ポータブル電源は、キャンプや車中泊、そして災害時の備えとして急速に普及が進んでいます。2024年の国内出荷台数は約224万台にのぼるとの予測もあり、もはや特別なアイテムではなくなりつつあります。しかしその一方で、ポータブル電源による発火・火災事故やリコールの報告は年々増加しており、NITE(製品評価技術基盤機構)のデータによれば、リチウムイオン電池搭載製品の事故は2020年から2024年の5年間で1,860件にのぼり、そのうち約85%が火災に発展しています。

この記事では、過去10年に報告されたポータブル電源の事故・発火・リコール事例を時系列で整理し、事故の原因や傾向、そして安全に使うための具体的なポイントをお伝えしていきます。「ポータブル電源が怖い」ではなく、「正しく知って、正しく選ぶ」ための一助になれば幸いです。
この記事でわかること
- 過去10年間に報告されたポータブル電源の主な発火・火災事故事例
- 国内外の主要リコール情報と、各メーカーの対応状況
- 事故が増えている背景と、ポータブル電源が電気用品安全法の対象外である事実
- 発火の主な原因(充電中の異常発熱、内部短絡、熱暴走のメカニズム)
- 三元系とリン酸鉄リチウムイオン電池の安全性の違い
- 安全なポータブル電源の選び方と、日常的にできる事故予防策


名前:Masaki T
経歴:2019年にポータブル電源を初めて購入して以来、現在まで日常的に活用しています。防災やアウトドアなど用途は幅広いですが、特にPC電源としての使用経験が豊富です。日本の大手電機メーカーで、半導体回路設計の研究開発エンジニアとして約5年勤務。自分自身も勉強しながら、実使用と技術の両面から、信頼性の高い情報発信を心がけています。
ポータブル電源の事故件数はどう推移しているのか
NITEの統計に見る増加傾向
まずは、ポータブル電源を含むリチウムイオン電池搭載製品の事故が、この10年でどのように変化してきたかを確認しておきましょう。NITE(独立行政法人 製品評価技術基盤機構)に報告された事故情報(出典:NITE「リチウムイオン電池搭載製品の事故」注意喚起)によると、リチウムイオン電池搭載製品全体の事故件数は、2020年の293件から2024年には492件へと増加しています。ポータブル電源に限っても、2018年度以降増加傾向が続いているとのことです。
2022年単年でのポータブル電源の発火・発煙等の事故は29件。つまり月平均2.4件のペースで何らかのトラブルが起きていたことになります。そして2024年は9月までの時点で42件に達しており、月平均では約4.6件と、2022年の約2倍のペースです。「便利で身近になったぶん、トラブルも増えた」という、なんとも皮肉な構図が見えてきます。
事故の季節的な傾向として、6月から8月にかけての夏場に事故が集中することも報告されています。気温の上昇に伴ってバッテリー温度が上がりやすくなるため、夏場のポータブル電源の取り扱いには一層の注意が必要です。
事故の約5割がリコール製品という現実
もうひとつ見逃せないデータがあります。ポータブル電源に関する事故のうち、およそ5割はリコール対象製品によるものと報告されています。つまり、すでに「危険だから回収します」とメーカーが発表している製品が、そのまま使われ続けて事故を起こしているのです。
リコール情報は消費者庁のリコール情報サイトやNITEの「SAFE-Lite」で検索できますが、正直なところ、これらを日常的にチェックしている方は多くないでしょう。ここに大きな課題があります。後ほど詳しく触れますが、リコール製品の回収率が驚くほど低いケースもあるのです。
過去10年の主な事故・発火・リコール事例
2017年〜2019年:黎明期のトラブル
ポータブル電源の普及がまだ緒に就いた時期ですが、すでにNITEには事故情報が蓄積され始めていました。2017年から2023年の間にNITEに登録された事故は67件(調査完了分)に達しています(出典:パワーバンクス「ポータブル電源の事故情報」)。この時期はまだ市場規模が小さかったものの、品質管理が不十分なメーカーの製品が原因と見られるトラブルが散発的に報告されていたようです。
ある情報によれば、2018年にポータブル電源のリコール(無償回収)を実施したメーカーがあったにもかかわらず、回収前に出回った製品が翌2019年に全国で10件近い火災事故を引き起こし、その後メーカー自体が市場から姿を消してしまったという事例も伝えられています。メーカーが消えてしまえば、手元に残った製品のサポートはどこにも求められません。
2020年:Jackery 700の火災事故とパオック製品のリコール
2020年11月、茨城県でJackery ポータブル電源 700の使用に関連して火災が発生し、製品および周辺が焼損、1名の方が軽傷を負われたという事故が報告されました。事故調査では、内蔵のリチウムイオン電池セルが異常発熱したことが原因と推定されています。Jackery 700は防災推奨品マークを取得した製品でもあったため、「推奨品でも事故が起きることがあるのか」と不安を感じた方も少なくなかったようです。
Jackery 700自体は正式なリコール対象とはならず、販売終了という形で対応がなされました。その後の新モデルでは安全機能が強化され、2022年発売のJackery 2000Proからはデュアルバッテリーチップを搭載したBMS(バッテリーマネジメントシステム)が採用されています。
同じ2020年11月には、株式会社テイーエムが製造するパオック ポータブル蓄電池「TK-500」「TK-1000」のリコール(無償交換)も実施されました。一部ロットにおいて発煙のおそれがあるとの理由で、対象製品の交換が行われています。
2021年:横浜合同庁舎の火災と住宅火災
2021年1月25日、横浜市中区にある横浜第二合同庁舎内の関東信越厚生局麻薬取締部横浜分室で火災が発生しました。報道によると、分室内で充電していたポータブル電源から出火した可能性があるとされ、消防車約40台が出動する大規模な対応となりました。消防局の調査では、ポータブル電源の内部から異常発熱した形跡が確認されたとのことです。
同年4月には横浜市内のマンション駐車場で車両火災が発生し、車内にポータブル電源が見つかったケースや、木造2階建て住宅から出火して2棟が全焼し、1階でポータブル電源を充電中だったというケースも報告されています。後者の火災では、就寝中だった男性がやけどを負われたと伝えられています。
この年のポータブル電源関連の火災は21件にのぼったとされ、前年と比べて急増しました。充電しながら就寝する、いわゆる「ほったらかし充電」のリスクについて、改めて考えさせられる事例といえるでしょう。
2022年〜2023年:EcoFlow EFDELTAの火災と大規模リコール
EcoFlow Technology Japanが輸入・販売する「EFDELTA 1300-JP」は、人気の高い大容量ポータブル電源でしたが、2022年から2024年にかけて計7件の火災事故が報告されることとなりました。2022年には駐車場の車内で使用中に焼損する火災が発生し、2023年7月27日には茨城県で建物が全焼するという大変深刻な事故も起きています。
事故原因については、内蔵のリチウムイオン電池セルが異常発熱して出火した可能性が高いと推定されていますが、焼損が激しく、異常発熱に至った詳しい原因の特定には至っていないとのことです。
2023年10月20日にリコールが公表され(出典:消費者庁 重大製品事故公表(2024年7月5日))、対象製品はEcoFlow DELTA 2への無償交換が案内されました。
この事例で特に懸念されたのは、対象台数29,000台に対して、2024年6月24日時点での回収率がわずか1.6%にとどまっていたという点です。リコールが発表されていることを知らないまま使い続けている方が大多数という状況と思われます。メーカーのSNS公式アカウントでも、リコールに関する情報発信が十分ではなかったとの指摘もあるようです。
2024年:相次ぐリコールと新たな事故
2024年に入っても、ポータブル電源関連のリコールは止まりません。この年にリコール対象となった主なポータブル電源は以下のとおりです。
- 株式会社C&C「iRoomポータブル電源 ZXK-620」(2024年2月27日リコール/出火する重大事故)
- 株式会社テイーエム「パオック ポータブル蓄電池 AM-1000PTK」(2024年4月10日リコール/電池セル発火のおそれ)
- SUNVIC合同会社「SUPAREE / SUNVIC ポータブル電源」(2024年11月15日リコール/火災事故3件)
- 株式会社テイーエム「パオック ポータブル蓄電池 Battery CUBE」(2024年12月20日リコール/電池セル発火のおそれ)
それぞれの事例をもう少し詳しく見てみましょう。2024年2月のiRoom製品では、出火する重大製品事故が報告されたことが理由とされています。4月のパオック製品は、使用状況によっては電池セルから発火のおそれがあるとの判断でした。11月のSUPAREE/SUNVIC製品では、3件の火災事故が発生しており、原因の特定には至っていないものの、今後も同様の事故が起こりうる可能性が高いとの判断によるものでした。
消費者庁からは、ポータブル電源による重大製品事故の公表が複数回にわたって行われ、4月16日に9件、7月5日に17件、9月3日に16件の重大製品事故がそれぞれ報告されています。
2025年:糸島市の火災とAnkerの大規模回収
2025年に入っても事故報告は続いています。この年にリコール対象となった、または回収が発表された主な製品は以下のとおりです。
- EcoFlow Technology Japan「EFDELTA」(2025年2月25日リコール更新/対象29,000台)
- アンカージャパン「Anker Power Bank / Anker MagGo Power Bank」一部モデル(2025年6月26日リコール拡大/不適切な部材使用)
- 株式会社イーノウ・ジャパン「EENOUR ポータブル電源 P5000PRO / F4000」(2025年10月9日リコール/一部ロットが品質基準未達)
- アンカージャパン「Anker PowerCore 10000」ほかモバイルバッテリー・スピーカー(2025年10月21日回収公表/異物混入による内部短絡のおそれ)
福岡県糸島市の加布里コミュニティセンターでは、長時間充電を続けていたポータブル電源付近から出火したとされ、建物が焼損するという火災が発生しました。幸い人的被害はなかったと報じられていますが、災害備蓄用のポータブル電源が逆に火災の原因となった可能性がある事例として、大きな注目を集めました。
2025年6月にはアンカージャパンが、セル製造サプライヤーによる不適切な部材使用が発覚したとして、Anker Power BankやAnker MagGo Power Bankの一部モデルのリコール対象拡大を発表。同年10月にはアンカーのモバイルバッテリーおよびスピーカーの回収がさらに公表されました。
同年10月21日には、株式会社イーノウ・ジャパンのポータブル電源もリコール対象となっています。発火事故の調査の結果、一部ロットの製品が基準を満たしていないことが判明したとのことです。
海外の深刻な事例:HALO 1000とAeiusny
国内の事例だけでなく、海外でも深刻な事故が報告されています。アメリカで販売されていたHALO 1000 Portable Power Stationでは、2022年6月にフロリダ州において、ご高齢の男性が煙による一酸化炭素中毒でお亡くなりになるという大変痛ましい事故が発生しました。2024年8月29日に約5,740台を対象とするリコールが実施されています。
また、中国のShenzhen Yuanzhao E-Commerce Co., Ltd.が製造するAeiusnyブランドのポータブル電源(400W/500W)では、24件の火災・爆発事故が報告され、3件で煙の吸入や火傷による負傷者が出たとされています。被害総額は約45万ドルにのぼるとされ、メーカーが米国CPSC(消費者製品安全委員会)の対応要請に応じなかったため、2025年9月に使用中止警告が発出されるという事態に至りました。
製造元と連絡が取れなくなるケースは、格安の無名ブランド製品で起こりやすい傾向があります。「安いから」という理由だけで飛びつくことの危険性を、これらの事例は如実に示しています。
なぜポータブル電源の事故は起きるのか
リチウムイオン電池の「熱暴走」メカニズム
ポータブル電源の事故を理解するには、その心臓部であるリチウムイオン電池の特性を知っておく必要があります。リチウムイオン電池は、内部に可燃性の電解液を含んでおり、何らかの原因で内部温度が異常に上昇すると、「熱暴走」と呼ばれる連鎖的な化学反応が起こります。これは、電池内部の温度が上がる → 化学反応が加速する → さらに温度が上がる、というサイクルが止められなくなる現象で、最終的に発火や爆発に至る可能性があります。
ポータブル電源には通常、BMS(バッテリーマネジメントシステム)と呼ばれる制御システムが搭載されており、電圧・電流・温度を常時監視して異常を検知すると自動的に保護回路を作動させます。しかし、何らかの「きっかけ」でBMSの制御を超えた事態が生じると、事故に至ってしまうのです。
事故の主な原因パターン
過去の事故事例を分析すると、いくつかの典型的なパターンが浮かび上がってきます。
まず、充電中の事故が全体のおよそ60%を占めているとされている点は非常に重要です。過充電や、充電中に本体が高温になる環境に置かれていたケースが多く報告されています。就寝中の充電や、直射日光が当たる場所での充電は特にリスクが高いといえるでしょう。
次に多いのが、内部短絡(ショート)によるものです。これは、電池内部の正極と負極を隔てるセパレータが損傷し、直接接触してしまうことで起こります。落下などの物理的な衝撃が引き金になることもあれば、製造段階での不純物混入が原因となることもあります。とりわけ円筒形セルの組電池は、他の形状と比較して衝撃に弱いとも指摘されています。
また、経年劣化も見落とせない要因です。充放電を繰り返すことで進む「通電劣化」と、使用しなくても時間とともに進む「経時劣化」の両方がバッテリーの性能を低下させます。高温環境での保管はこの劣化を加速させるため、夏場の車内への放置は特に避けるべきです。夏場の車内温度は1時間ほどで50℃を超えることもあるとされており、バッテリーにとっては過酷すぎる環境といえます。
ポータブル電源が「電気用品安全法の対象外」であるという問題
意外と知られていないのですが、ポータブル電源は日本の電気用品安全法(PSE法)の規制対象外です。モバイルバッテリー(直流出力のみ)は2018年の通達改正を経て2019年2月から規制対象になりましたが、交流(AC)を出力できるポータブル電源は「蓄電池に該当しない」とされ、PSE法の網にかかっていません(出典:経済産業省 モバイルバッテリーに関するFAQ)。
つまり、日本で購入できるからといって安全性が保証されているわけではない、ということです。製品に付いているPSEマークは、多くの場合、付属のACアダプター部分に対するものであり、ポータブル電源本体に対するものではありません。この点は多くの消費者が誤解しているところでもあります。
この状況に対し、経済産業省は2023年にポータブル電源の安全性に関する検討会を立ち上げ、2024年2月に「ポータブル電源の安全性要求事項(中間とりまとめ)」を策定しました。そしてこの安全性要求事項は、2024年6月にSマーク認証の追加基準として採用されています(出典:JQA Sマーク追加基準制定のお知らせ)。Sマークは第三者認証機関による安全認証であり、法的な義務ではありませんが、今後の製品選びにおいてひとつの目安となるでしょう。
さらに2025年2月には「一般社団法人 日本ポータブル電源協会(JPPSA)」が設立され、業界を挙げた安全性向上の取り組みが始まっています。規制の整備は道半ばですが、着実に前進しているといえそうです。
三元系とリン酸鉄リチウムイオン電池、安全性はどう違う?
三元系リチウムイオン電池の特徴とリスク
従来のポータブル電源に多く使われてきたのが、三元系リチウムイオン電池(NMC)です。ニッケル・マンガン・コバルトの三元素を正極材料に使用しており、エネルギー密度が高く、小型・軽量な製品を作りやすいという利点があります。
一方で、三元系リチウムイオン電池の熱分解温度は約200〜220℃程度とされており、比較的低い温度で熱暴走が起きやすいリスクを抱えているといわれています。前述のEcoFlow EFDELTAやJackery 700の事故当時に使われていたのも、この三元系バッテリーでした。
リン酸鉄リチウムイオン電池(LFP)が選ばれる理由
近年、多くのメーカーが新モデルで採用を進めているのが、リン酸鉄リチウムイオン電池(LiFePO4/LFP)です。熱分解温度は約600℃程度とされ、三元系と比べて大幅に高く、熱暴走が起こりにくいという大きなメリットがあります。
サイクル寿命(充放電を繰り返せる回数)も大幅に優れており、三元系が500〜1,000回程度であるのに対し、リン酸鉄は3,000回以上のサイクル寿命を持つ製品も珍しくありません。さらに、正極材料にコバルトなどのレアメタルを使用しないため、環境負荷が低いという側面もあります。
ただし注意しておきたいのは、リン酸鉄リチウムイオン電池だからといって100%安全とは言い切れないということです。安価な素材や不十分な品質管理のもとで製造されたリン酸鉄バッテリーであれば、当然リスクは残ります。ポータブル電源の安全性は、バッテリーの種類だけでなく、本体全体の設計品質・BMS性能・製造管理体制といった総合力で決まるものです。
どちらを選ぶべきか
結論としては、これから新たにポータブル電源を購入するのであれば、リン酸鉄リチウムイオン電池を搭載したモデルを選ぶのが無難です。現在はJackeryのPlusシリーズ、EcoFlowのRIVER 2シリーズ、AnkerのSolixシリーズ、BLUETTIの多くのモデルなど、主要メーカーの現行ラインナップはリン酸鉄が主流になりつつあります。
もちろん三元系の製品がすべて危険というわけではありません。しっかりしたBMSと安全設計が施された三元系製品も存在します。ただ、安全性と長寿命を重視するなら、リン酸鉄モデルの優位性は明らかです。初期費用がやや高くなる場合でも、長い目で見ればコストパフォーマンスに優れるケースが多いでしょう。
国内の主なポータブル電源リコール一覧
経済産業省が公表しているリコール情報
ここで、ポータブル電源に関する主なリコール情報をまとめておきます(出典:経済産業省 リチウム電池使用製品リコール情報)。お手持ちの製品が該当していないか、ぜひ確認してみてください。
2025年にリコールが実施・更新されたポータブル電源
- EcoFlow Technology Japan「EFDELTA」(型番:4897082661221)リコール更新日:2025年2月25日/販売期間:2020年2月〜/対象台数:29,000台/理由:火災事故が発生したため/対応:DELTA 2への無償交換/問い合わせ先:EFDELTA製品リコール窓口(電話:050-3090-2966)
- 株式会社イーノウ・ジャパン「EENOUR ポータブル電源」(型番:P5000PRO/F4000黒/F4000緑)リコール日:2025年10月9日/対象台数:計144台/理由:発火事故の調査の結果、一部ロットが品質基準未達と判明/対応:無償点検・アップグレード、または回収・返金
2024年にリコールが実施されたポータブル電源
- 株式会社テイーエム「パオック ポータブル蓄電池 Battery CUBE」リコール日:2024年12月20日/理由:電池セルより発火するおそれがあるため/対応:回収・返金
- SUNVIC合同会社「SUPAREE ポータブル電源 および SUNVIC ポータブル電源」リコール日:2024年11月15日/理由:3件の火災事故が発生、今後も同様の事故が起こりうる可能性が高い/対応:回収・返金
- 株式会社テイーエム「パオック ポータブル蓄電池」(型番:AM-1000PTK)リコール日:2024年4月10日/理由:使用状況により電池セルから発火のおそれがあるため/対応:回収・返金/問い合わせ先:0120-73-4889
- 株式会社C&C「iRoomポータブル電源」(型番:ZXK-620)リコール日:2024年2月27日/理由:製品から出火する重大製品事故が発生したため/対応:無償交換/問い合わせ先:recall@candc-kobe.jp
2023年にリコールが実施されたポータブル電源
- EcoFlow Technology Japan「EFDELTA」(型番:EFDELTA 1300-JP)リコール公表日:2023年10月20日/理由:内蔵リチウムイオン電池に不備があり、火災に至る重大事故が発生/対応:DELTA 2への無償交換
2020年にリコールが実施されたポータブル電源
- 株式会社テイーエム「パオック ポータブル蓄電池」(型番:TK-500/TK-1000)リコール日:2020年11月11日/理由:一部ロットにおいて発煙するおそれが判明したため/対応:無償交換/問い合わせ先:0120-73-4889
事故が報告されているがリコール未実施の主な製品
正式なリコール対象にはなっていないものの、NITEや消費者庁の事故情報データバンクで事故報告が確認されている製品もあります。
- メイヤンパワー新エネルギー有限公司「ポータブル電源」(型番:PS5Bほか)事故報告15件(事故情報データバンク集計)。輸入事業者が不明で措置が取れないケースもあり
- 株式会社SUNGA「ポータブル電源」事故報告5件(事故情報データバンク集計)
- 株式会社アイパー・ジャパン「ポータブル電源」事故報告3件(事故情報データバンク集計)
- Jackery「ポータブル電源 700」(2019年発売、現在は販売終了)2020年に茨城県で火災事故が1件報告。リコール対象にはならず、販売終了で対応
このほかにも、ネット通販で購入した製品で輸入事業者が不明なため措置が取れないという事例も多く報告されています。リコール情報は随時更新されるため、消費者庁リコール情報サイトやNITE SAFE-Liteで定期的に確認する習慣を持つことをおすすめします。
ポータブル電源の事故を防ぐための対策
購入前にチェックすべきポイント
安全なポータブル電源を選ぶためには、購入前の情報収集が何より大切です。以下のポイントを意識してみてください。
まず、製造・販売元がはっきりしている製品を選ぶこと。公式サイトがきちんと運営されているか、日本語のサポート窓口があるか、連絡先(電話番号や住所)が実在するかを確認しましょう。万が一トラブルが起きたとき、連絡先不明では対処のしようがありません。
次に、購入を検討している製品が過去にリコールや事故報告の対象になっていないかを調べましょう。消費者庁の事故情報データバンクシステムやNITE SAFE-Liteで型番やメーカー名を検索できます。同一メーカーの他製品で事故が起きていないかも併せてチェックするとより安心です。
バッテリーの種類も重要な判断材料です。前述のとおり、リン酸鉄リチウムイオン電池搭載モデルは安全性の面で優位性があります。三元系モデルを選ぶ場合は、BMS(バッテリーマネジメントシステム)の充実度や、メーカーの安全対策への取り組み姿勢を確認しましょう。
また、異常に安価な製品には要注意です。同容量・同出力の他社製品と比較して不自然に安い場合は、品質管理にコストがかけられていない可能性があります。「安物買いの銭失い」どころか、安全を失うことになりかねません。
購入後の正しい使い方と保管方法
購入した後も、正しい使い方を心がけることで事故のリスクを大幅に下げることができます。
最も大切なのは、充電中は定期的に様子を確認することです。就寝中の長時間充電はできるだけ避け、充電は目の届く場所で行いましょう。異常な発熱、変な音、焦げたような匂いを感じたら、すぐに充電を中止してください。
高温環境での使用・保管も厳禁です。真夏の車内、直射日光が当たる窓際、暖房器具のそばなどは避けましょう。また、布団やクッション、衣類の上での充電も熱がこもりやすく危険です。風通しの良い平らな場所で充電するのが基本です。
強い衝撃を与えないことも重要です。落下や強い振動によって内部のバッテリーが損傷し、内部短絡を起こす可能性があります。持ち運びの際は丁寧に扱い、車載時もしっかり固定しておきましょう。
長期間使用しない場合は、バッテリー残量を50〜60%程度に保った状態で保管することが推奨されています。残量が0%のまま長期間放置すると過放電による劣化が進み、逆に100%のまま放置しても電池にストレスがかかります。3〜6ヶ月に一度は通電して状態を確認しましょう。
もし発火してしまったら
万が一、ポータブル電源から発火してしまった場合は、大量の水で消火し、可能であればバケツや浴槽に水を溜めて製品ごと水没させることが推奨されています。ポータブル電源には可燃性の電解液を含むリチウムイオン電池が複数搭載されており、一度発火すると次々に延焼する危険があります(出典:NITE「ポータブル電源 リコール製品に注意」)。
消火できない場合や火が大きい場合は、無理をせず119番に通報し、速やかに避難してください。安全が最優先です。
信頼できるメーカーと安全性への取り組み
主要メーカーの安全対策
ポータブル電源市場では、安全性を差別化ポイントとして強化するメーカーが増えてきています。ここでは、代表的なメーカーの取り組みを紹介します。
Jackery(ジャクリ)は、2022年以降の新モデルでデュアルバッテリーチップBMSを採用し、片方のチップに障害が発生してもバックアップが機能する二重安全設計を導入しています。新しいPlusシリーズではリン酸鉄リチウムイオン電池に移行し、UL安全落下基準への適合やポリカーボネート素材の採用など、物理的な安全性も高めています。ユーザー登録による最長5年間の保証や無償回収サービスも提供されています。
EcoFlow(エコフロー)は、RIVER 2シリーズ以降でリン酸鉄リチウムイオン電池を採用。EFDELTAのリコール対応では課題が指摘されましたが、新世代製品では安全機能が大幅に強化されています。
Anker(アンカー)は、EVクラスのリン酸鉄リチウムイオン電池を採用し、釘刺し試験(バッテリーに釘を貫通させても発火しないかを確認する過酷なテスト)をクリアした製品を展開しているとしています。2024年〜2025年にかけてモバイルバッテリーのリコール対応が続きましたが、サプライチェーン管理の強化に取り組んでいるとのことです。
BLUETTI(ブルーティ)は、早くからリン酸鉄リチウムイオン電池を採用してきたメーカーのひとつで、幅広いラインナップを展開しています。
安全認証の確認ポイント
ポータブル電源を選ぶ際に確認したい安全認証をまとめておきましょう。
PSEマーク:ポータブル電源本体は対象外ですが、付属のACアダプターにはPSEマークが必要です。これが付いていない場合は要注意です。
Sマーク:2024年6月に制定されたポータブル電源向けの第三者安全認証です。法的義務ではありませんが、Sマーク取得製品は経済産業省の安全性要求事項をクリアしているため、安心材料のひとつになります。
UL認証:アメリカの安全規格で、国際的に広く認知されています。UL認証を取得している製品は、一定水準の安全性試験をパスしていると考えてよいでしょう。
防災推奨品マーク:一般社団法人防災安全協会が認定する、災害時に安全に活用できる防災用品の証です。品質や安全性、耐久性に関する審査をクリアした製品に付与されています。
まとめ:正しく知って、正しく選ぶ
事故を「怖がる」のではなく「備える」
ここまで、過去10年間のポータブル電源にまつわる事故・発火・リコール事例を見てきました。増加傾向にある事故件数や、建物全焼・人的被害といった深刻な事例に触れると、「やっぱりポータブル電源は危ないのでは」と思われるかもしれません。
しかし、冷静に見れば、事故の多くには明確な原因や背景があるようです。品質管理が不十分な製品を選んでしまったケース、リコール情報を知らずに使い続けていたケース、高温環境で充電していたケース。逆に言えば、正しい製品選びと正しい使い方を心がければ、リスクは大幅に低減できると考えられます。
ポータブル電源は、災害大国である日本において、家庭の防災力を高める頼もしい存在です。キャンプや車中泊の楽しみを広げてくれるパートナーでもあります。その恩恵を安心して受けるために、ぜひこの記事の内容を参考にしていただければ嬉しく思います。
最後にもう一度。お手持ちのポータブル電源がリコール対象になっていないか、今すぐ確認してみてください。消費者庁リコール情報サイト(https://www.recall.caa.go.jp/)と、NITE SAFE-Lite(https://safe-lite.nite.go.jp/)で簡単に調べることができます。
その小さな確認が、大きな安心につながります。
参考情報・出典リンク集
公的機関・政府系情報
- NITE(製品評価技術基盤機構)「リチウムイオン電池搭載製品」の火災事故を防ぐ3つのポイント
- NITE プレスリリース資料「夏バテ(夏のバッテリー)にご用心」(PDF)
- NITE 注意喚起「ポータブル電源 リコール製品に注意」
- NITE SAFE-Lite(製品事故情報検索システム)
- 経済産業省「ポータブル電源の安全性要求事項(中間とりまとめ)について」
- 経済産業省「モバイルバッテリーに関するFAQ」
- 経済産業省「リチウム電池使用製品リコール情報」
- 消費者庁 リコール情報サイト
- 消費者庁 重大製品事故公表(2024年4月16日)
- 消費者庁 重大製品事故公表(2024年7月5日)
- 消費者庁 重大製品事故公表(2024年9月3日)
- 消費者庁 事故情報データバンクシステム





