キャンプ用のマットを使います。キャンプ用のマット体重がかかっても断熱効果が得られるよう設計されています。
『寝心地を快適にする』について・・・最近、畳の上で寝たことはありますか?痛くて寝れなかったという方もいるのではないでしょうか。昨今の快適用品の普及により、強い刺激に敏感になっています。よほどふかふかの芝生以外、寝袋のみで寝ると地面の凸凹や石があたって痛くてまともに寝れません。その衝撃を吸収する役割としてキャンプ用マットが使われます。キャンプ用マットは大きくクローズドセルマット(銀マットなど)とエア注入式の2種類あり、寝心地はエア注入式の方が良いです。
テントの中で寝袋の下に敷くマットは、様々な用途に合わせて、多数の商品があります。皆さんの用途にあった、快適に寝れるマットが見つかりますように☆
2020年より、大手メーカーにおいて、マットの断熱力(R値,R-value)測定に標準化規格『ASTM F3340-18』が採用されるようになりましたので、一部R値を更新しました。『ASTM F3340-18』のR値にはR値(ASTM)と記載しています。各メーカー独自の評価には、R値(メーカー独自評価)と記載することにしました。(正確に他メーカーとR値比較できない)(R値の詳細はこちら、ASTM F3340-18の詳細はこちら)