【2024年更新】雪山・冬山登山のテント・雪洞泊に使う寝袋の下に敷くマットレス(登山マット、スリーピングマット、シュラフマットとも呼ばれる)の選び方について記事にまとめました。主に登山用の記事ですが、雪上キャンプの参考にもなると思います。
著者PROFILE
経歴:大手アウトドアショップで寝袋・マットのコーナーを中心に約4年間の接客経験に加え、独自の調査・研究を重ね、寝袋・マットの情報を中心としたこのサイトを運営して10年以上。無積雪登山・雪山登山・クライミング・アイスクライミング・自転車旅行・車中泊旅行・ファミリーキャンプなど幅広くアウトドアを経験。(詳細プロフィール) 名前:Masaki T
最初に
雪山・冬山におけるマット選びの話に入る前に、雪山独特の特徴について記載したいと思います。
雪山のテント・雪洞泊の特徴
今までに何度も雪山でのテント泊・雪洞泊を経験してきましたが、無積雪期とは異なり、雪山は
- テント・雪洞内の滞在時間が長い
- テント・雪洞内で煮炊きする
- 刃物が多い(アイゼン、ピッケルなど)
ということがわかりました。
八ヶ岳 赤岳鉱泉テント場
雪洞は、雪の斜面の洞窟のことを言います。スコップで掘って作ります。作る雪洞の規模にもよりますが、雪を書き出す作業はけっこうな労力使います。
雪山の斜面を掘る(十分な積雪量、雪崩無い場所、他の登山者に迷惑かけ無い場所など考慮します)
複数人で雪の斜面を掘る
雪洞内で調理します(一酸化炭素中毒にならないよう換気に気を使います)
もちろん、雪洞内で寝ます(雪洞内は-3℃程度に安定していて、外にテントより温かい)
テント・雪洞内の滞在時間が長い
雪山のテント泊、雪洞泊は、無積雪期の登山のテント泊より滞在時間が長くなる傾向があります。主な理由は、もちろん寒いためです。
無積雪期であれば、天気が良ければテントの外でゆったり山々を見る、近くの小屋を散策するなど、ゆったり行動しやすい環境ですが、雪山の場合は”身体の動きが止まる=徐々に体温が奪われる”ため、結構な防寒着を着ていてもそれほど長く止まった状態でいられません。冬山は強風になりる傾向があり、風が強いとあっという間に身体が冷えてしまします。そのため、テント内の寝袋にくるまったり、バーナーで暖をとったりする時間が長くなります。
また雪山では、
- ブリザード(なんとか立っていられるほどの強風になると、降雪少なくても、山肌の雪を風が舞い上げる)
- ホワイトアウト(降雪が多くなり視界が真っ白になり、周囲が見えなくなる)
が起こることがあり、山へ行っても停滞を余儀なくされることもあります。(下山できないこともあります)
ブリザード(谷川岳) 猛烈な強風で雪上の雪が舞い上がる
下山中にホワイトアウト(谷川岳) 降雪でトレース(足跡)消え、真っ白で周囲が見えず、全くどこを歩いているのかわからない、GPS持っていないとどこにいるかわからない危険な状況。一瞬、視界が晴れて予定外のルートを降りていることがわかり、ルート修正してなんとか雪洞へ帰還。
以上のように身動きが取れない状況担った場合、予定時間以上に寝袋&マットにお世話になります。
エアー注入式マットの場合、万が一パンクしてしまうと、非常に厳しい滞在が余儀なくされます。
テント・雪洞内で煮炊きする
雪山は寒いため、身体だけでなく、テント・雪洞内を温める目的でバーナーを使います。お湯を作って飲む、鍋を作って食べることで身体も室温も温かくなり、快適に過ごしやすくなります。
エアー注入式マットの場合、バーナーとの距離が近すぎると溶着がゆるくなりマットがエア漏れする可能性があります。
刃物が多い
テント・雪洞内で調理用にナイフ等扱うこともありますが、雪山登山では、無積雪登山ではほぼ使うことのない、
- ピッケル(一般雪山登山装備)
- アイゼン・クランポン(一般雪山登山装備)
- アイスアックス(アイスクライミング装備)
- アイススクリュー(アイスクライミング装備)
など、鋭利な金属製の登山用品を多数扱うことがあります。
アイゼン、ピッケル等はテントの薄い生地など難なく切り裂くためテント外に置くのが基本ですが、
- 刃をヤスリで研ぐ
- アイゼンの長さを調整する(初心者に貸し出した時に起こる)
などでテント内で作業することもあります。(外でやれたらいいのですが、寒すぎると手がかじかみ作業できない場合、テント内で作業します)
エアー注入式マットの場合、万が一マット状で以上の登山用品を落下させてしまうと、簡単に穴が空きます。
雪面はそれほど凸凹していない
小石や地面の凸凹の上にテントを設営する無積雪期と違い、雪山ではある程度平坦な雪面で寝れます。
雪面状況により、
- 靴底やピッケルで凸部を削る(圧雪され、前泊者がいたテント場ではこの程度で済むことも)
- スコップ・ショベル等で場所を平坦にする(積雪量が多い時にショベル使う)
- スノーソー(雪用ノコギリ、固くしまった氷混じり雪も切れる)で整える(雪面傾斜を切り出す時に使う)
など対処方法が変わってきますが、整えればほぼ平坦な場所で寝ることが可能です。そのため、整地する道具があれば無積雪期ほどマットの凸凹吸収力を問われないこともあります。
ショベルは軽量なポリカーボネート製(プラスチックみたいなの)だと軟雪しか対応できません。雪面が固かったたり、氷が張っていると弾かれます。少し重量増えますが持っていくなら金属製ショベルがおすすめです。短時間作業ならT字グリップ、雪洞など長時間作業ならU字グリップが手が痛くならずおすすめです。
雪上で寝ると、体温やテント内温度により、床部分の雪表面が徐々に溶けて多少下がります。(底が少しU字状に沈む)
クローズドセルマットとエアー注入式マットのどちらを選ぶか
登山用のマットは、
- クローズドセルマット
- エアー注入式マット(セフルインフレータブルマット、エアーマット、インシュレーテッドマット)
の2種類に分類でき、それぞれ様々な特徴があります。
(各マットの詳細な特徴・比較等はこちらのページをご参照ください。)
クローズドセルマットは絶大な安心感がある
雪洞内でクローズドセルマットを使用して就寝する
クローズドセルマットはパンクしません。アイゼン等置いた場合、マット表面が多少傷つきますが、その程度で済みます。
クローズドセルマットの気になる点として、収納サイズが大きい点が挙げられますが、雪山においては何よりもパンクリスクが無く、確実に雪面と背中の間を断熱してくれる安心感があります。
登山リスクの高い、海外の高所登山に挑む登山家の方々も、登攀中の写真・映像を見るとザックにクローズドセルマットを外付けしている様子が確認できます。
以下、参考動画です。(ザックのサイドベルトにマットが付いているシーンから始まります)
エアー注入式マットはパンクリスクが拭えない
収納が小さく、クッション性も高く、製品によっては高断熱のエアー注入式マットですが、どうしてもパンクリスクは払拭できません。
以下、私の山仲間が雪山登山中にパンクさせた事例です。
雪山でのエアー注入式マットのパンク・エア漏れ事例
以下、4件の雪山でのパンク・エア漏れ事例ですが、3件は私も同じテントで過ごしてた時の出来事です。
テント内でナイフを落下しエア漏れ
雪山テント泊中、仲間が食品をナイフで切るため使っていましたが、誤ってエアー注入式マットの上に落下。もちろんマット生地は切れて空気漏れ。夜で、確かマット湿っていたためかその場で補修を断念。潰れたマット上で一夜をなんとか過ごす。
マットにアイゼン刺さりエア漏れ
雪山テント時に、外の荷物をテント内に入れる時、出入り口付近に置いていたアイゼンが引っかかってテント内に入り、エアー注入式マットに刺さりマットがパンク。下に敷けるものすべて使い(衣類・ザックなど)、なんとか一夜を過ごす。
バーナーの放射熱で溶着が剥がれエア漏れ
雪山のテント内でバーナーで煮炊きしていたところ、突然パンク。バーナーの輻射熱(といってもそれほどバーナーとマットは近くなかった)でマットの溶着がゆるくなりエア漏れした模様。その場で修理困難のため、あるもの敷いてなんとか一夜を過ごす。次の雪山登山からクローズドセルマットを持ってきてました。
マットに寝ていると、少しづつ空気が抜ける
雪山テント泊の夜、仲間がエアー注入式マットの微小な空気漏れが発覚。寝ていてしばらくするとマットが潰れてしまう。エア漏れ箇所がわからず、そのままなんとか一夜を過ごす。
以上、雪山でのエアー注入式マットのパンク・エア漏れ事例でした。
エアー注入式マットを選びやすい条件
エアー注入式マット(セフルインフレータブルマット、エアーマット、インシュレーテッドマット)にパンクリスクはありますが、クローズドセルマットに無い優れた特徴も多数あります。
そこで、雪山登山においてエアー注入式マットを選びやすい状況(パンクした際にどれだけフォローしやすい環境かどうか)について考えてみました。
キャンプ地が営業中の小屋と隣接している
冬期も営業している南八ヶ岳の赤岳鉱泉
積雪期に営業している山小屋はとても少ないですが、あるにはあります。
テント設営場所と営業している山小屋が隣接している場合、万が一マットがパンクした場合、(空きがあれば)山小屋泊に変更できます。
この環境は、エアー注入式マットを持っていきやすい環境といえます。
登山メンバーが2人以上
複数人でアイスクライミング登山 八ヶ岳
エアー注入式マットがパンクした場合、パンクしたマット、手持ちの衣類、ザックを下に敷いてなんとか一夜を過ごすことになります。
積雪期に使われる大概のザックには背面パッドが入っており、ザックを敷くことである程度の断熱力が得られます。
1つザックでは、面積が小さすぎて全身を乗せるのが困難です。しかし、ザックが2個あれば、身体を曲げた(かがんだ)姿勢であれば身体の下に敷き詰めることが可能です。(確か友人のマットがパンクしたときもこの方法で乗り切りました)
雪上に立てたテント内は何らかの断熱材無しに寝ることはできませんが、ザックの背面パッドがあればなんとか寝れるぐらいの底冷えになるかもしれません。
山行メンバーが多ければ、それだけザックもあり、万が一のフォローがしやすいため、エアー注入式マットを持っていきやすい状況ともいえます。
(ザック背面にフレームがあるものは、フレームを抜くとザックがほぼ平らになり、マットとして扱いやすいです。ただし、フレームはギチギチに入っているものが多く、あまり出し入れすることを考えて設計していないため、元に戻すのが大変なことも。)
宿泊日数が1泊のみ
1泊2日テント泊アイスクライミング 八ヶ岳 南沢小滝
1泊2日予定であれば、万が一マットがパンクした場合でも、1晩なんとか乗り切れば翌日下山です。ただし、2日目が悪天候で動けないこともありますし、ザック敷いた程度では底冷えしてしっかり睡眠取るのは難しく翌日の行動にも影響でると思われます。
クローズドセルマットを推奨する条件
- テント場に隣接する営業小屋が無い
- 1人で登る
- 2泊以上のテント・雪洞泊登山
以上の条件の場合、確実にパンクしないクローズドセルマットを持っていくのを推奨します。
雪山のテント・雪洞泊で求められるマットの断熱力
雪山・冬山と言っても、時期や標高によって気温が大きく異なります。
- 雪洞泊(雪洞内-3℃程度、外気の変動をそれほど受けず室温は安定している)
- 残雪期テント泊(夜中の気温-10℃~0℃程度)
- 厳冬期テント泊(夜中の気温-10℃~-20℃程度)
以上、おおよその分類ですが、雪に囲まれた雪洞泊は雪洞内が広く、出入り口がある程度塞がれていれば厳冬期の夜でもそれほど気温が下がりません(温度計で検証したことあります)
もっとも寒いのは、厳冬期のテント泊です。厳冬期は非常に風が強いこともあり、風が強いとテント内の温度も外気温と近くなります。
環境や時期によって、快適に寝れる(底冷えしない)マットの断熱力も異なります。
各社のR値(R-value)
2020年以降、アウトドア用マットの断熱力(R値、R-value)の測定規格『ASTM F3340-18』 が世界的な大手マットメーカー中心に採用されています。この新規格のお陰で、異なるメーカー間のマットの断熱力比較が明瞭になりました。(詳しくはこちらのページを御覧ください ⇒ 登山・キャンプ用マットにおけるR値(R-value)とは?)
サーマレストのR値と温度チャート[出典:thermarest]
[出典:SEATOSUMMIT]
おおよそ分類すると
- ASTM R値(0~2.0):夏向け
- ASTM R値(2.0~4.0):3シーズン向け
- ASTM R値(4.0~6.0):積雪期
- ASTM R値(6.0~):高所・極地でも対応できる
となりますが、実使用による断熱力の体感には個人差があります。ASTMによるR値は大まかには使用するシーズンの目安になりますが、細かな数値の違い(例えばR値0.1~0.5の違い)は、最終的には使用する人の経験とのすり合わせが必要になります。
補足として、マットは断熱力が(真夏を除いて)高すぎても問題になりません。高ければ高いほど安心して寝られます。
EXPED Mega Mat(R値9.50、対応温度-48) 秋のキャンプでも快適に寝れる
マットは重ねても良い
重ねれば断熱力(R値)も加算される
雪山登山を始める方の多くは、3シーズン対応のマットしか持っていません。別途、1枚の高断熱のマット(例えば、インシュレーテッドマットのネオエアーXサーモ(R値 6.9))を用意しても良いのですが結構な費用がかかり、パンクリスクの観点からも条件を選びます。現状、クローズドセルマット1枚で厳冬期対応できるマットは無いようです(2019年にリッジレストソーラー(R値3.3)が廃番になりました)
その場合、手持ちの3シーズン対応マット+別途3シーズン対応マット用意の2枚重ねで使用する方法もあります。
R値が2.4と2.6のマットを重ねれば、全体のR値は2.4+2.6≒5.0相当になります。
サーマレストに問い合わせたところ
- 積雪期(厳冬期を除く)はR値3.3~4.0程度
- 厳冬期はR値4.0~5.0程度
との回答を得ています。
大概の登山用3シーズン用マットは、R値2.0以上あり、2枚重ねれば冬期対応可能です。
マットを2枚重ねする場合、
- クローズドセルマット1枚+クローズドセルマット1枚
- クローズドセルマット1枚+エアー注入式マット1枚
- エアー注入式マット1枚+エアー注入式マット1枚
の組み合わせありますが、携行性、寝心地、リスク管理でバランスが取れているのは
- クローズドセルマット1枚+エアー注入式マット1枚
の組み合わせです。
別件でサーマレストに問い合わせたところ、担当者の方からメーカーで南極遠征をサポートした時の話を伺いました。
-30℃~-40℃になる南極遠征では、クローズドセルマット1枚+エアー注入式マット1枚の2枚重ねで対応したそうです。
具体的には、
- Zライトソル(R値2.6) + プロライト、プラスシリーズ(R値2.4~3.4)
- Zライトソル(R値2.6) + プロライトエイペックス(R値4.0)
の組み合わせと言っていました。(Zライトと言ってましたが、性能・重量考えてもおそらくアルミ蒸着しているZライトソルのことだと思います)サイズは、レギュラーサイズ(183cm)と言っていました。
クローズドセルマット(Zライトソーラー)と組み合わせるのが、パンクしたらペシャンコになるインシュレーテッドマットでは無く、パンクしても中のフォーム(スポンジ)の復元力により多少の断熱&クッション性の得られるセフルインフレータブルマットがセレクトされているのがポイントに感じました。
日本の山々の厳冬期(主に1月~2月)は、標高の高い富士山や緯度の高い北海道の高山(大雪山など)を除けばおおよそ-20℃程度です。
[出典]イスカ
厳冬期のテント泊の場合、上のグラフを参考にマットの断熱力も準備すれば良いかな、と思います。ただし、上のグラフは最低気温の平均値です。
この温度よりも上がることも、下がることもあります。日によって±5℃程度は変わったりします。
雪山のテント・雪洞泊のマット選び
雪山・冬山で使えるマットの紹介です。以下の組み合わせで検討してみました。
- クローズドセルマットのみ
- クローズドセルマット+エアー注入式マット
- エアー注入式マットのみ
クローズドセルマットのみ
とにかくパンクは避けたい、過去にエアー注入式マットでパンクして散々な目にあった方はこのセレクトになるかもしれません。
サーマレスト Zライトソル
アコーディオンのように折りたたんで収納できる3シーズン用のクローズドセルマットレスです。表側にはアルミを蒸着。アルミ蒸着なしのモデルと比較して、断熱性が20%向上しています。折りたたみ式は広げるのも収納するのも素早くできるので、たとえば短い休憩でも、さっと出してストレスなく使用できます。[出典:thermarest]
S(ショート) | R(レギュラー) | |
---|---|---|
カラー | シルバー/レモン | シルバー/レモン |
大きさ | 51×130cm | 51×183cm |
重量 | 290g | 410g |
材質 | 架橋ポリエチレン | 架橋ポリエチレン |
厚さ | 2cm | 2cm |
収納サイズ (長さ×直径) |
51×10×14cm | 51×13×14cm |
R値 | 2.0 | 2.0 |
生産国 | Made in USA | Made in USA |
サーマレスト Zライトソル(Thermarest Z Lite Sol)は、登山用クローズドセルマットとして非常に人気があり、3シーズンではテント泊を伴うルートを歩くと、すれ違う登山者のザックに外付けされているのをよく見かけます。
Zライトソル レギュラー(左から2番目)とその他クローズドセルマット、エアー系マット
収納サイズは、クローズドセルマットのため、エアー系(空気注入型)マットに比べて、収納はエアー系の2倍以上かさばります。そのため、ザックに外付けするのが一般的です。
重量はS(ショート、51×130cm、290g)、R(レギュラー、51×183cm、410g)と十分軽量です。
Zライトソルはアコーディオンのようにパタパタと収納できます。ロール式のマットは通常巻グセが付き、広げても丸く巻いて使いにくいところがあります。
ロール式のクローズドセルマットは巻きグセ付き、一度広げた後はまた巻いてしまう
アコーディオン式のZライトソルは、広げてもそれほど折りグセ強くなくすぐに使えるのも魅力です。
肝心の断熱性についてですが、R値・R-valueは2.0で、積雪期では寒さに強い方(登山家、登山ガイドなど登山上級者)なら、残雪期にこれ1枚で行けるかもという感じですが、厳冬期は非常に厳しいと思われます(試したこと無いです)。Zライトソルは冬期登山ではその他マットとの2枚重ねを推奨します。
amazonに多数のレビューあり、高評価です。
以下、登山用途で参考となるレビューを一部抜粋。
「サーマレスト Zライトソル S(ショート)&R(レギュラー)」の購入者レビューと実売価格
クローズドセルマット+エアー注入式マット
クローズドセルマットとエアー注入式マットの組み合わせは、
- 2枚重ねでR値を4~5程度に増強できる
- リスク対策(エアー注入式マットがパンクしてもクローズドセルマットがある)
- エアー注入式の優れたクッション性・寝心地が得られる
- 荷物容量もほどほどに抑えられる
となり、リスク管理も踏まえたバランスの取れた組み合わせと言えます。
この組み合わせの時、クローズドセルマットにどの程度の断熱力(R値)を持たせるかが、その方の考え型が反映されるところです。
例えば、
パンクしたらなんとか寝れる前提(クローズドセルマットは最低限の断熱力)
- マジックマウンテン カンチェンジュンガ、サイズ:195×49、150g、R値1.3程度 (軽量化するなら上半身のみに切断)
- サーマレスト ネオエアーXサーモ、Rサイズ:51×183cm、430g、R値6.9
- 総重量580g、合計R値8.2程度
パンクが起きてもある程度寝れる前提(クローズドセルマットにもしっかり断熱力)
- サーマレスト リッジレストソーラライト、Sサイズ:51×122cm、260g、R値2.1 (足元の断熱はザックの背面使用)
- サーマレスト ネオエアーXライト、Rサイズ:51×183cm、350g、R値4.2
- 総重量610g、合計R値5.3
近年では、ULマットという耐久性は多少劣るものの薄くても高い断熱力を超軽量マットも普及しています。
厚みが薄いULマットは、無積雪期は石がゴロゴロしているテント場では厳しいことが想定されます(ご参考:【実験】八ヶ岳テント場で各マット寝心地比較)が、ある程度平坦になっている積雪期は持っていきやすい環境とも言えます。
R値の数値はメーカー間で共通化されていないこと、R値が公表されていないマットも多数あること、特にエアー注入式マットは多数あることから、その組み合わせは多数考えられます。
個人的には、パンク&故障リスクのあるエアー注入式マットは、サーマレストやエクスペドのようにメーカー保証がしっかり明記されているものを選ぶのがおすすめです。
エアー注入式マットのみ
パンクリスクを踏まえた上で、可能な限り荷物をコンパクトにしたい方はエアー注入式マットという選択もあります。
注意点として、エアー注入式マットは
- 鋭利な刃物で容易に穴が開く
- 熱に弱い(熱で生地を溶着しているため、バーナーの熱で溶着がゆるくなることも)
- 濡れると凍る(生地のポリエステルやナイロンは連泊すると濡れやすくそれが凍りつくことがあります)
- 製品寿命あります(軽量化モデルはメーカー保証が2~5年程度です。マット内に空気を留めるTPUフィルムの加水分解等もあり、製造日から経過&使用頻度の高いエアー注入式マット1枚で雪山行くのはリスク高めです)
以上の点に十分注意しての利用をおすすめします。
以下、1枚でも雪の上で快適に寝れるモデルを中心に簡潔に紹介します。
サーマレスト ネオエアー Xサーモ NXT
2023年にリニューアルされ、商品名サーマレスト ネオエアー Xサーモに”NXT”が追加されました。
全モデルからの主な改良点は、就寝時のカサカサ音の低減とマット自体の厚みが増えたことです。ノイズに関しては、メーカー表記では” 前モデルより83% 低減”と書かれています。断熱力R値も6.9⇒7.3にアップ。重量は9g増えました。
Xサーモ NXTは、ネオエアーシリーズで最も断熱性が高いマットレスです。三角形のチューブを互い違いに重ねてコールドスポットをなくすトライアンギュラーコアマトリックスと、マットレス内部に熱反射板をはさみ込むサーマキャプチャーテクノロジーを採用し、地面からの冷気を防ぐと同時に体から出る熱を反射、細かく区切られたチューブの中に温かい空気を維持します。表側にはソフトで肌触りがよく、滑りにくい生地を配しました。寝返りを打ったときの生地音も少なくなり、快適な眠りが得られます。このモデルにはスタッフサック、ミディアムポンプサック、リペアキットが標準装備です。[出典:thermarest]
R(レギュラー) | |
---|---|
カラー | ネプチューン |
大きさ | 51×183cm |
重量 | 439g |
材質 |
(表面)30D高強度ナイロン (裏面)70Dナイロン |
厚さ | 6.3cm |
収納サイズ (長さ×直径) |
23×10cm |
R値 | 7.3 |
生産国 | Made in USA |
「サーマレスト ネオエアー Xサーモ NXT」の購入者レビューと実売価格
※更新時点で、日本ではまだ販売してません。
旧モデルは、多数出回っていますので、ご参考に(今後セールされていくと思います)
サーマレスト プロライトエイペックス
プロライトエイペックスは、新開発のストラタコアフォームを採用。凹凸をもつフォームは重量あたりの断熱性に優れています。板状のため体から出る熱を逃さず、肉抜きしたフォームのように地面からの冷気を伝えることもありません。ファスト&ライトシリーズの自動膨張式マットレスの中では、プロライトプラス女性用につぐ断熱性を発揮します。[出典:thermarest]
R(レギュラー) | |
---|---|
カラー | ヒートウェーブ |
大きさ | 51×183cm |
重量 | 630g |
材質 |
50Dポリエステル |
厚さ | 5.0cm |
収納サイズ (長さ×直径) |
28×12cm |
R値 | 3.8 |
生産国 | Made in USA |
2019年に夏に発売されたセルフインフレータブルマットです。R値が3.8あり、積雪期にも対応可能です。インシュレーテッドマット(ネオエアー Xサーモなど)と異なり、万が一のパンクでもマット内のフォームによる僅かなクッション性と断熱性が残ります。
発売して間もないため日本ではレビュー少ないですが、海外サイトのレビューではなかなか好評のようです。海外のレビュー動画を見る限り、マット厚が一般的なセフルインフレータブルマット(2~3.8cm)よりあるため、折りたたむのが少し労力いる感じです。
最近流行りの熱反射板を使用していないため、独特のカサカサ音が無く、静かに就寝したい方におすすめです。
「サーマレスト プロライトエイペックス」の購入者レビューと実売価格
最後に
個人的経験を踏まえ、積雪期のマット選びについて様々記載してみました。
他のサイトにも、軽量化やコンパクト性を求め、模索された内容が掲載されてます。
寝袋同様にマットも体感温度に個人差あります。様々調査して最適なマット、雪山でも快適に寝れるマットを模索してみてください(^^)
このページも、随時更新していく予定です☆
マット・スリーピングマット
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スペック比較
個別製品の紹介
著者PROFILE
2009年末から寝袋と関連装備に特化したこのサイトを開設。いつの間にか運営10年を超える老舗サイトに。ファミリーキャンプから無積雪期登山、厳冬期登山、バイクのキャンプツーリングに自転車旅行、車中泊など、アウトドアを幅広く経験。寝袋の宿泊数は100泊以上~500泊未満。狭い業界ですが、まだまだ知らないこと沢山あり、日々勉強中です☆
谷川岳の雪洞で宿泊
今まで様々な状況下で寝てきましたが、100泊以上経験してわかったのが、『保温力に余裕のある寝袋を用意すること』です。
雪山テントは換気にも注意(テントが埋まると酸欠に)
雨風や断熱材で守られた家と違い、アウトドアフィールドでの宿泊は天候や外気温の変化を大きく受けます。事前の天気予報より、当日の気温が-5℃程度低かった、などは日常茶飯事です。また、多くのキャンプ場は、最寄りの市街地よりも標高が高い事が多く、天気予報で知ることのできる最寄りの市街地の最低気温よりも気温が低いことが多いです。
自然の中で睡眠をとる体験は素晴らしいですが、寝袋の保温力が足りないと真夜中に早朝に目が冷めます。これは外気温は日の出前の早朝4~5時あたりが最も気温が下がり、また体温も下がっているためです。一度このタイミングで目が冷めてしまうと、身体が芯から冷え切っているため、ここからなかなか眠ることができません。そして、寝不足の状態になります。
楽しいアウトドア体験するはずだったのが、思わぬ寝不足でボーーっとしてしまうのは、もったいないです(しかも連泊でこれが続くとかなりキツイです)。少し汗ばむくらいの保温力の寝袋を選んで、ぜひ素敵なアウトドア体験を満喫してください☆
寝袋と(キャンプ用の)マットは2つで1つです。
キャンプ用のマットの役割は主に『断熱』と『寝心地を快適にする』の2つです。
『断熱』について・・・アウトドア用の寝袋の中綿として、化繊やダウンが使われていますため、小さく圧縮して収納し持ち運ぶ事ができます。寝袋を収納袋から出して広げると、徐々に中綿が膨らみますが、人間が寝袋に入ったときに身体と地面に挟まれた中綿はぺちゃんこに潰れるため、断熱力がほとんどなくなります。大概の地面は冷たく、身体の重みで密着した部分から体温が逃げ(ヒートロス、熱損失)て、底冷えします。この現象は、体温と地熱の温度差が大きい春・秋・冬ほど熱損失量も増えます。
これを防ぐため、キャンプ用のマットを使います。キャンプ用のマット体重がかかっても断熱効果が得られるよう設計されています。
『寝心地を快適にする』について・・・最近、畳の上で寝たことはありますか?痛くて寝れなかったという方もいるのではないでしょうか。昨今の快適用品の普及により、強い刺激に敏感になっています。よほどふかふかの芝生以外、寝袋のみで寝ると地面の凸凹や石があたって痛くてまともに寝れません。その衝撃を吸収する役割としてキャンプ用マットが使われます。キャンプ用マットは大きくクローズドセルマット(銀マットなど)とエア注入式の2種類あり、寝心地はエア注入式の方が良いです。
テントの中で寝袋の下に敷くマットは、様々な用途に合わせて、多数の商品があります。皆さんの用途にあった、快適に寝れるマットが見つかりますように☆
これに比べて①に分類される本商品は寝心地は硬くR値は2.0、軽いけど嵩張りますので、バックパックキャンプだと携帯性の面で考えるところがありました。ですが、私もいろんなマットを試しましたが、最終的には①に戻りました。極寒の中でR値4.0以上欲しいときは、①の上にR値2.0くらいの②を重ねて使用しています。とにかく、雑に扱っても壊れませんし、お座敷スタイル用に折って上に座ることもできます。バックパックでも外付けすればリュックの容量に影響しませんし、外付け効果で電車内などで床にリュックを置いた時にマットが緩衝材になってくれます。と言うわけで何かと重宝するマットです。