ファスナー(アメリカではジッパー、日本では昔はチャックとも呼ばれた)は山岳・登山用のほとんどの寝袋に使用されていて、ファスナーの長さは出入りのしやすさや温度調節のしやすさに繋がり、短いものはその分だけ部材が少なくなるため寝袋全体の軽量化に繋がります。
ファスナーの構造
ファスナーは、スライダー(開閉部分)、エレメント(務歯)、テープの3つの部品で構成しています。
- スライダー:ファスナーを開閉する部品
- エレメント(務歯):歯車の原理でかみ合う部品
- テープ:ファスナー専用に作られている
登山用の寝袋のファスナーはYKK製が主流
山岳・登山用の寝袋に使用されているファスナーは、そのほとんどがYKK製です。海外メーカーでもYKK製のファスナーが採用されています。
登山用の寝袋のファスナーは、小さな収納袋にギューっと収納されるため、ファスナーに様々な方向への強く屈曲する負荷がかかります。もしファスナーが故障してしまうと開閉ができなくなり寝袋の保温力が著しく低下してしまいます。今までに寝袋やアウトドア用品に関する様々な記事・レビューを読んできましたが、他メーカーのスライダーを採用した製品のレビューに「ファスナーが壊れました、YKK製にしてほしい」と書かれたのを度々目にするくらい、信頼性が高いです。
YKK製のファスナーでも、スライダーの引手(つまむ部分)の構造はメーカーにより異なります。
ファスナーの種類
ファスナーには、大きく分けて3種類あります。
- 金属ファスナー:エレメントが金属でできている。厚手の生地や開閉頻度の多いカバンや財布に使用される。
- ビスロン(デルリン)ファスナー:樹脂製のエレメントがテープに射出(しゃしゅつ)成型されている。デザイン性に優れるが強い屈曲・カーブに不向き。
- 樹脂(コイル)ファスナー:エレメントがコイル状の樹脂でできている。金属・ビスロンに比べ屈曲に強く、薄く軽い。
そして、登山用の寝袋に使用されるファスナーの種類は、ほとんんどが樹脂(コイル)ファスナーです。
軽量で収納時の強い屈曲にも耐えられる樹脂(コイル)ファスナー
逆開(両開き)
登山用寝袋に採用されているのは、ほとんどが逆開(両開き)ファスナーというスライダーが首元1個と足側1個の合計2個付いていて、両方から開閉できるようになったものです。ただ、ファスナーを完全に開放する(両側を切り離す)のは足元の側になっているのが多いようです。
ロック機構のあり、なし
また、スライダー(手でつまんで開閉する部分)には、ロック機構が付いたもの(引手をつまんで動かさないとスライダーが動かない)と、ロック機構が無いもの(両方のテープを引き離すだけでスライダーが動き開いていく)があります。緊急時にすみやかに寝袋から脱出できることを重視するメーカーはロック機構なしスライダーを採用し、利用者が指定した場所で止まり開け具合を固定して調整する利便性を重要視するメーカーはロック機構のスライダーが採用されるようです。
スライダーと生地の噛み込み
寝袋のYKKファスナーが壊れた、という話は今まで耳にしたことがありませんが、スライダーが生地を噛み込んでしまうことは度々あります。噛み込んだ状態で無理して動かして生地が裂けてしまったということも聞いたことがありますので、生地を噛み込んだ場合は生地をやさしく引きながらスライダーゆっくり後ろに下げると、噛み込みがほどけます。
ファスナーの長さ
ファスナーの長さはメーカーやモデルにより異なります。足首付近までスライダーが伸びているものは、寝袋の出入りがしやすく、温度調整もしやすいです。私は少し暑いときファスナーをすべて開放(フルオープン)して毛布のように上からかけて使うことが度々ありますが、ファスナーが短い製品はこれができません。寝袋のファスナーが短い(頭~お尻の間)ものや無いものは、用途が明確な中上級者向けの製品と言えます。
関連ページ
著者PROFILE
2009年末から寝袋と関連装備に特化したこのサイトを開設。いつの間にか運営10年を超える老舗サイトに。ファミリーキャンプから無積雪期登山、厳冬期登山、バイクのキャンプツーリングに自転車旅行、車中泊など、アウトドアを幅広く経験。寝袋の宿泊数は100泊以上~500泊未満。狭い業界ですが、まだまだ知らないこと沢山あり、日々勉強中です☆
谷川岳の雪洞で宿泊
今まで様々な状況下で寝てきましたが、100泊以上経験してわかったのが、『保温力に余裕のある寝袋を用意すること』です。
雪山テントは換気にも注意(テントが埋まると酸欠に)
雨風や断熱材で守られた家と違い、アウトドアフィールドでの宿泊は天候や外気温の変化を大きく受けます。事前の天気予報より、当日の気温が-5℃程度低かった、などは日常茶飯事です。また、多くのキャンプ場は、最寄りの市街地よりも標高が高い事が多く、天気予報で知ることのできる最寄りの市街地の最低気温よりも気温が低いことが多いです。
自然の中で睡眠をとる体験は素晴らしいですが、寝袋の保温力が足りないと真夜中に早朝に目が冷めます。これは外気温は日の出前の早朝4~5時あたりが最も気温が下がり、また体温も下がっているためです。一度このタイミングで目が冷めてしまうと、身体が芯から冷え切っているため、ここからなかなか眠ることができません。そして、寝不足の状態になります。
楽しいアウトドア体験するはずだったのが、思わぬ寝不足でボーーっとしてしまうのは、もったいないです(しかも連泊でこれが続くとかなりキツイです)。少し汗ばむくらいの保温力の寝袋を選んで、ぜひ素敵なアウトドア体験を満喫してください☆
寝袋と(キャンプ用の)マットは2つで1つです。
キャンプ用のマットの役割は主に『断熱』と『寝心地を快適にする』の2つです。
『断熱』について・・・アウトドア用の寝袋の中綿として、化繊やダウンが使われていますため、小さく圧縮して収納し持ち運ぶ事ができます。寝袋を収納袋から出して広げると、徐々に中綿が膨らみますが、人間が寝袋に入ったときに身体と地面に挟まれた中綿はぺちゃんこに潰れるため、断熱力がほとんどなくなります。大概の地面は冷たく、身体の重みで密着した部分から体温が逃げ(ヒートロス、熱損失)て、底冷えします。この現象は、体温と地熱の温度差が大きい春・秋・冬ほど熱損失量も増えます。
これを防ぐため、キャンプ用のマットを使います。キャンプ用のマット体重がかかっても断熱効果が得られるよう設計されています。
『寝心地を快適にする』について・・・最近、畳の上で寝たことはありますか?痛くて寝れなかったという方もいるのではないでしょうか。昨今の快適用品の普及により、強い刺激に敏感になっています。よほどふかふかの芝生以外、寝袋のみで寝ると地面の凸凹や石があたって痛くてまともに寝れません。その衝撃を吸収する役割としてキャンプ用マットが使われます。キャンプ用マットは大きくクローズドセルマット(銀マットなど)とエア注入式の2種類あり、寝心地はエア注入式の方が良いです。
テントの中で寝袋の下に敷くマットは、様々な用途に合わせて、多数の商品があります。皆さんの用途にあった、快適に寝れるマットが見つかりますように☆