山岳・登山向けの寝袋に使われる生地(表地・裏地)には、ナイロンやポリエステルが使われています。
一般的なものよりも強度がある特殊な種類や、ダウンが飛び出しにくい高密度の織り方、繊維形状のものもあるようです。
そして、登山用の寝袋のほとんどの製品には生地に撥水加工が施されていて、雨や結露により水濡れしにくい工夫がされています。
繊維
登山用の寝袋の生地は、表地(外側の生地)と裏地(内側の生地)があります。製品によっては、表地と裏地で異なる繊維の太さや素材を使っている場合もあります。生地として、主に使われている素材は極細のナイロンとポリエステルで、ハイエンドモデルはほぼ引き裂き強度・耐摩耗性に優れた特殊な極細のナイロン繊維が使われています。
織り方
繊維の織り方は、格子状に繊維が織り込まれたリップストップになっています。
リップストップ生地
より強度のある格子状の部分で裂け目が広がらないような構造になっています。メーカーによって、リップストップの大きさは異なり、中には虫眼鏡でないと確認が難しいものもあります。
撥水加工
寝袋の生地に霧吹きすると撥水する
登山用の寝袋の生地のほとんどは撥水加工が施されています。上の写真は個人所有の登山用の寝袋(左:マウンテンイクイップメント、右:モンベル)に霧吹きした後の写真です。(右のモンベルの寝袋は2012年に購入して主力で何度も使っているものですが2018年時点でまだ撥水しています。)
登山用の寝袋において生地の撥水は非常に重要な性能です。それを理解するには逆に濡れてしまうとどうなるか、ということを知らねばなりません。現状、登山用の中綿として一般的なのはダウンです。ダウンは水濡れしてしまうと保温力が低下してしまうため、生地からの浸水は極力避けたいのです。生地が一度濡れると、携行するときの重量が増えるだけでなく、収納袋に入れた時に濡れが広がってますます保温力の低下に繋がります。また、湿った寝袋で寝るのは心地よいものではありません。
寝袋が濡れる状況
寝袋が濡れる状況として、
- 大雨によるテント内の浸水
- 前日が雨で、既にテント内部、マットが濡れている(実際、テントの内側の生地は寝袋と触れ、マットとは圧着します)
- 横殴りの雨で、テントの出入り口から強風とともに雨が吹き込んでくる
- 雨でのテントの出入り(トイレなど)で、自分のレインウェアがベチャ濡れで、着脱時にテント内に水滴が飛び散る
- テント内の生地が結露で濡れ、強風でバタつき、テント内に結露の雨が降る
- 飲み物・鍋をこぼす(登山では食事と水分補給を兼ねて鍋・ラーメン等を食べることが多い)
などがあり、何度も山行を重ねると濡れやすい状況というのが多々あるとわかってきます。
テント内の浸水やマットの濡れには撥水加工では対処できませんが、多少の雨の吹込み、結露、水物こぼしに関しては、この生地の撥水加工によりある程度対処できます。ここで大切になってくるのは寝袋が濡れたとわかったら、できるだけすぐ乾いた布等で拭き取ることです。拭き取らないと、そのまま水が寝袋に沿って流れ落ちマットが濡れます。マットが濡れると、圧着して生地に水圧がかかった状況になるため、しだいに生地が濡れ、中綿もしめっていきます。
撥水と防水は違います。撥水はやさしく水が乗った時に弾く性能で圧力がかかると通過します。防水性能はアウトドア業界では主に耐水圧(直径10cmの円柱に入れた水の何mmの高さの水圧まで耐えられるか)で表記され、その耐水圧付近まで浸水しません。
そのため、撥水では完全に水濡れを防げませんが、一時的な水濡れには十分有効です。
(※経験上、多少の雨でも登山へ行く、2泊以上の登山が多い方は落ち着いて寝るためにシュラフカバーの携行をおすすめします。>>>詳しくはこちら)
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著者PROFILE
2009年末から寝袋と関連装備に特化したこのサイトを開設。いつの間にか運営10年を超える老舗サイトに。ファミリーキャンプから無積雪期登山、厳冬期登山、バイクのキャンプツーリングに自転車旅行、車中泊など、アウトドアを幅広く経験。寝袋の宿泊数は100泊以上~500泊未満。狭い業界ですが、まだまだ知らないこと沢山あり、日々勉強中です☆
谷川岳の雪洞で宿泊
今まで様々な状況下で寝てきましたが、100泊以上経験してわかったのが、『保温力に余裕のある寝袋を用意すること』です。
雪山テントは換気にも注意(テントが埋まると酸欠に)
雨風や断熱材で守られた家と違い、アウトドアフィールドでの宿泊は天候や外気温の変化を大きく受けます。事前の天気予報より、当日の気温が-5℃程度低かった、などは日常茶飯事です。また、多くのキャンプ場は、最寄りの市街地よりも標高が高い事が多く、天気予報で知ることのできる最寄りの市街地の最低気温よりも気温が低いことが多いです。
自然の中で睡眠をとる体験は素晴らしいですが、寝袋の保温力が足りないと真夜中に早朝に目が冷めます。これは外気温は日の出前の早朝4~5時あたりが最も気温が下がり、また体温も下がっているためです。一度このタイミングで目が冷めてしまうと、身体が芯から冷え切っているため、ここからなかなか眠ることができません。そして、寝不足の状態になります。
楽しいアウトドア体験するはずだったのが、思わぬ寝不足でボーーっとしてしまうのは、もったいないです(しかも連泊でこれが続くとかなりキツイです)。少し汗ばむくらいの保温力の寝袋を選んで、ぜひ素敵なアウトドア体験を満喫してください☆
寝袋と(キャンプ用の)マットは2つで1つです。
キャンプ用のマットの役割は主に『断熱』と『寝心地を快適にする』の2つです。
『断熱』について・・・アウトドア用の寝袋の中綿として、化繊やダウンが使われていますため、小さく圧縮して収納し持ち運ぶ事ができます。寝袋を収納袋から出して広げると、徐々に中綿が膨らみますが、人間が寝袋に入ったときに身体と地面に挟まれた中綿はぺちゃんこに潰れるため、断熱力がほとんどなくなります。大概の地面は冷たく、身体の重みで密着した部分から体温が逃げ(ヒートロス、熱損失)て、底冷えします。この現象は、体温と地熱の温度差が大きい春・秋・冬ほど熱損失量も増えます。
これを防ぐため、キャンプ用のマットを使います。キャンプ用のマット体重がかかっても断熱効果が得られるよう設計されています。
『寝心地を快適にする』について・・・最近、畳の上で寝たことはありますか?痛くて寝れなかったという方もいるのではないでしょうか。昨今の快適用品の普及により、強い刺激に敏感になっています。よほどふかふかの芝生以外、寝袋のみで寝ると地面の凸凹や石があたって痛くてまともに寝れません。その衝撃を吸収する役割としてキャンプ用マットが使われます。キャンプ用マットは大きくクローズドセルマット(銀マットなど)とエア注入式の2種類あり、寝心地はエア注入式の方が良いです。
テントの中で寝袋の下に敷くマットは、様々な用途に合わせて、多数の商品があります。皆さんの用途にあった、快適に寝れるマットが見つかりますように☆