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環境省「クマ類の出没対応マニュアル」|国の熊対応の方針

昨今、残念ながら熊被害が続いておりますが、熊被害を調査する中で「環境省のクマ類の出没対応マニュアル」という資料が存在することを知りました。

このページでは、環境省公表の資料を基に、自治体・地域団体・現場実務者が運用に落とし込みやすい形で再構成してみました。 地域の事情や最新の通達により運用が異なる場合がありますので、最終判断は各都道府県の計画・通知をご確認ください。

目次

目次

1. マニュアルの目的と基本思想

目的は、人身・農林被害を抑えつつクマの保全も両立するために、平時の備えと出没時の対応を体系化することです。 基本思想はゾーニング(すみ分け)を軸に、「人の生活圏では出没抑制」「生息域では保全を尊重」し、 状況に応じて非致死的対応から捕獲までを段階的に使い分けます。 <出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(全文PDF)

2. 平時の備え(8本柱)

2-1. ゾーニングの設定

代表的な区分は、生息域のコア生息地/緩衝地帯、生活圏側の防除地域/排除地域です。 地区ごとの方針を明文化し、出没時の判断基準につなげます。 <出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(全文PDF)

2-2. 連絡体制の構築

警察・消防・学校・自治会・猟友会・関係課を含む連絡網を整備し、夜間・休日連絡先まで明記します。 連絡体制図・対応フロー図の整備を推奨します。 <出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(インデックス)

2-3. 対応方針表(基準表)の作成

ゾーン×問題度×緊急性で、追い払い/非致死的対応/捕獲(放獣判断含む)の基準を表形式で整えます。 <出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(概要版PDF)

ゾーン基本対応問題度が高い個体人身事故・高リスク個体
コア生息地原則非致死(捕獲は例外)捕獲検討捕獲
緩衝地帯追い払い中心捕獲検討捕獲
防除地域(個体数低〜中)追い払い中心場合により捕獲捕獲
防除地域(個体数高)捕獲を積極検討捕獲捕獲
排除地域捕獲捕獲捕獲

※要約(詳細は 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(全文PDF)参照)

2-4. 研修と人員配置

机上訓練と現地訓練を組み合わせ、通報〜封鎖〜判断〜対応〜収束までの動線を反復します。 外部専門人材の活用を含め、必要装備・役割を平時から整理します。 <出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(インデックス)

2-5. 生活圏での出没抑止

  • 誘引物管理:生ごみ・放任果樹・作物残渣・ペット餌・堆肥・飼料の管理徹底
  • 物理的対策:電気柵、倉庫施錠、囲い・柵の補修

<出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(全文PDF)

2-6. 生息域での安全対策

林業・登山・山菜採り等の活動者に、見通し確保・クマ鈴・熊撃退スプレー携行などの行動指針を共有します。 <出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(概要版PDF)

2-7. 堅果類の豊凶調査

不作年は人里出没が増えやすいため、秋季の結実状況を調査・共有します。 <出典: 環境省|堅果類の結実情報(PDF)

2-8. 住民学習会・リスクコミュニケーション

距離の取り方、誘引物の片付け、通学路の留意点などを平時から周知します。 <出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(インデックス)

3. 出没時の現場対応フロー

3-1. 初動

  1. 安全最優先:現場封鎖・広報・交通整理を即時実施
  2. 状況把握:目撃場所・個体数・行動・時間帯・人通りを確認
  3. 判断体制:所管と警察を含む関係者で対応手段(追い払い/囲い込み/捕獲・放獣)を決定

<出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(全文PDF)

3-2. 市街地等での銃器・麻酔の使用

住居密集地での銃器使用は極めて慎重に運用し、警察と緊密に調整します。射線・背後リスク・住民退避など安全要件を厳格に確保します。 <出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(概要版PDF)

3-3. 人身被害発生時(3本柱)

  • 救助:消防・医療搬送を最優先
  • 二次被害防止:避難・周知・封じ込め・通行規制
  • 現場検証:原因分析と再発防止(記録様式の整備)

<出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(全文PDF)

3-4. 捕獲・放獣作業の注意

安全第一で作業動線と観衆管理を行い、耳標・マイクロチップ等で個体識別し記録を残します。 <出典: 環境省|特定鳥獣保護・管理計画ガイドライン(クマ類編・R4改定)

3-5. 放獣の可否判断と学習放獣

個体属性(年齢・傷病)や地域の個体数水準、加害の有無等を踏まえて放獣可否を決めます。学習放獣(忌避条件付け)は一定の効果がある一方で万能ではありません。 <出典: 環境省|特定鳥獣保護・管理計画ガイドライン(クマ類編・R4改定)環境省|クマ類の出没対応マニュアル(全文PDF)

4. 住民・来訪者向けの行動指針(距離別)

  • 遠距離で視認:静かに退避。気づかれていない場合は存在を知らせる音も一法。急な動き・走る行為は避ける。
  • 近距離で気づいた:落ち着いて、視線を外し気味にゆっくり後退。背を向けて走らない。
  • 至近距離:頭部・顔面の防護を意識。熊撃退スプレー携行時はクマに向けて噴射し離脱。

<出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(概要版PDF)

5. 出没の背景と近年の傾向

生息域の広がりや地域個体群の増加により、人の生活圏への接近が進行。大量出没年は被害増加と相関し、堅果類の不作等が関係します。 <出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(インデックス)環境省|堅果類の結実情報(PDF)

6. 錯誤捕獲への対策

シカ・イノシシ用わなへの誤入を防ぐため、構造点検・止め金具の適正化・脱出口付き檻の採用・設置場所の見直し等を講じます。 <出典: 環境省|特定鳥獣保護・管理計画ガイドライン(クマ類編・R4改定)環境省|クマ類の出没対応マニュアル(全文PDF)

7. 2024–2025年の追加方針・最新動向

8. 現場で使える簡易対応フロー(テンプレ)

  1. 通報受理・初動:地点・個体数・行動・時間帯・人通りを確認 → 危険エリア封鎖と広報
  2. 関係機関連絡:警察・消防・学校・猟友会・所管課へ一斉連絡
  3. 判断会合:ゾーン・問題度・緊急性に基づき、非致死的対応/捕獲/放獣を決定
  4. 対応実施:追い払い(音響・発炎等)/囲い込み/檻・くくり罠/麻酔銃/(市街地は警察調整の上で)猟銃
  5. 収束・記録:人身・二次被害の有無確認、記録・痕跡採取、住民への再発防止周知

<出典: 環境省|クマ類出没対応構築事業 成果報告集(PDF)環境省|クマ類の出没対応マニュアル(全文PDF)

9. 役割分担チェックリスト(例)

  • 自治体:連絡網運用/現地指揮・広報/許可手続/被害記録・検証/放獣体制整備
  • 警察:住民退避・交通規制/銃器使用の調整/現場安全確保
  • 消防・救急:救助・搬送・現場安全補助
  • 猟友会・専門職:追い払い・罠・麻酔・捕獲/個体識別・記録/錯誤捕獲対策
  • 学校・教育委員会:登下校動線の一時変更・帯同、保護者連絡

<出典: 環境省|特定鳥獣保護・管理計画ガイドライン(クマ類編・R4改定)環境省|クマ類の出没対応マニュアル(概要版PDF)

10. 住民向け周知テンプレ(掲示・回覧用)

  • 最近の出没情報:〇月〇日〇時ごろ、〇〇で目撃。
  • お願い:生ごみ・果樹・ペット餌の出しっぱなし禁止/戸締り・納屋や鶏舎の施錠/クマ鈴・熊撃退スプレーの携行。
  • 遭遇時:走らず、ゆっくり後退。スプレーはクマに向けて噴射。

<出典: 環境省|クマの出没情報(速報値・PDF)環境省|クマ類の出没対応マニュアル(概要版PDF)

11. よくある誤解と正しい理解

  • 「生息域のクマは常に捕獲」→誤り。コア生息地・緩衝地帯では非致死的対応が基本で、問題個体・緊急時に捕獲を検討。
  • 「学習放獣は万能」→誤り。効果は手法・場所・個体属性で差があり、放獣の可否判断が重要。
  • 「市街地なら誰でも銃が撃てる」→誤り。警察との調整や安全要件が必要で、極めて慎重な運用。

<出典: 環境省|クマ類の出没対応マニュアル(全文PDF)環境省|特定鳥獣保護・管理計画ガイドライン(クマ類編・R4改定)

12. 統計・モニタリング(運用の指標)

参考リンク(公式)

関連リンク

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