寝袋の肩幅
寝袋のサイズ選び縦方向と共に重要なのが、横方向です。
寝袋で使われる横方向の長さは主に
- 「肩」部分の長さ
- 「お尻」部分の長さ
- 「足」部分の長さ
の3つあり、寝心地に大きく影響するのが、肩部分の長さです。メーカーによって肩幅・肩周囲・肩回りと表記が異なります。
肩幅は寝袋のファスナーを閉じた状態で無理なく引っ張ったときの横幅の最大長になり、
- 肩幅 × 2 ≒ 肩周囲
になります。肩幅が80cmであれば、肩周囲は160cmになります。この数値は、肩部分にどれだけの余裕があるかを確認できる数値になります。
縦方向のサイズに関しては、皆さん自分自身の身長を知っているため理解しやすいのですが、横方向に関してはおそらく知らない方がほとんどと思われます。そのため、例えば3シーズン用の寝袋で肩周囲150cmや肩幅80cm(≒肩周囲160cm)と記載があったりしますが、この数値を見ても全く使用感が想像できません。
特に横方向できついと感じやすいのは、男性で普段の服のサイズがLやXLの方です。それ以外の方は、大抵のメーカーの寝袋であれば適度なゆとりが感じられると思います。
そこで、横方向について私の主観を交えて解説したいと思います。
実際は肩周囲(肩幅)より狭くなる
寝袋の外周と内周
カタログに記載されている肩幅・肩周囲は、寝袋の外周になります。ところが実際には内側に中綿があるため、寝袋の内周は外周より小さな値になります。
この外周と内周の差は中綿の量と構造により異なり、雪山用は中綿が多くてファスナー内側に断熱チューブが入るため差が大きく(約5~15cm程度)、3シーズン用や夏用はそれほどありません(約1~5cm程度)。
また、同じ横幅でも、中綿がダウンか化繊かでも体感する広さが異なります。ダウンに比べ化繊の中綿は反発力が強く、寝袋内で動いた時により狭く感じやすいです。ダウンは押せば簡単に潰れるため、開放感があります。
自分の肩周囲を測定する
アンダーウェアを着用して肩周りを測定
服飾向けの軟らかいメジャーを使って、肩周りを測定します。上の写真を見ると、本来の肩周りの測定位置より少し下に下げています。理由は、一人だと本来の肩周りの測定が難しい(メジャーがずれるため)こと、また実際寝て僅かに脇が開いてリラックスした本来の肩周りより少し大きい数値を測定したいためです。一人で測定する場合は洗面台の鏡を利用して、胸側と背中側のメジャーが水平になっているか確認しましょう。また、服の上にメジャーが優しくのる程度の締め具合で大丈夫です。
アンダーウェアの肩周りの数値を測定して、まだ余裕があれば標高の高い山や紅葉時期の登山で就寝時に着用するフリースやインサレーションを着て測定して見ると良いかもしれません。
今回測定に使用したウェアは、3シーズンの登山を想定したもので、フリースは薄手のもの、インサレーション(防寒着)は3シーズン登山に一般的に使われる程度の厚みのもので、実際に私が登山で使用してきているウェアです。因みにダウンジャケットは、メジャーが容易に食い込んでしまうため、食い込ませず、ずり落ちない程度に測定するのが難しかったです。
3つの測定の結果、
- ベースレイヤー:118cm
- ベースレイヤー+フリース:118.5cm
- ベースレイヤー+フリース+ダウンジャケット:129cm(差11cm)
となりました。薄手のフリースでは測定誤差程度の差しかありませんでしたが、ダウンジャケットを着ると肩周りが+11cm増えました。(因みに私はどちらかと言うと胸板が厚く、肩もがっしりした骨格です。)
また、妻に協力してもらって、測定した結果、
- ベースレイヤー:95cm
- ベースレイヤー+フリース:98cm
- ベースレイヤー+フリース+ダウンジャケット:108cm(差8cm)
となりました。(フリースもダウンジャケットも私のより少し厚めです)
インサレーションの厚みにより肩周囲の増え幅は異なりますが、インサレーションを着用したときの肩周囲は薄着の肩周り+10cm程度を見ておけばよいかな、と思います。
肩周囲(肩幅)の異なる寝袋に入り比べる
手持ちの寝袋の肩周囲を事前に測定して、ベースレイヤーのみ着用した時、ダウンジャケットを着用した時で実際に入り比べてみました。
- 製品A:肩周囲152cm(肩幅76cm)
- 製品B:肩周囲165cm(肩幅82.5cm)
製品Aの場合、ベースレイヤーのみ着用して寝ると「まあこんなものかな」という適度なゆとりが感じられる寝心地ですが、フリースとダウンジャケットを着て寝ると、ダウンジャケットの膨らみを圧迫しない程度のぴったりした感じになりました。腕を動かそうとすると寝袋の内側の生地が突っ張ります。肩周りに無駄な空間がほとんど無く、保温としては理想的かもしれませんが、身動きしにくいので、この状態で何時間も寝るのは避けたい、そんな感じです。(実際この寝袋は登山で私はあまり使わず、妻への貸出用となっている)
次に製品Bです。これは厳冬期雪山用の寝袋です。アンダーのみではかなり余裕あり、ほとんど圧迫感がありません。フリースとダウンジャケットを着ても、ある程度腕を動かせるゆとりが感じられます。もう少し狭くても良いかな、そんな感じがします。
製品AとBで肩周囲の差が13cmですが、寝心地が大きく異なりました。実際に山へ行くと、寝袋の中でスマホで翌日の天気予報や行程を確認したりすることが多く、片腕を折り曲げれる程度のゆとりが欲しいところです。
以上、簡単にまとめると
- 寝袋の肩周囲152cm(肩幅76cm) - 肩周囲118cm(アンダーのみ) = 差34cm(ある程度の余裕あり)
- 寝袋の肩周囲152cm(肩幅76cm) - 肩周囲129cm(アンダー+フリース+ダウン) = 差23cm(狭い、長時間はしんどい)
- 寝袋の肩周囲165cm(肩幅82.5cm) - 肩周囲118cm(アンダーのみ) = 差47cm(かなり余裕あり)
- 寝袋の肩周囲165cm(肩幅82.5cm) - 肩周囲129cm(アンダー+フリース+ダウン) = 差36cm(ある程度の余裕あり)
となりました。
その後、寝袋の内側をテープを貼って内側の肩周囲を約156cmまで下げてダウンジャケット着て試しましたが、差が20cm後半だと、多少動きにくくを感じます。あくまで私の個人的な感覚ですが、肩周囲の差がおおよそ30cm程度は欲しいな、と思いました。
この数値から逆算すると、購入を検討している寝袋の肩幅が80cmと書かれていて、3シーズン用として使う場合、
- [肩周囲](80cm × 2) - [ゆとり数値]30cm - [インサレーション増加分]10cm ≧ 自分の肩周囲
であれば、ある程度余裕がありそうだ、と想像できます。
横方向まとめ
横方向(肩周囲、肩幅)のサイズは、登山者の平均的な体型を参考に決められていると思いますが、適応身長の上限値に近い身長の方は肩幅も大きく、体型によっては「これはきつい身動きができない・・・」となる可能性があります。男性で普段の服のサイズがLやXLの方は自分自信の肩周りを測定してみることをおすすめします。
女性は男性よりも遥かに肩周囲が小さい方が多く、女性向けのショートサイズも肩周囲がレギュラーと同じサイズが多いため、よほどふっくらした体型でないかぎり十分な程度余裕が感じられるのではないか、と思います。(服のサイズも男性と女性で2サイズほど差がある、おおよそ男性のSサイズが女性のLサイズに相当する)
また、軽量化に特化した製品は、カタログの数値よく見ると肩周囲が細くなっているものがあります。細いぶんだけ保温力を維持しながら生地と中綿の量が少なくできて軽量化に繋がるのですが、その分利用者の体型が限定される製品になりますので、大柄な男性は体格と相談して選ばれることをおすすめします。
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著者PROFILE
2009年末から寝袋と関連装備に特化したこのサイトを開設。いつの間にか運営10年を超える老舗サイトに。ファミリーキャンプから無積雪期登山、厳冬期登山、バイクのキャンプツーリングに自転車旅行、車中泊など、アウトドアを幅広く経験。寝袋の宿泊数は100泊以上~500泊未満。狭い業界ですが、まだまだ知らないこと沢山あり、日々勉強中です☆
谷川岳の雪洞で宿泊
今まで様々な状況下で寝てきましたが、100泊以上経験してわかったのが、『保温力に余裕のある寝袋を用意すること』です。
雪山テントは換気にも注意(テントが埋まると酸欠に)
雨風や断熱材で守られた家と違い、アウトドアフィールドでの宿泊は天候や外気温の変化を大きく受けます。事前の天気予報より、当日の気温が-5℃程度低かった、などは日常茶飯事です。また、多くのキャンプ場は、最寄りの市街地よりも標高が高い事が多く、天気予報で知ることのできる最寄りの市街地の最低気温よりも気温が低いことが多いです。
自然の中で睡眠をとる体験は素晴らしいですが、寝袋の保温力が足りないと真夜中に早朝に目が冷めます。これは外気温は日の出前の早朝4~5時あたりが最も気温が下がり、また体温も下がっているためです。一度このタイミングで目が冷めてしまうと、身体が芯から冷え切っているため、ここからなかなか眠ることができません。そして、寝不足の状態になります。
楽しいアウトドア体験するはずだったのが、思わぬ寝不足でボーーっとしてしまうのは、もったいないです(しかも連泊でこれが続くとかなりキツイです)。少し汗ばむくらいの保温力の寝袋を選んで、ぜひ素敵なアウトドア体験を満喫してください☆
寝袋と(キャンプ用の)マットは2つで1つです。
キャンプ用のマットの役割は主に『断熱』と『寝心地を快適にする』の2つです。
『断熱』について・・・アウトドア用の寝袋の中綿として、化繊やダウンが使われていますため、小さく圧縮して収納し持ち運ぶ事ができます。寝袋を収納袋から出して広げると、徐々に中綿が膨らみますが、人間が寝袋に入ったときに身体と地面に挟まれた中綿はぺちゃんこに潰れるため、断熱力がほとんどなくなります。大概の地面は冷たく、身体の重みで密着した部分から体温が逃げ(ヒートロス、熱損失)て、底冷えします。この現象は、体温と地熱の温度差が大きい春・秋・冬ほど熱損失量も増えます。
これを防ぐため、キャンプ用のマットを使います。キャンプ用のマット体重がかかっても断熱効果が得られるよう設計されています。
『寝心地を快適にする』について・・・最近、畳の上で寝たことはありますか?痛くて寝れなかったという方もいるのではないでしょうか。昨今の快適用品の普及により、強い刺激に敏感になっています。よほどふかふかの芝生以外、寝袋のみで寝ると地面の凸凹や石があたって痛くてまともに寝れません。その衝撃を吸収する役割としてキャンプ用マットが使われます。キャンプ用マットは大きくクローズドセルマット(銀マットなど)とエア注入式の2種類あり、寝心地はエア注入式の方が良いです。
テントの中で寝袋の下に敷くマットは、様々な用途に合わせて、多数の商品があります。皆さんの用途にあった、快適に寝れるマットが見つかりますように☆