<2026年6月29日更新>ポータブル電源の火災・事故・リコール全記録、10年分の事例と安全対策をまとめました。
ポータブル電源は、キャンプや車中泊、そして災害時の備えとして急速に普及が進んでいます。近年は累計出荷台数が増え続けており、もはや特別なアイテムではなくなりつつあります。
しかしその一方で、ポータブル電源による発火・火災事故やリコールの報告は年々増加しており、NITE(製品評価技術基盤機構)のデータによれば、リチウムイオン電池搭載製品の事故は2020年から2024年の5年間で1,860件にのぼり、そのうち約85%が火災に発展しています。
2026年5月29日にNITEが「2025年度 事故情報収集報告書」を公表し、モバイルバッテリーを含む充電器の事故件数がついにバッテリー類を上回って製品群別ワースト1位になるなど、リチウムイオン電池搭載製品の事故多発傾向は続いています。

この記事では、過去10年に報告されたポータブル電源の事故・発火・リコール事例を時系列で整理し、事故の原因や傾向、そして安全に使うための具体的なポイントをお伝えしていきます。
「ポータブル電源が怖い」ではなく、「正しく知って、正しく選ぶ」ための一助になれば幸いです。
記事の結論
- ポータブル電源関連の事故は、普及拡大とともに増加傾向にある
⇒とくにリチウムイオン電池搭載製品の事故は近年増えており、夏場や高温環境での使用・保管には注意が必要です。 - 過去にはリコール対象製品による事故も多く、リコール確認が最重要
⇒すでに回収・交換が案内されている製品を知らずに使い続けることが、大きなリスクになります。 - 安全性を見るうえでは、電池の種類・BMS・安全認証・メーカー対応を確認したい
⇒リン酸鉄リチウムイオン電池、BMS、安全認証、保証・回収対応などは、購入前に確認したい重要な判断材料です。 - 正しく選び、正しく使えば、ポータブル電源は防災・車中泊・キャンプで頼れる電源になる
⇒事故を過度に怖がるのではなく、リコール確認、高温回避、目の届く場所での充電、適切な保管を徹底することが大切です。
この記事でわかること
- ポータブル電源の事故件数が近年増加傾向にあり、夏場に注意が必要とされる背景
- 横浜合同庁舎の火災や住宅火災、EcoFlow EFDELTAの火災事故など、代表的な事例の概要
- 発火原因として考えられる異常発熱、内部短絡、熱暴走などの基本的な仕組み
- 三元系とリン酸鉄リチウムイオン電池で、安全性や選び方の考え方がどう違うかという整理
- 購入前に確認したいメーカー情報、事故情報、価格帯、安全認証などのチェックポイント
- リコール情報を消費者庁やNITEで確認する必要性と、使い続けるリスクの大きさ


名前:Masaki T
経歴:2019年にポータブル電源を初めて購入して以来、現在まで日常的に活用しています。防災やアウトドア(キャンプ・車中泊)など用途は幅広いですが、特にPC電源としての使用経験が豊富です。
日本の大手電機メーカーで、回路設計エンジニアとして約5年勤務。実使用と技術の両面から、信頼性の高い情報発信を心がけています。
ポタ電の失敗&後悔25選 ポタ電源の火災・事故・リコール情報
主な参照先:日本ポータブル電源協会/経済産業省/製品評価技術基盤機構
ポータブル電源の事故件数はどう推移しているのか


NITEの統計に見る増加傾向
まずは、ポータブル電源を含むリチウムイオン電池搭載製品の事故が、この10年でどのように変化してきたかを確認しておきましょう。NITE(独立行政法人 製品評価技術基盤機構)の「2024年度事故情報解析報告書」によると、ポータブル電源の事故は2017年度に初めて確認され、2018年度以降は増加傾向にあります。2015〜2024年度の集計では右肩上がりの推移が続いており、2024年度は42件に達しました(出典:NITE「リチウムイオン電池搭載製品の事故」注意喚起)。



リチウムイオン電池搭載製品の事故全体で見ると、2020〜2024年の5年間で1,860件が報告されており、そのうち約85%(1,587件)が火災事故です。
また2026年5月29日にNITEが発表した「2025年度 事故情報収集報告書」では、モバイルバッテリーを含む充電器の事故件数がバッテリー類全体を上回り、製品群別でワースト1位になりました。
バッテリー類全体の事故も依然として多く、「リチウム電池搭載製品に関する事故が多発する傾向が続いている」とNITEは指摘しています。
「便利で身近になったぶん、トラブルも増えた」という、なんとも皮肉な構図が見えてきます。
事故の季節的な傾向として、6月から8月にかけての夏場に事故が集中することも報告されています。気温の上昇に伴ってバッテリー温度が上がりやすくなるため、夏場のポータブル電源の取り扱いには一層の注意が必要です。
リコール製品を使い続けるリスク



見逃せないデータがあります。消費者庁の2021年の注意喚起では、当時把握されていたポータブル電源事故のうち、約5割がリコール対象製品によるものだったとされています。
割合は集計時期によって変わりますが、「すでに『危険だから回収します』とメーカーが発表している製品が、そのまま使われ続けて事故を起こしている」という構図は、現在も変わっていません。
リコール情報は消費者庁のリコール情報サイトやNITEの「SAFE-Lite」で検索できますが、正直なところ、これらを日常的にチェックしている方は多くないでしょう。ここに大きな課題があります。後ほど詳しく触れますが、リコール製品の回収率が驚くほど低いケースもあるのです。
過去10年の主な事故・発火・リコール事例


2017年〜2019年:黎明期のトラブル
ポータブル電源の普及がまだ緒に就いた時期ですが、すでにNITEには事故情報が蓄積され始めていました。NITEの「2024年度事故情報解析報告書」によると、ポータブル電源の事故が初めて記録されたのは2017年度で、その後2018年度以降は増加傾向が続いています。
この時期はまだ市場規模が小さかったものの、品質管理が不十分なメーカーの製品が原因と見られるトラブルが散発的に報告されていたようです。



ある情報によれば、2018年にポータブル電源のリコール(無償回収)を実施したメーカーがあったにもかかわらず、回収前に出回った製品が翌2019年に全国で複数の火災事故を引き起こし、その後メーカー自体が市場から姿を消してしまったという事例も伝えられています。
メーカーが消えてしまえば、手元に残った製品のサポートはどこにも求められません。
2020年:Jackery 700の火災事故とパオック製品のリコール
2020年11月、茨城県でJackery ポータブル電源 700の使用に関連して火災が発生し、製品および周辺が焼損、1名の方が軽傷を負われたという事故が報告されました。事故調査では、内蔵のリチウムイオン電池セルが異常発熱したことが原因と推定されています。
Jackery 700は防災推奨品マークを取得した製品でもあったため、「推奨品でも事故が起きることがあるのか」と不安を感じた方も少なくなかったようです。



Jackery 700自体は正式なリコール対象とはならず、販売終了という形で対応がなされました。
その後の新モデルでは安全機能が強化され、2022年発売のJackery 2000Proからはデュアルバッテリーチップを搭載したBMS(バッテリーマネジメントシステム)が採用されています。
同じ2020年11月には、株式会社テイーエムが製造するパオック ポータブル蓄電池「TK-500」「TK-1000」のリコール(無償交換)も実施されました。一部ロットにおいて発煙のおそれがあるとの理由で、対象製品の交換が行われています。
2021年:横浜合同庁舎の火災と住宅火災
2021年1月25日、横浜市中区にある横浜第二合同庁舎内の関東信越厚生局麻薬取締部横浜分室で火災が発生しました。報道によると、分室内で充電していたポータブル電源から出火した可能性があるとされ、消防車約40台が出動する大規模な対応となりました。消防局の調査では、ポータブル電源の内部から異常発熱した形跡が確認されたとのことです。
同年4月には横浜市内のマンション駐車場で車両火災が発生し、車内にポータブル電源が見つかったケースや、木造2階建て住宅から出火して2棟が全焼し、1階でポータブル電源を充電中だったというケースも報告されています。後者の火災では、就寝中だった男性がやけどを負われたと伝えられています。
充電しながら就寝する、いわゆる「ほったらかし充電」のリスクについて、改めて考えさせられる事例といえるでしょう。
2022年〜2023年:EcoFlow EFDELTAの火災と大規模リコール
EcoFlow Technology Japanが輸入・販売する「EFDELTA 1300-JP」は、人気の高い大容量ポータブル電源でしたが、2022年から2024年にかけて計7件の火災事故が報告されることとなりました。2022年には駐車場の車内で使用中に焼損する火災が発生し、2023年7月27日には茨城県で建物が全焼するという大変深刻な事故も起きています。



事故原因については、内蔵のリチウムイオン電池セルが異常発熱して出火した可能性が高いと推定されていますが、焼損が激しく、異常発熱に至った詳しい原因の特定には至っていないとのことです。
2023年10月20日にリコールが公表され(出典:消費者庁 重大製品事故公表(2024年7月5日))、対象製品はEcoFlow DELTA 2への無償交換が案内されました。
この事例で特に懸念されたのは、対象台数29,000台に対して、2024年6月24日時点での回収率がわずか1.6%にとどまっていたという点です。
リコールが発表されていることを知らないまま使い続けている方が大多数という状況と思われます。メーカーのSNS公式アカウントでも、リコールに関する情報発信が十分ではなかったとの指摘もあるようです。
2024年:相次ぐリコールと新たな事故
2024年に入っても、ポータブル電源関連のリコールは止まりません。この年にリコール対象となった主なポータブル電源は以下のとおりです。
- 株式会社C&C「iRoomポータブル電源 ZXK-620」(2024年2月27日リコール/出火する重大事故)
- 株式会社テイーエム「パオック ポータブル蓄電池 AM-1000PTK」(2024年4月10日リコール/電池セル発火のおそれ)
- SUNVIC合同会社「SUPAREE / SUNVIC ポータブル電源」(2024年11月15日リコール/火災事故3件)
- 株式会社テイーエム「パオック ポータブル蓄電池 Battery CUBE」(2024年12月20日リコール/電池セル発火のおそれ)
消費者庁からは、ポータブル電源による重大製品事故の公表が複数回にわたって行われ、4月16日に9件、7月5日に17件、9月3日に16件の重大製品事故がそれぞれ報告されています(各回の件数はポータブル電源以外の製品も含む合計)。
2025年:糸島市の火災とリコール・回収の連続
2025年7月29日、福岡県糸島市の加布里コミュニティセンターで火災が発生しました。消防の調査により、会議室で24時間常時充電の状態だったリチウムイオン電池の災害用電源が火元と断定されました。建物が焼損するという深刻な被害でしたが、幸い人的被害はなかったと報じられています。防災備蓄用として置いていたポータブル電源が逆に火災の原因になった事例として、大きな注目を集めました。
この年にリコール対象または回収が発表された主な製品は以下のとおりです(ポータブル電源のみを抜粋)。
- EcoFlow Technology Japan「EFDELTA」(2025年2月25日リコール更新/対象29,000台)
- 株式会社イーノウ・ジャパン「EENOUR ポータブル電源 P5000PRO / F4000」(2025年10月9日リコール/一部ロットが品質基準未達)



なお、同年Anker(アンカー)ではモバイルバッテリーや充電式スピーカーを対象とした大規模な回収・リコールが相次ぎましたが、これらはポータブル電源ではなく別カテゴリの製品です。
ただ、同一ブランドの製品であっても、カテゴリが異なれば安全管理の課題も別の問題として起きうる、ということを示す事例といえます。
2026年:EcoFlow RIVER ProとML720iの大規模リコール
2026年に入っても、ポータブル電源のリコールは続いています。
2026年2月5日、EcoFlow Technology Japanが「EcoFlow RIVER Pro」および「EcoFlow RIVER Pro 専用エクストラバッテリー」のリコールを発表しました(出典:経済産業省 製品別リコール情報)。セルの異常発熱による火災事故が多発したことが理由で、対象台数はEcoFlow RIVER Proが57,000台、専用エクストラバッテリーが6,600台。対応策はファームウェアアップデートです。
2026年4月1日には、株式会社Willbe(旧:三菱重工メイキエンジン)が「ポータブル電源 ML720i」のリコールを発表しました(出典:経済産業省 製品別リコール情報)。本製品はEcoFlow Technology JapanからOEM供給を受け、三菱重工メイキエンジンブランドで販売されていたもので、対象台数は6,030台。長時間の使用によるバッテリー劣化で発煙・発火に至るおそれがあるとして、製品を回収しファームウェアアップデート後に返却する対応が実施されています。



EcoFlow RIVER Proは2020〜2024年、ML720iは2021年に販売されたモデルです。数年前に購入してそのまま使い続けている方が多い可能性があります。
お持ちの方は、経産省のリコール情報または各メーカーの公式サポートページを確認して、必ず対応状況を確かめてみてください。
また、消費者庁は2026年6月5日と6月26日にもポータブル電源(リチウムイオン)を含む重大製品事故を公表しており、2026年においてもリコール製品が引き起こす事故が後を絶たない状況です(各回の公表件数にはポータブル電源以外の製品も含まれています)。
海外の深刻な事例:HALO 1000とAeiusny
国内の事例だけでなく、海外でも深刻な事故が報告されています。アメリカで販売されていたHALO 1000 Portable Power Stationでは、2022年6月にフロリダ州において、ご高齢の男性が煙の吸入により死亡するという大変痛ましい事故が発生しました。2024年8月29日に約5,740台を対象とするリコールが実施されています(出典:米国CPSC)。
また、中国のShenzhen Yuanzhao E-Commerce Co., Ltd.が製造するAeiusnyブランドのポータブル電源(400W/500W)では、24件の火災・爆発事故が報告され、3件で煙の吸入や火傷による負傷者が出たとされています。被害総額は約45万ドルにのぼるとされ、メーカーが米国CPSC(消費者製品安全委員会)の対応要請に応じなかったため、2025年9月に使用中止警告が発出されるという事態に至りました。
サポート先が不明な製品では、事故後に連絡を取ることができず、リコール対応も受けられないリスクがあります。販売価格だけを見て選ぶことの危険性を、これらの事例は示しています。
なぜポータブル電源の事故は起きるのか


リチウムイオン電池の「熱暴走」メカニズム
ポータブル電源の事故を理解するには、その心臓部であるリチウムイオン電池の特性を知っておく必要があります。リチウムイオン電池は、内部に可燃性の電解液を含んでおり、何らかの原因で内部温度が異常に上昇すると、「熱暴走」と呼ばれる連鎖的な化学反応が起こります。



これは、電池内部の温度が上がる → 化学反応が加速する → さらに温度が上がる、というサイクルが止められなくなる現象で、最終的に発火や爆発に至る可能性があります。
ポータブル電源には通常、BMS(バッテリーマネジメントシステム)と呼ばれる制御システムが搭載されており、電圧・電流・温度を常時監視して異常を検知すると自動的に保護回路を作動させます。


しかし、何らかの「きっかけ」でBMSの制御を超えた事態が生じると、事故に至ってしまうのです。
事故の主な原因パターン
過去の事故事例を分析すると、いくつかの典型的なパターンが浮かび上がってきます。



まず、充電中の事故が多くを占める点は非常に重要です。過充電や、充電中に本体が高温になる環境に置かれていたケースが多く報告されています。
就寝中の充電や、直射日光が当たる場所での充電は特にリスクが高いといえるでしょう。糸島市の火災事例でも、24時間を超える長時間充電が火災の引き金になったとされています。
次に多いのが、内部短絡(ショート)によるものです。これは、電池内部の正極と負極を隔てるセパレータが損傷し、直接接触してしまうことで起こります。



落下などの物理的な衝撃が引き金になることもあれば、製造段階での不純物混入が原因となることもあります。とりわけ円筒形セルの組電池は、他の形状と比較して衝撃に弱いとも指摘されています。
また、経年劣化も見落とせない要因です。充放電を繰り返すことで進む「通電劣化」と、使用しなくても時間とともに進む「経時劣化」の両方がバッテリーの性能を低下させます。EcoFlow RIVER ProやML720iのリコールでも「長時間の使用によるバッテリー劣化」が発煙・発火の原因として挙げられており、長く使い続けた製品には特段の注意が必要です。



高温環境での保管はこの劣化を加速させるため、夏場の車内への放置は特に避けるべきです。
夏場の車内温度は1時間ほどで50℃を超えることもあるとされており、バッテリーにとっては過酷すぎる環境といえます。「電源をオフにしているから大丈夫」という思い込みは禁物で、オフ状態でも高温による劣化や発火のリスクはゼロではありません。
ポータブル電源が「電気用品安全法の対象外」であるという問題
意外と知られていないのですが、ポータブル電源は日本の電気用品安全法(PSE法)の規制対象外です。モバイルバッテリー(直流出力のみ)は2018年の通達改正を経て2019年2月から規制対象になりましたが、交流(AC)を出力できるポータブル電源は「モバイルバッテリーとは制度上の区分が異なる」とされ、PSE法の網にかかっていません(出典:経済産業省 モバイルバッテリーに関するFAQ)。



つまり、日本で購入できるからといって安全性が保証されているわけではない、ということです。
製品に付いているPSEマークは、多くの場合、付属のACアダプター部分に対するものであり、ポータブル電源本体に対するものではありません。
この点は多くの消費者が誤解しているところでもあります。
この状況に対し、経済産業省は2023年にポータブル電源の安全性に関する検討会を立ち上げ、2024年2月に「ポータブル電源の安全性要求事項(中間とりまとめ)」を策定しました。そしてこの安全性要求事項は、2024年6月にSマーク認証の追加基準として採用されています(出典:JQA Sマーク追加基準制定のお知らせ)。Sマークは第三者認証機関による安全認証であり、法的な義務ではありませんが、今後の製品選びにおいてひとつの目安となるでしょう。
2024年11月には「一般社団法人 日本ポータブル電源協会(JPPSA)」が設立され、2025年に入ってから主要メーカーによる参画発表が相次ぎ、業界を挙げた安全性向上の取り組みが本格的に始まっています。
同協会はアンカー・ジャパンを代表理事とし、EcoFlow Technology Japan、Jackery Japan、BLUETTI JAPANなどが理事を務めており、入会審査基準として国際安全基準「IEC62368-1」を採用。
早ければ2027年春を目標にポータブル電源専用のJIS規格の制定を目指すと表明しています(出典:Impress Watch「ポータブル電源にJIS規格、安全対応強化へ」)。規制の整備は道半ばですが、着実に前進しているといえそうです。
三元系とリン酸鉄リチウムイオン電池、安全性はどう違う?


三元系リチウムイオン電池の特徴とリスク



従来のポータブル電源に多く使われてきたのが、三元系リチウムイオン電池(NMC)です。ニッケル・マンガン・コバルトの三元素を正極材料に使用しており、エネルギー密度が高く、小型・軽量な製品を作りやすいという利点があります。
一方で、三元系リチウムイオン電池は一般にリン酸鉄系(LFP)よりも熱安定性が低く、高温環境や過充電・経年劣化などの条件が重なると熱暴走が起きやすいリスクがあるといわれています。前述のEcoFlow EFDELTA、EcoFlow RIVER Pro、ML720i、Jackery 700などの事故当時に使われていたのも、この三元系バッテリーでした。
リン酸鉄リチウムイオン電池(LFP)が選ばれる理由
近年、多くのメーカーが新モデルで採用を進めているのが、リン酸鉄リチウムイオン電池(LiFePO4/LFP)です。一般に三元系よりも熱安定性が高く、熱暴走が起こりにくいとされています。
サイクル寿命(充放電を繰り返せる回数)も大幅に優れており、三元系が500〜1,000回程度であるのに対し、リン酸鉄は3,000回以上のサイクル寿命を持つ製品も珍しくありません。さらに、正極材料にコバルトなどのレアメタルを使用しないため、環境負荷が低いという側面もあります。



ただし注意しておきたいのは、リン酸鉄リチウムイオン電池だからといって100%安全とは言い切れないということです。
安価な素材や不十分な品質管理のもとで製造されたリン酸鉄バッテリーであれば、当然リスクは残ります。
ポータブル電源の安全性は、バッテリーの種類だけでなく、本体全体の設計品質・BMS性能・製造管理体制といった総合力で決まるものです。
どちらを選ぶべきか
結論としては、これから新たにポータブル電源を購入するのであれば、リン酸鉄リチウムイオン電池を搭載したモデルを選ぶのが無難です。
現在はJackeryのPlusシリーズ、EcoFlowのRIVER 2シリーズ、AnkerのSolixシリーズ、BLUETTIの多くのモデルなど、主要メーカーの現行ラインナップはリン酸鉄が主流になりつつあります。
もちろん三元系の製品がすべて危険というわけではありません。しっかりしたBMSと安全設計が施された三元系製品も存在します。ただ、安全性と長寿命を重視するなら、リン酸鉄モデルの優位性は明らかです。初期費用がやや高くなる場合でも、長い目で見ればコストパフォーマンスに優れるケースが多いでしょう。
国内の主なポータブル電源リコール一覧


経済産業省が公表しているリコール情報



ここで、ポータブル電源に関する主なリコール情報をまとめておきます(出典:経済産業省 リチウム電池使用製品リコール情報)。お手持ちの製品が該当していないか、ぜひ確認してみてください。
2026年にリコールが実施されたポータブル電源
- 株式会社Willbe(旧:三菱重工メイキエンジン)「ポータブル電源 ML720i」リコール日:2026年4月1日/販売期間:2021年4月〜2021年9月/対象台数:6,030台/理由:長時間の使用によりバッテリー劣化に起因する異常な発煙・発火のおそれがあるため/対応:製品回収+ファームウェアアップデート後に返却/問い合わせ先:株式会社Willbe(案内ページ)
- EcoFlow Technology Japan「EcoFlow RIVER Pro / EcoFlow RIVER Pro 専用エクストラバッテリー」(型番:EFRIVER600PRO-JP / EFRIVER600PRO-EB-JP)リコール日:2026年2月5日/販売期間:2020年11月〜2024年4月/対象台数:RIVER Pro 57,000台、専用エクストラバッテリー 6,600台/理由:セルの異常発熱による火災事故が多発したため/対応:ファームウェアアップデート(製品を送付してアップデート)/問い合わせ先:050-3355-3196
2025年にリコールが実施・更新されたポータブル電源
- EcoFlow Technology Japan「EFDELTA」(型番:4897082661221)リコール更新日:2025年2月25日/販売期間:2020年2月〜/対象台数:29,000台/理由:火災事故が発生したため/対応:DELTA 2への無償交換/問い合わせ先:EFDELTA製品リコール窓口(電話:050-3090-2966)
- 株式会社イーノウ・ジャパン「EENOUR ポータブル電源」(型番:P5000PRO/F4000黒/F4000緑)リコール日:2025年10月9日/対象台数:計144台/理由:発火事故の調査の結果、一部ロットが品質基準未達と判明/対応:無償点検・アップグレード、または回収・返金
2024年にリコールが実施されたポータブル電源
- 株式会社テイーエム「パオック ポータブル蓄電池 Battery CUBE」リコール日:2024年12月20日/理由:電池セルより発火するおそれがあるため/対応:回収・返金
- SUNVIC合同会社「SUPAREE ポータブル電源 および SUNVIC ポータブル電源」リコール日:2024年11月15日/理由:3件の火災事故が発生、今後も同様の事故が起こりうる可能性が高い/対応:回収・返金
- 株式会社テイーエム「パオック ポータブル蓄電池」(型番:AM-1000PTK)リコール日:2024年4月10日/理由:使用状況により電池セルから発火のおそれがあるため/対応:回収・返金/問い合わせ先:0120-73-4889
- 株式会社C&C「iRoomポータブル電源」(型番:ZXK-620)リコール日:2024年2月27日/理由:製品から出火する重大製品事故が発生したため/対応:無償交換/問い合わせ先:recall@candc-kobe.jp
2023年にリコールが実施されたポータブル電源
- EcoFlow Technology Japan「EFDELTA」(型番:EFDELTA 1300-JP)リコール公表日:2023年10月20日/理由:内蔵リチウムイオン電池に不備があり、火災に至る重大事故が発生/対応:DELTA 2への無償交換
2020年にリコールが実施されたポータブル電源
- 株式会社テイーエム「パオック ポータブル蓄電池」(型番:TK-500/TK-1000)リコール日:2020年11月11日/理由:一部ロットにおいて発煙するおそれが判明したため/対応:無償交換/問い合わせ先:0120-73-4889
事故が報告されているがリコール未実施の主な製品
正式なリコール対象にはなっていないものの、NITEや消費者庁の事故情報データバンクで事故報告が確認されている製品もあります。
- メイヤンパワー新エネルギー有限公司「ポータブル電源」(型番:PS5Bほか)事故情報データバンクに複数の事故報告あり。輸入事業者が不明で措置が取れないケースもあり
- 株式会社SUNGA「ポータブル電源」事故情報データバンクに複数の事故報告あり
- 株式会社アイパー・ジャパン「ポータブル電源」事故情報データバンクに複数の事故報告あり
- Jackery「ポータブル電源 700」(2019年発売、現在は販売終了)2020年に茨城県で火災事故が1件報告。リコール対象にはならず、販売終了で対応
このほかにも、ネット通販で購入した製品で輸入事業者が不明なため措置が取れないという事例も多く報告されています。リコール情報は随時更新されるため、消費者庁リコール情報サイトやNITE SAFE-Liteで定期的に確認する習慣を持つことをおすすめします。
ポータブル電源の事故を防ぐための対策


購入前にチェックすべきポイント



安全なポータブル電源を選ぶためには、購入前の情報収集が何より大切です。以下のポイントを意識してみてください。
まず、サポート先がはっきりしている製品を選ぶこと。公式サイトがきちんと運営されているか、日本語のサポート窓口があるか、連絡先(電話番号や住所)が実在するかを確認しましょう。サポート先が不明な製品では、事故後に対応を受けられないリスクがあります。
次に、購入を検討している製品が過去にリコールや事故報告の対象になっていないかを調べましょう。消費者庁の事故情報データバンクシステムやNITE SAFE-Liteで型番やメーカー名を検索できます。同一メーカーの他製品で事故が起きていないかも併せてチェックするとより安心です。
バッテリーの種類も重要な判断材料です。一般にリン酸鉄リチウムイオン電池(LFP)搭載モデルは三元系よりも熱安定性が高いとされています。ただし、電池の種類だけで安全性が決まるわけではなく、BMS(バッテリーマネジメントシステム)の充実度や、メーカーの安全対策への取り組み姿勢も総合的に確認しましょう。
購入後の正しい使い方と保管方法



購入した後も、正しい使い方を心がけることで事故のリスクを大幅に下げることができます。
最も大切なのは、充電中は定期的に様子を確認することです。就寝中や外出中の長時間充電はできるだけ避け、充電は目の届く場所で行いましょう。糸島市の火災のように、24時間常時充電の状態で放置するような使い方は特に危険です。異常な発熱、変な音、焦げたような匂いを感じたら、すぐに充電を中止してください。
高温環境での使用・保管も厳禁です。真夏の車内、直射日光が当たる窓際、暖房器具のそばなどは避けましょう。また、布団やクッション、衣類の上での充電も熱がこもりやすく危険です。風通しの良い平らな場所で充電するのが基本です。
強い衝撃を与えないことも重要です。落下や強い振動によって内部のバッテリーが損傷し、内部短絡を起こす可能性があります。持ち運びの際は丁寧に扱い、車載時もしっかり固定しておきましょう。
長期間使用しない場合は、バッテリー残量を50〜60%程度に保った状態で保管することが推奨されています。残量が0%のまま長期間放置すると過放電による劣化が進み、逆に100%のまま放置しても電池にストレスがかかります。3〜6ヶ月に一度は通電して状態を確認しましょう。
もし発火してしまったら



万が一、ポータブル電源から煙や炎が出た場合は、まず無理に近づかず、周囲に知らせて119番通報と避難を優先してください。
初期段階で安全に対応できる場合に限り、大量の水で冷却・消火します。NITEも「万が一発火した場合は大量の水で消火し、可能な限り水没させた状態で119番通報する」ことを案内しています。
煙や炎が噴き出している場合は製品を動かそうとせず、消防の到着を待つことが最優先です(出典:NITE「ポータブル電源 リコール製品に注意」)。
ポータブル電源には可燃性の電解液を含むリチウムイオン電池が複数搭載されており、一度発火すると次々に延焼する危険があります。消火できない場合は無理をせず、速やかに避難してください。安全が最優先です。
信頼できるメーカーと安全性への取り組み


主要メーカーの安全対策



ポータブル電源市場では、安全性を差別化ポイントとして強化するメーカーが増えてきています。ここでは、代表的なメーカーの取り組みを紹介します。
Jackery(ジャクリ)は、2022年以降の新モデルでデュアルバッテリーチップBMSを採用し、片方のチップに障害が発生してもバックアップが機能する二重安全設計を導入しています。新しいPlusシリーズではリン酸鉄リチウムイオン電池に移行し、ユーザー登録による最長5年間の保証や無償回収サービスも提供されています。
EcoFlow(エコフロー)は、RIVER 2シリーズ以降でリン酸鉄リチウムイオン電池を採用しています。EFDELTA・RIVER Pro・ML720i(OEM)と複数のリコール対応が続いていますが、いずれのケースでもファームウェアアップデートや製品交換による対応が実施されました。EcoFlow製品をお持ちの方は、メーカーの公式サポートページを定期的に確認することをおすすめします。
Anker(アンカー)は、EVクラスのリン酸鉄リチウムイオン電池を採用したSolixシリーズを展開しています。2024年〜2025年にかけてモバイルバッテリー等のリコール対応が続きましたが、これらはポータブル電源本体とは別カテゴリの製品です。
BLUETTI(ブルーティ)は、早くからリン酸鉄リチウムイオン電池を採用してきたメーカーのひとつで、幅広いラインナップを展開しています。
安全認証の確認ポイント
ポータブル電源を選ぶ際に確認したい安全認証をまとめておきましょう。
PSEマーク:ポータブル電源本体は対象外ですが、付属のACアダプターにはPSEマークが必要です。これが付いていない場合は要注意です。
Sマーク:2024年6月に制定されたポータブル電源向けの第三者安全認証です。法的義務ではありませんが、Sマーク取得製品は経済産業省の安全性要求事項をクリアしているため、安心材料のひとつになります。
UL認証・UL規格適合:米国系の安全規格・認証です。どのUL規格に適合しているか、また本体・ACアダプター・バッテリーセルのどこが対象なのかは製品ごとに異なります。単に「UL」と書かれているだけでなく、対象範囲まで確認できるとより安心です。
防災推奨品マーク:一般社団法人防災安全協会が認定する、防災用品の目安として設けられたものです。防災用途としての適性を審査した認定であり、発火リスクを直接保証する電気安全認証とは異なりますので、あくまで参考のひとつとして捉えてください。
まとめ:正しく知って、正しく選ぶ
事故を「怖がる」のではなく「備える」
ここまで、過去10年間のポータブル電源にまつわる事故・発火・リコール事例を見てきました。増加傾向にある事故件数や、建物全焼・人的被害といった深刻な事例に触れると、「やっぱりポータブル電源は危ないのでは」と思われるかもしれません。
しかし、冷静に見れば、事故の多くには明確な原因や背景があるようです。品質管理が不十分な製品を選んでしまったケース、リコール情報を知らずに使い続けていたケース、高温環境で充電していたケース。逆に言えば、正しい製品選びと正しい使い方を心がければ、リスクは大幅に低減できると考えられます。



ポータブル電源は、災害大国である日本において、家庭の防災力を高める頼もしい存在です。キャンプや車中泊の楽しみを広げてくれるパートナーでもあります。その恩恵を安心して受けるために、ぜひこの記事の内容を参考にしていただければ嬉しく思います。
最後にもう一度。お手持ちのポータブル電源がリコール対象になっていないか、今すぐ確認してみてください。消費者庁リコール情報サイト(https://www.recall.caa.go.jp/)と、NITE SAFE-Lite(https://safe-lite.nite.go.jp/)で簡単に調べることができます。
その小さな確認が、大きな安心につながります。
参考情報・出典リンク集
公的機関・政府系情報
- NITE(製品評価技術基盤機構)「リチウムイオン電池搭載製品」の火災事故を防ぐ3つのポイント
- NITE プレスリリース資料「夏バテ(夏のバッテリー)にご用心」(PDF)
- NITE 注意喚起「ポータブル電源 リコール製品に注意」
- NITE SAFE-Lite(製品事故情報検索システム)
- 経済産業省「ポータブル電源の安全性要求事項(中間とりまとめ)について」
- 経済産業省「モバイルバッテリーに関するFAQ」
- 経済産業省「リチウム電池使用製品リコール情報」
- 経済産業省「製品別リコール情報 EcoFlow RIVER Pro」(2026年2月5日)
- 経済産業省「製品別リコール情報 ポータブル電源 ML720i」(2026年4月1日)
- 消費者庁 リコール情報サイト
- 消費者庁 重大製品事故公表(2024年4月16日)
- 消費者庁 重大製品事故公表(2024年7月5日)
- 消費者庁 重大製品事故公表(2024年9月3日)
- 消費者庁 重大製品事故公表(2026年6月5日)
- 消費者庁 重大製品事故公表(2026年6月26日)
- 消費者庁 事故情報データバンクシステム
安全認証・業界団体
- JQA(日本品質保証機構)Sマーク認証「ポータブル電源に係るSマーク追加基準」制定のお知らせ
- 一般社団法人 日本ポータブル電源協会(JPPSA)公式サイト
- Impress Watch「ポータブル電源にJIS規格、安全対応強化へ」(2025年10月)






























価格は参考値です。最新の価格は各サイトでご確認ください。
ポータブル電源
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