山岳・登山・トレッキング向けの寝袋に求められる基本性能・特徴は、
- 軽量性
- コンパクト性
- 耐久性
- 快適性
になります。
軽量性
登山ではザック(リュック)に荷物(もちろん寝袋も)を入れて背負って登ります。荷物が軽ければ軽いほど、体への負担も減り、上り下りが続く山道の歩行も楽になります。(実は、寝袋は歩行中は全く使わない山道具です。キャンプ地・テント場に着いて、テントを設営してようやく出番が訪れます。)そのため、寝袋に限ったことではありませんが、軽量であることが登山での動きやすさに繋がります。
コンパクト性
荷物の大きさが小さければ小さいほどザックの容量(大きさ)も少なくて済み、結果的に軽量化に繋がります。それだけでなく、コンパクトであれば、荷物を背中に近づけることになり、歩行中にバランスを取りやすくふらつきを軽減します。
南八ヶ岳 赤岳-横岳-硫黄岳 縦走ルート
より難易度の高い段差の大きな岩場歩きや鎖場(滑落の危険性が高い場所に歩行を補助する目的で設置された金属の鎖・チェーン)の登山ルート、崖のような場所をカラビナとロープで確保しながら登っていくアルパインクライミングではコンパクト性の重要度が増します。
登山用の寝袋は、その保温力の割に非常にコンパクトに作られています。キャンプ用の寝袋に見慣れている方が登山用の寝袋を見ると「すごく小さい!」と驚かれることもしばしば。収納に関しては、最初から高い圧縮率で収納できるような収納袋のため、慣れない方は寝袋本体の収納に手間取ります。
耐久性
登山用の寝袋は、軽量性とコンパクト性に重きを置くため、耐久性に関しては必要十分な程度に留められています。もちろん、収納・睡眠・撤収に耐えうる耐久性は考慮されていますが、中綿を包む生地は中綿がうっすらと透けて見えるほどに薄く、かぎ裂きや強い摩擦には注意しなければいけません。
3つの異なるメーカーの寝袋の生地(表地)
特に注意しなければいけないのは火の粉やバーナー熱で、生地には極薄のナイロンやポリエステルが使用されていますがゆえに、すぐに穴が空いてしまいます。穴が空いた場合は中綿がダウンだと、穴からどんどんダウンが飛び出してくるため、テープのような物で取りあえず穴を塞ぎ、下山したらメーカーに問い合わせて修理を依頼しましょう。
快適性
寝袋に入ったときの快適性(寝心地・寝やすさ)も、高い保温力と軽量・コンパクト性に重きを置くため、必要最低限に留められています。登山用の寝袋は、マミー型とい言われるミイラのような人間の形状に沿ったような形をしています。マミー型は、効率的な保温ができ、無駄な重量が増えない構造ですが、下半身が細くなっていくため両足を広げた大の字で寝ることができず、慣れるまである程度窮屈に感じます。
また、スライダー(ジッパー)の長さは出入りと温度調節のしやすさに繋がり、頭と首周りの構造や寝袋の外気温が寝袋の保温力(リミット温度)に近づいてきた時にその重要性が増してきます。
まとめ
山岳・登山用の寝袋を一言でまとめると”軽量・コンパクト性を重視した寝袋”と表現できます。
価格は、快適性が重視され数千円で購入できる(ファミリー)キャンプ向けの寝袋と大きく異なり、登山用の寝袋は特定の保温力を実現するため、最先端の技術や素材を投入して、各社しのぎを削っているのが現状で、価格も1万円以上とキャンプ向けより高くなります。
各性能のバランスは、メーカーやモデルによって異なります。