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環境省「クマ類の出没対応マニュアル」|国の熊対応の方針

このページでは、環境省公表の「クマ類の出没対応マニュアル」をベースに、自治体・地域団体・現場実務者が運用に落とし込みやすい形で整理しています。2025年9月施行の改正鳥獣保護管理法(緊急銃猟制度)や2026年4月改定の保護・管理ガイドラインなど最新の制度変更も盛り込みました。地域の事情や各都道府県の最新通達によって運用が異なる場合がありますので、最終判断は各都道府県の計画・通知でご確認ください。

※最終更新:2026年6月29日|統計値は環境省公表の速報値をもとにしています。今後修正される可能性があります。

近年、クマによる被害が深刻さを増しています。令和7年度(2025年度)のクマ類の出没情報は、環境省が公表している都府県分で50,801件(速報値)と過去最多を記録し、人身被害も238人(うち死亡13人)と、いずれも過去最悪の数字となりました(いずれも速報値)。なお、北海道の出没情報は非公表です。

この記事でわかること:

  • クマ出没時に自治体・地域が取るべき初動対応
  • 住民がクマに遭遇したときの安全行動
  • 2025年施行の緊急銃猟制度と2026年最新制度改正の概要
  • 令和7年度のクマ被害・出没の最新状況
  • 掲示・回覧に使える住民向けテンプレ
熊撃退スプレーの使用テストの管理人Masaki T
所有する熊撃退スプレー フロンテァーズマンとUDAP

名前:Masaki T [ profile ]
経歴:北海道出身、登山歴15年以上。関東の大型の登山用品店で約4年間の勤務を経験。熊撃退スプレーを家族分の2本所有(フロンテァーズマン,UDAP)し、出没リスクの高い地域では携行。自分自身も勉強しつつ適正な情報発信を心がけています

日本の熊研究機関日本クマネットワーク(JBN)/日本熊森協会/知床財団/信州ツキノワグマ研究会

熊の出没状況(2026/06/24)
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直近1ヶ月は、東北〜甲信越でクマの出没警戒が高い状況です。青森県は県内全域にツキノワグマ出没警報を発表し、秋田県も7月31日まで出没警報を延長。長野県では松本・北アルプス地域などで注意報・警報が出ています。

今後は夏の登山・キャンプシーズンに加え、秋の採食期に人里や登山道周辺へ出没する可能性があります。

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目次

目次

1. マニュアルの目的と基本的な考え方

1. マニュアルの目的と基本的な考え方

このマニュアルの目的は、人への被害や農林業被害を防ぎながら、クマの保全も両立させることです。そのための基本的な考え方がゾーニング(すみ分け)です。「人の生活圏ではクマの出没を抑制する」「クマの生息域では保全を尊重する」という2つの方針を軸に、状況に応じて誘引物の除去や追い払いといった非致死的対応から、必要に応じた捕獲まで段階的に使い分けます。 <出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(全文PDF)

なお、2026年4月に改定された「特定鳥獣保護・管理計画作成のためのガイドライン(クマ編)令和8年度版」では、従来の「維持・増加」を基本とした管理方針から「維持・減少」を含む管理への転換が明確に示されました。ゾーニング区分も見直され、市街地・農地等を統合した「排除エリア」を設定し、出没クマは原則捕殺とすること、その周辺に「管理強化エリア」を新設することが整理されています。 <出典: 環境省|特定鳥獣保護・管理計画ガイドライン(クマ編)令和8年度版改定について(2026年4月)

2. いまクマ被害はどうなっているの?最新の状況

令和7年度(2025年度)の状況は、過去に例を見ないほど深刻なものでした。主なポイントをまとめます(いずれも環境省速報値)。

  • 出没件数が過去最多:令和7年度のクマ類の出没情報は、環境省が公表している都府県分で50,801件(速報値)。前年度の約2.5倍に急増し、記録が残る2009年度以降で最多となりました。なお、北海道の出没情報は非公表、九州・沖縄はクマ非生息地域です。
  • 人身被害も過去最悪:被害は216件、被害者数は238人(速報値)、うち死亡者は13人。これまで最多だった2023年度(219人、死亡6人)をいずれも大きく上回りました。
  • 被害の多い地域:秋田県が67人で最多、次いで岩手県40人、福島県24人。東北6県で全体の6割以上を占めました。
  • 捕獲数も最多:令和7年度の許可捕獲数は14,742頭(うち捕殺14,619頭、非捕殺123頭)で過去最多。内訳はツキノワグマ12,603頭、ヒグマ2,139頭です。
  • 2026年度も継続中:2026年度に入っても出没・人身被害は続いており、環境省資料では令和8年6月10日時点で岩手県・山形県・秋田県で計5件の死亡事例が確認されています。

出没が増える背景には、クマの個体数・生息域の拡大のほか、中山間地域の過疎化・高齢化による人間活動の低下、耕作放棄地の拡大、放任果樹や生ごみなどの誘引物、人の生活圏に慣れた個体の増加など、複数の要因があると考えられています。 <出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(インデックス)環境省|堅果類の結実情報(PDF)

3. 平時の備え(8つのポイント)

3. 平時の備え(8つのポイント)

3-1. ゾーニング(すみ分けエリア)の設定

地域をゾーンに分けて、それぞれのエリアでの対応方針をあらかじめ決めておくことが基本です。2026年4月改定のガイドライン(令和8年度版)では、従来の4区分(コア生息地・緩衝地帯・防除地域・排除地域)が見直され、人の生活圏側には「排除エリア」(市街地・農地等)と、その周辺に「管理強化エリア」が新設されました。エリアごとの判断基準を明文化しておくと、出没時にスムーズに動けます。 <出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(全文PDF)環境省|ガイドライン(クマ編)令和8年度版改定(2026年4月)

3-2. 連絡体制の整備

警察・消防・学校・自治会・猟友会・関係課を含む連絡網を事前に整えておきましょう。夜間・休日の連絡先まで確認しておくことが大切です。連絡体制図や対応フロー図も備えておくと現場で役立ちます。 <出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(インデックス)

3-3. 対応方針表の作成

「どのエリアで・どんな状況なら・どう対応する」をあらかじめ表にまとめておくと、現場での判断がぶれにくくなります。ゾーン×問題度×緊急性の組み合わせで、追い払い・非致死的対応・捕獲(放獣判断含む)の目安を整理します。実際の判断は、地域個体群の個体数水準・被害の発生状況・個体の問題度・緊急性を総合して行います。 <出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(概要版PDF)

スクロールできます
ゾーン基本対応問題度が高い個体人身事故・高リスク個体
コア生息地原則非致死(捕獲は例外)捕獲検討捕獲
緩衝地帯追い払い中心捕獲検討捕獲
防除地域(個体数低〜中)追い払い中心場合により捕獲捕獲
防除地域(個体数高)捕獲を積極検討捕獲捕獲
排除地域捕獲捕獲捕獲

※上の表は旧マニュアル(2021年改定版)に基づく対応方針の例です(詳細は 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(全文PDF)参照)。2026年4月改定のガイドラインでは、人の生活圏側の区分として「排除エリア」「管理強化エリア」が新設されています。実務では各都道府県の最新計画に従ってください。

3-4. 研修と人員配置

机上訓練と現地訓練を組み合わせ、「通報→封鎖→判断→対応→収束」までの流れを繰り返し確認しておきましょう。外部専門家の活用も含め、必要な装備と役割分担を平時から整理しておくことが重要です。 <出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(インデックス)

3-5. 生活圏でのクマ対策(誘引物の管理)

  • 誘引物を取り除く:生ごみ・放任果樹・作物残渣・ペットのエサ・堆肥・飼料をきちんと管理しましょう。落下した果実の放置もNGです。ゴミは収集日当日に出し、屋内で保管することを基本にします。
  • 物理的に侵入を防ぐ:電気柵の設置、倉庫の施錠、囲い・柵の定期補修が有効です。緩衝帯の草刈りや見通しの確保も、クマが隠れにくい環境づくりにつながります。

<出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(全文PDF)

3-6. 生息域での安全対策

林業・登山・山菜採りなどで山に入る方には、こんな対策が有効です。見通しの良い場所を選ぶ、クマ鈴を携帯する、熊撃退スプレーを持参するなどを事前に周知しましょう。山小屋やキャンプ場の管理者は、食べ物や生ごみの管理を徹底してクマを餌付かせないことが重要です。 <出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(概要版PDF)

3-7. 堅果類(ドングリなど)の豊凶調査

ドングリなどの実が不作の年は、クマが食べ物を求めて人里に下りてくるリスクが高まります。秋季の結実状況を調査・共有し、出没の多い年を事前に予測して備えることが大切です。 <出典: 環境省|堅果類の結実情報(PDF)

3-8. 住民への周知・学習会

クマとの距離の取り方、誘引物の片付け方、通学路での注意点などを、日頃から地域住民に伝えておきましょう。「知っている」と「知らない」では、遭遇時の対応が大きく変わります。 <出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(インデックス)

4. 出没時の現場対応フロー

4. 出没時の現場対応フロー

4-1. 初動対応

  1. まず安全確保:現場を封鎖して、住民への広報と交通整理を速やかに実施します。
  2. 状況を把握する:目撃場所・個体数・行動・時間帯・周辺の人通りのほか、親子かどうか・誘引物の有無も確認します。
  3. 関係者で対応を決定:所管部署と警察を含む関係者が連携し、追い払い・囲い込み・捕獲・放獣のどれで対応するかを判断します。

<出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(全文PDF)

4-2. 市街地での銃器使用(緊急銃猟制度)

2025年9月施行の改正鳥獣保護管理法により、市町村長の判断のもと、市町村が委託等した捕獲者が市街地等でも緊急銃猟を実施できる制度が創設されました。一般住民が独自に銃器で対応できる制度ではありません。実施には次の条件が必要です。

  • クマが人の日常生活圏に侵入している(またはそのおそれがある)
  • 人の生命・身体への危害を緊急に防止する必要がある
  • 銃猟以外の方法では迅速な捕獲が困難
  • 住民の避難・通行制限など、安全確保措置が講じられている

環境省は2025年7月に「緊急銃猟ガイドライン」を公表し、2026年4月には実施事例などを追加した改訂版を公表しました。なお、環境省資料では令和7年度中に発砲まで至った緊急銃猟の事例は60件、令和8年度も6月29日時点で18件が確認されています。 <出典: 環境省|緊急銃猟ガイドラインの改訂について(2026年4月)環境省|令和8年度の緊急銃猟実施状況(PDF)

4-3. 人身被害が発生したときの3本柱

  • 救助を最優先:消防・医療搬送を速やかに手配します。
  • 二次被害を防ぐ:住民の避難・周知・封じ込め・通行規制を行います。
  • 現場を検証する:原因分析と再発防止のために記録を残します。

<出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(全文PDF)

4-4. 捕獲・放獣作業の注意点

安全第一で作業動線を確保し、周辺の観衆が近づかないよう管理します。捕獲した個体には耳標・マイクロチップ等で個体識別を行い、記録を残すことが重要です。 <出典: 環境省|特定鳥獣保護・管理計画ガイドライン(クマ編)令和8年度版

4-5. 放獣するかどうかの判断

放獣(山に戻すかどうか)は、個体の年齢・傷病の状態、地域の個体数、過去の加害行動の有無などを総合的に考慮して判断します。学習放獣(忌避条件付け)は一定の効果がありますが万能ではなく、手法・場所・個体によって効果に差があります。 <出典: 環境省|特定鳥獣保護・管理計画ガイドライン(クマ編)令和8年度版環境省|クマ類の出没対応マニュアル(全文PDF)

5. クマに遭ったらどうする?距離別の行動ガイド

  • 遠くに見えた場合:静かにその場を離れましょう。クマがこちらに気づいていなければ、音を出して存在を知らせるのも一つの方法です。急な動き・走ることは避けてください。
  • 近くで気づいた場合:落ち着いて、視線をやや外しながらゆっくり後退します。絶対に背を向けて走らないことが大切です。
  • 至近距離で突然出会った場合:環境省マニュアルでは、顔面・頭部への攻撃が多いことから、両腕で顔面・頭部を覆い、直ちにうつ伏せになることが推奨されています。熊撃退スプレーを持っている場合は、クマの顔(目・鼻・口周辺)に届く距離で噴射して離脱します。スプレーは射程が限られ(多くは5m程度)風向きの影響も受けるため、携帯時はすぐ取り出せる位置に固定し、購入後に使用方法を必ず確認しておきましょう。

<出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(概要版PDF)

6. 錯誤捕獲(意図しないクマの捕獲)への対策

6. 錯誤捕獲(意図しないクマの捕獲)への対策

シカやイノシシ用のわなにクマが誤って入ってしまう「錯誤捕獲」を防ぐため、わなの構造点検・止め金具の適正化・脱出口付き檻の採用・設置場所の見直しなどを定期的に行いましょう。錯誤捕獲の発生状況の把握も、計画的な管理のために重要とされています。 <出典: 環境省|特定鳥獣保護・管理計画ガイドライン(クマ編)令和8年度版環境省|クマ類の出没対応マニュアル(全文PDF)

7. 2025〜2026年の制度改正と最新動向

8. 現場で使える簡易対応フロー(テンプレ)

8. 現場で使える簡易対応フロー(テンプレ)
  1. 通報受理・初動:地点・個体数・行動・時間帯・周辺の人通り・親子かどうか・誘引物の有無を確認 → 危険エリアを封鎖して広報
  2. 関係機関への一斉連絡:警察・消防・学校・猟友会・所管課に同時連絡
  3. 対応の判断:ゾーン・問題度・緊急性に基づいて、非致死的対応/捕獲/放獣を決定
  4. 対応を実施:追い払い(音響・発炎筒等)/囲い込み/檻・くくり罠/麻酔銃、または緊急銃猟制度を活用した銃猟(市町村長の判断・委託捕獲者による実施)
  5. 収束・記録:人身・二次被害の有無を確認し、記録・痕跡採取を行い、住民に再発防止の周知を実施

<出典: 環境省|クマ類出没対応構築事業 成果報告集(PDF)環境省|クマ類の出没対応マニュアル(全文PDF)

9. 役割分担チェックリスト(例)

9. 役割分担チェックリスト(例)
  • 自治体:連絡網の運用/現地指揮・広報/許可手続き/被害記録・検証/放獣体制の整備/緊急銃猟制度の事前準備(ガイドライン整備・訓練・保険加入など)
  • 警察:住民の退避・交通規制/銃器使用の調整・現場安全確保
  • 消防・救急:救助・搬送・現場安全の補助
  • 猟友会・専門職:追い払い・罠・麻酔・捕獲の実施/個体識別・記録/錯誤捕獲対策
  • 学校・教育委員会:登下校ルートの一時変更・教職員の帯同、保護者への連絡

<出典: 環境省|特定鳥獣保護・管理計画ガイドライン(クマ編)令和8年度版環境省|クマ類の出没対応マニュアル(概要版PDF)

10. 住民向け周知テンプレ(掲示・回覧用)

  • 最近の出没情報:〇月〇日〇時ごろ、〇〇で目撃されました。
  • お願いしたいこと:生ごみ・果樹・ペットのエサを放置しないでください/納屋・鶏舎の戸締りを忘れずに/山に入るときはクマ鈴・熊撃退スプレーを携帯してください。
  • 万が一クマに遭遇したら:走らず、ゆっくり後退してください。至近距離での突然の遭遇では、両腕で顔面・頭部を覆いうつ伏せになることが推奨されています。スプレーを持っている場合はクマの顔に向けて噴射します。

<出典: 環境省|クマの出没情報(速報値・PDF)環境省|クマ類の出没対応マニュアル(概要版PDF)

11. よくある誤解と正しい理解

  • 「生息域のクマは常に捕獲すべき」→誤りです。コア生息地・緩衝地帯では非致死的対応が基本です。問題個体や緊急時に限って捕獲を検討します(2026年4月改定ガイドラインでも個体群の存続を前提とした管理が基本です)。
  • 「学習放獣すれば大丈夫」→必ずしもそうではありません。手法・場所・個体によって効果に差があり、放獣の可否判断そのものが重要です。
  • 「市街地での緊急銃猟は誰でもできる」→誤りです。2025年9月施行の緊急銃猟制度は、市町村長が委託した捕獲者が実施するものです。住民の安全確保措置や一定の条件を満たすことが必要で、無許可での対応は法律違反になります。
  • 「クマを見かけたらすぐ大声で追い払えばいい」→状況によっては逆効果になることがあります。まず自治体や警察に通報・相談し、専門家の判断を仰ぐことが先決です。
  • 「熊撃退スプレーはとにかく噴射すれば効く」→スプレーには射程(多くは5m程度)があり、風向きの影響も受けます。クマの顔(目・鼻・口周辺)に届く距離での噴射が基本で、購入後は使用方法を必ず確認しておきましょう。

<出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(全文PDF)環境省|特定鳥獣保護・管理計画ガイドライン(クマ編)令和8年度版

12. 統計・モニタリング(運用の指標)

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