マットの断熱力(R値,R-value)の測定規格『ASTM F3340-18』が公開されている登山・ソロキャンプ向けマットレス(以下、マットと記載)比較一覧を作成しました。メーカー名/モデル、R値(ASTM F3340-18)、重さ[g]、厚さ[mm]、断熱効率、マットのタイプ、を記載しています。
はじめに
初めてこのページを訪問された方は、以下内容をご確認ください。
マット比較一覧表(メーカー/モデル・R値・重さ・厚さ・断熱効率・タイプ)
この表の説明
- マットのレギュラーサイズ(メーカーによって若干レギュラーサイズの大きさが異なるが、おおよそマットの長さ:約183cm、横幅:約52cm)を中心に掲載(※女性モデルは長さが168cm程度)
- タイトル行の各見出しをクリックすると降順、昇順に並び替え可能
- 各マットの名をクリックすると、製品の写真、メーカーの公式サイト、製品紹介の動画(できるだけメーカーが作成したものをリンク)、amazonと楽天のリンクも掲載
- ”断熱効率”はR値をマットの重量で割った数値でこのサイト独自の指標です。計算式はR値×10000÷重さ[g]数値 です(10000は計算結果を見やすくするための桁調整用です)。数値が大きいほど、単位グラムあたりの断熱力が大きい高断熱構造であることがわかります。(ただ、マットによっては僅かにサイズや形状が異なること、女性モデルは長さが短いことは考慮して計算してません)
※比較表一覧は、スマホ閲覧時は見切れるので横にスライドしてください。
[table id=mattless-list column_widths=”40%|10%|10%|10%|10%|20%|” /]番外編-R値未公開マットの予想R値
以下、R値の未公開マットの予想値です。
モンベルのマットのR値
[出典:モンベル]
日本においては、登山業界大手のモンベル。革新的な寝袋を多数製作していますが、マットもあります。ただ、カタログに記載されている断熱性評価が、R値ではなく、五つ星評価。この五つ星評価で星3つ、と記載されていもそれだけで断熱力をイメージできる人はほぼいないでしょう。
そこで、先程のマット一覧表から類似の形状の製品を探し、モンベルの各マットの推定R値を算出しました。
[出典:モンベル] [table id=montbell-mat-list column_widths=”30%|20%|10%|10%|10%|20%|” /]
各予想R値の理由
- montbell / U.L. コンフォートシステム エアパッド:Exped AirMat HL(R値1.3,厚さ70mm,断熱材なし)とほぼ同じ。
- montbell / U.L. コンフォートシステム アルパインパッド25:Therm-a-Rest Trail Scout(R3.1,厚さ25mm,フォームの肉抜きなし) に類似。
- montbell / U.L. コンフォートシステム キャンプパッド38:アルパインパッド25の1.52倍の厚みでR値も約1.52倍。肉抜きの少ないTherm-a-Rest Trail Lite Women’sとも近い数値。
- montbell / U.L. コンフォートシステム キャンプパッド50:アルパインパッド25の2倍の厚みでR値も約2倍に。
- montbell / フォームパッド:Therm-a-Rest Original Z Lite(R1.7,厚さ20mm)に近い。厚みが16mmなのでOriginal Z Liteよりは少しR値低いと予想。
モンベルの断熱性の星評価と予想R値は、順番はそろう結果となりました。このモンベルのマットの予想R値は、R値が公表されたマット一覧表を作っている時に「あれ?これモンベルの構造に似てるな」と気付いたのがきっかけです。モンベルのエアパッドはマット内部が断熱構造なしのエアのみですし、コンフォートシステム(セルフインフレート タイプ)は、マット内部のフォーム(白いスポンジ)を中抜きしない(穴開けしない)のが特徴です。
多くのセルフインフレートマットは、フォームを中抜きしているのに、どうしてモンベルはしないのか?とその昔疑問に思ったことがありますが、フォームを中抜きしない25mm厚にすると3シーズン用としては断熱力が過剰にあるため、軽量・コンパクト化と3シーズンに必要十分な断熱力に最適化した結果、その他多くのメーカーはフォームを中抜していると考えています。
実際、このコンフォートシステムパッドとほぼ同構造の旧モデルを使った山仲間は、厳冬期の八ヶ岳のテント泊(最低気温-10℃程度)でも底冷えせずに寝れた、と言っていました。
また、エアパッドは予想R値から、夜中に氷点下を下回ることがある登山の紅葉時期(9月以降)にこのマットで行くのは少し頼りない印象で、主に夏利用が無難と思いました。
最後に
このページを作成した感想
このページは、海外にあるR-valueを一覧表にまとめたサイト(そのページはこちら)を元に作成しました。ただ、このサイトはアメリカのサイトで、サイズはインチサイズ、重さはオンス表示と、日本人には全くピンときません。また、日本ではほとんど取り扱いの無い製品も複数掲載されいたため、日本人にもわかる表記にし、さらに各種関連リンクも掲載して一覧表を作成しました。数が多いので、この表を作成するのに1週間以上かかりました。
表の作成途中で、この表では軽量かつ高断熱の製品がどれかわかりにくいことに気づき、断熱効率(R値÷重さ)という項目を作成しました。これにより、高効率の断熱構造がすぐにわかります。登山用途で、できるだけ軽量かつ高断熱のものをお探しの方はこのスペックも参考になると思います。
R値表示の無い製品でも、おおよそのR値が推測できるようになった
この一覧表を作成するのにおおよそ100程度のマットのスペックを確認しました。それだけ見ると、R値表示がないマットでも、R値が公表されている100種類のマットのどれかに類似しているため、おおよそのR値が推測できます。
クローズドセルフォーマットでは、アコーディオン式やロール式など携行性を保持したものは、高くてもR値2.0程度、マット内に半自動膨張と断熱層を担ったフォーム(スポンジ)入りのセルフインフレーターマットでは、厚さ25mmの場合はR値が2.5~3.0程度(フォームの中抜き構造でR値が異なる)、多数比較することで見えてくるものがありました。
スペック比較ではわからない使用感、耐久性、製品保証
この表には日本では実店舗ではほとんど置いておらずネットでしか購入できないもの、東京の大手アウトドアショップでようやく置いてあるものも多数あります。今回作成した表を作る上で、様々な海外の英語サイトを閲覧しました。初めて見るマットでも、海外ではなかなかの高評価が付いていたりして、面白かったです。アメリカのアウトドアショップとして有名なREIを見ると、Sea to Summitのマットがなかなか高評価でした。
エア注入式のマットの場合、ごく僅かな穴が空いただけで空気が抜けてマットの断熱力を失います。軽量なものは丁寧な扱いが欠かせません。断熱効率の高いエアマットの中には、何らかの断熱素材が使われていますが、アルミ蒸着フィルムが使われているもの(Therm-a-Rest / NeoAirシリーズなど)は、寝た時カサカサ音がなり気になって寝にくいという口コミも散見されます。
また、エア注入式マットのトラブルとして、穴あきによるエア抜け、バルブ故障によるエア抜け、内部剥離などがあります。海外メーカー製の国内正規品であれば、メーカー保証を受けられますが、その対応は代理店によって異なります。
[各メーカーの日本代理店の保証案内]
- Therm-a-Rest(日本代理店:モチヅキ):正規販売店より購入をされた第一購入者で購入を証明するレシートを提示で適正な利用による不具合は限定5年保証(詳細はこちら)
- EXPED(日本代理店:双進):2年保証(超軽量モデル)、5年保証など製品ごとにしっかり記載(詳細はこちら)
- NEMO(日本代理店:イワタニ・プリムス):NEMOはアメリカ本国では生涯保証と記載ありますが、日本代理店には記載が無く、異なるよう?です(代理店の保証案内見つからず・・・。NEMO本体の保証案内はこちら)
- Sea to Summit(日本代理店:ロストアロー):全てのシートゥサミット製品はライフタイムワランティー(製品寿命間の保証)を保有しており、原材料や製造上の問題による欠陥があった場合にこれを保証します。この保証は、製品の第一購入者による通常使用のもとで製品本来の寿命の間適用されます。保証の適用には、シートゥサミット製品の正規販売店での購入を証明できるものが必要となります。(詳細はこちら)
- Big Agnes(日本代理店:ケンコー社):代理店の保証案内みつからず。Big Agnes本体の保証案内はこちら。
エアー注入式マットの場合は故障リスクありますで、メーカー保証の内容も重要です。
以上、皆様のマット選びの参考になれば幸いです。
[cc id=”3091″ title=”寝袋マット・スリーピングマット関連コンテンツ”]著者PROFILE
2009年末から寝袋と関連装備に特化したこのサイトを開設。いつの間にか運営10年を超える老舗サイトに。ファミリーキャンプから無積雪期登山、厳冬期登山、バイクのキャンプツーリングに自転車旅行、車中泊など、アウトドアを幅広く経験。寝袋の宿泊数は100泊以上~500泊未満。狭い業界ですが、まだまだ知らないこと沢山あり、日々勉強中です☆
谷川岳の雪洞で宿泊
今まで様々な状況下で寝てきましたが、100泊以上経験してわかったのが、『保温力に余裕のある寝袋を用意すること』です。
雪山テントは換気にも注意(テントが埋まると酸欠に)
雨風や断熱材で守られた家と違い、アウトドアフィールドでの宿泊は天候や外気温の変化を大きく受けます。事前の天気予報より、当日の気温が-5℃程度低かった、などは日常茶飯事です。また、多くのキャンプ場は、最寄りの市街地よりも標高が高い事が多く、天気予報で知ることのできる最寄りの市街地の最低気温よりも気温が低いことが多いです。
自然の中で睡眠をとる体験は素晴らしいですが、寝袋の保温力が足りないと真夜中に早朝に目が冷めます。これは外気温は日の出前の早朝4~5時あたりが最も気温が下がり、また体温も下がっているためです。一度このタイミングで目が冷めてしまうと、身体が芯から冷え切っているため、ここからなかなか眠ることができません。そして、寝不足の状態になります。
楽しいアウトドア体験するはずだったのが、思わぬ寝不足でボーーっとしてしまうのは、もったいないです(しかも連泊でこれが続くとかなりキツイです)。少し汗ばむくらいの保温力の寝袋を選んで、ぜひ素敵なアウトドア体験を満喫してください☆
寝袋と(キャンプ用の)マットは2つで1つです。
キャンプ用のマットの役割は主に『断熱』と『寝心地を快適にする』の2つです。
『断熱』について・・・アウトドア用の寝袋の中綿として、化繊やダウンが使われていますため、小さく圧縮して収納し持ち運ぶ事ができます。寝袋を収納袋から出して広げると、徐々に中綿が膨らみますが、人間が寝袋に入ったときに身体と地面に挟まれた中綿はぺちゃんこに潰れるため、断熱力がほとんどなくなります。大概の地面は冷たく、身体の重みで密着した部分から体温が逃げ(ヒートロス、熱損失)て、底冷えします。この現象は、体温と地熱の温度差が大きい春・秋・冬ほど熱損失量も増えます。
これを防ぐため、キャンプ用のマットを使います。キャンプ用のマット体重がかかっても断熱効果が得られるよう設計されています。
『寝心地を快適にする』について・・・最近、畳の上で寝たことはありますか?痛くて寝れなかったという方もいるのではないでしょうか。昨今の快適用品の普及により、強い刺激に敏感になっています。よほどふかふかの芝生以外、寝袋のみで寝ると地面の凸凹や石があたって痛くてまともに寝れません。その衝撃を吸収する役割としてキャンプ用マットが使われます。キャンプ用マットは大きくクローズドセルマット(銀マットなど)とエア注入式の2種類あり、寝心地はエア注入式の方が良いです。
テントの中で寝袋の下に敷くマットは、様々な用途に合わせて、多数の商品があります。皆さんの用途にあった、快適に寝れるマットが見つかりますように☆
実使用による断熱力の体感には個人差があります。実際、私自身の経験と照らし合わせると、ASTM R値2.0となるクローズドセルマットを過去何度も積雪期の登山で使用してきていますが、厳冬期(外気温-10℃以下)では深夜に底冷え感じることもありましたが、残雪期(-0℃~-10℃程度)の時期では底冷え感じること無く寝れていました。(積雪期はアンダーウェア+フリース+インサレーションジャケット+寝袋・シュラフと幾層も重ね着しますので、体重に潰されるとはいえマットと体の間に断熱層が形成されます)
厳冬期の谷川岳の雪洞で宿泊(雪洞:雪の斜面に掘った横穴)
また、今まで幾人とも雪山登山で雪中泊してきましたが、山仲間が様々なマットを使って寝た感想聞いてきました。寒がりでない男性であれば、このASTMのR値で3.0程度あれば、-10~-15℃程度の環境下でも底冷えなく寝れていたようです。
ASTM R値は大まかには使用するシーズンの目安になりますが、細かな数値の違い(例えばR値0.1~0.5の違い)は、最終的には使用する人の経験とのすり合わせが必要になるとおもわれます。
傾向として、女性より男性の方が寒さを感じにくい、細身より体格の良い方の方が寒さを感じにくいと言えるでしょう。(そのため、SEATOSUMMITでは、寒さを感じやすい方はR値が0.5高めのマットを推奨しています。)
また、R値はあくまで断熱力を表す数値ですが、高すぎて問題になることはほとんどありません。春キャンプでR値9.0のマットを使用しても問題なく寝れると思います。(暑い夏の低地では、R値が低いほうが地熱が感じられて寝やすいかもしれません)