近年、北海道を中心にヒグマ・ツキノワグマとの遭遇件数が急増し、人身被害も起きています。命を守る最終手段として注目されるのが熊撃退スプレーです。本稿ではおおよそ一万円以下で入手できる五製品を専門家の実射動画と救命事例に基づいて比較し、選び方・携行方法・訓練のコツ、さらに廃棄までの安全手順を整理しました。実際の効果を左右する射程や噴射持続時間、風向きへの配慮、そして四年が目安とされる使用期限にも注意が欠かせません。加えて、回収サービスによる処分法を知り、山に入る前には安全弁の解除動作を繰り返し練習することが、万一の遭遇時に冷静さを保つ鍵となります。準備と知識が遭難を未然に防ぐ最良の装備になります。
クマ撃退スプレーは劇物です。使い方・注意点・熊との実践における使用方法・廃棄方法などの事前学習が大切です。熊対策の専門家・プロの発信情報を踏まえて情報を記載しています。
記事のポイント
- 熊スプレーの実際を知ろう~10,000円以下の熊スプレー5種類の紹介と試射~
- 北海道大学大学院獣医学研究院 下鶴倫人准教授|【最終手段】射程距離約3メートル…後ずさりで距離を取る…意外と知らないクマ撃退スプレーの使い方
- 熊撃退スプレーで助かった事例
北海道大学大学院獣医学研究院 下鶴倫人准教授|【最終手段】射程距離約3メートル…後ずさりで距離を取る…意外と知らないクマ撃退スプレーの使い方
この動画の概要
現状と背景
- 2023年の熊目撃件数は 245 件で、昨年同時期より約 80 件減少。ただし雪解けの遅れにより、これから活動が活発化すると予測される。
- 北海道日高町浦川では 81 歳の男性が襲われ重傷を負うなど、春先から負傷事例が報告されている。
山野へ入る前の基本対策
- 音で存在を知らせる: 熊よけ鈴やポータブルラジオを常に鳴らし、声掛けも行って人の存在を伝える。
- 行動計画を立てる: 明るい時間帯に行動し、薄暗い時間を避ける。できる限り複数人で行動する。
- 装備を万全にする: 熊撃退スプレーを利き手で即座に取り出せる位置へ装着し、携帯電話や登山届も準備する。
熊撃退スプレーの正しい運用
- 最終手段であることを理解する – 後退しても熊が接近し続ける場合のみ使用。
- 射程距離は約 3 m – 熊を十分に引き付けてから噴射。
- 照準は鼻先と目 – ためらわず一気に全量噴射する。
- 風向をチェック – 強風時は必ず風下へ噴射し、自分への逆流を防ぐ。
- 日頃のシミュレーション – 抜き取り動作を繰り返し練習し、緊急時の反応速度を高める。
遭遇時の行動フロー
- 熊を発見したら静かに後ずさりし距離を確保。
- 接近が止まらない場合は射程圏内まで引き付ける。
- 視線を外さず安定姿勢で噴射。
- 熊が怯んだ隙に背を向けずゆっくり後退し、安全圏へ退避。
心構え
- 北海道の山林はほぼすべてが熊の生息域とつながっていると認識して行動する。
- 出発前に「遭遇したらどうするか」を具体的にイメージし、同行者とも共有する。
- 春〜初夏は新芽や残雪周辺に熊が集まりやすいため、林道・沢沿い・藪地では警戒レベルを上げる。
熊スプレーの実際を知ろう~10,000円以下の熊スプレー5種類の紹介と試射~
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はじめに
近年、北海道を中心にヒグマとの遭遇件数が増加し、人身事故も報告されています。登山やキャンプで最終手段として備えておきたいのが熊撃退スプレーです。本稿では、動画内で取り上げられた5製品の特徴、実射テスト結果、選び方のポイントを整理しました。
取り上げた5製品
- カウンターアソールト(Counter Assault)
- フロンティアーズマン(Frontiersman)
- UDAP パワーベアディフェンス
- ポリス OC‑17 マグナム
- TW‑100 オリジナル
各製品の特徴詳細
カウンターアソールト
- 元祖・熊撃退スプレーで歴史・実績共に最強クラス
- 北米での実証例が多く、ヒグマ・グリズリーへの忌避効果が確認済み。
- 北海道でも実地使用例が報告され、研究者の携行率が高い。
- 価格は高め、容量・噴射時間ともに最大クラス。

フロンティアーズマン
- 射程約9〜10 m、公称噴射10秒超えで大型個体にも対応。
- Amazon経由での入手が容易。

UDAP ペッパーパワー ベアスプレー
- イエローストーン国立公園推奨。北米の実戦データが豊富。
- 射程・噴射時間ともに上位2製品と同水準。
ポリス OC‑17 マグナム
- 日本の警察・自治体でツキノワグマ対策に採用例あり。
- 人間に対する護身用としても使用可能。
- 価格約5,480円、射程5 m前後と中型クラス。

TW-1000 ドイツ製・熊よけペッパー
- 最小・最軽量クラスで携行性が高い。
- 噴射は糸状で直線性が高く、風の影響を受けにくい。
- 価格約4,168円と最安。
比較表
製品名 | 射程 (公称) | 噴射持続 | 容量 | 主な有効対象 |
---|---|---|---|---|
カウンターアソールト | 9〜10 m | 約10秒以上 | 230 g (推定) | ヒグマ・グリズリー |
フロンティアーズマン | 9〜10 m | 約10秒以上 | 230 g (推定) | ヒグマ・グリズリー |
UDAP パワーベア | 9〜10 m | 約10秒以上 | 230 g | ヒグマ・グリズリー |
ポリス OC‑17 マグナム | 5 m前後 | 約6秒 | 150 g (推定) | ツキノワグマ・護身 |
TW‑100 オリジナル | 5 m前後 | 約6秒 | 110 g | ツキノワグマ・護身 |
実射テスト要約
- 最適噴射距離:3 m前後が最も効果的。1 m未満では自分にもかかる恐れ。
- 風の影響:風上から噴射すると散布範囲が狭まり直進性が高い。
- 噴射持続:上位3製品は1回2秒噴射を3回以上実施できる残量を確認。
- 小型モデル (TW‑100) でも近距離なら十分な濃度を確保。風への耐性も高め。
使用期限と保管のポイント
- いずれも製造から約4年間が公式使用期限。ただし気温変化の少ない日陰で保管すれば8〜10年機能する事例あり。
- 高温・極低温・直射日光は避ける。
携行シーン別の推奨
シーン | 推奨モデル | 理由 |
ヒグマ生息域の縦走登山 | カウンターアソールト / フロンティアーズマン / UDAP | 最大射程と持続時間が安心材料 |
ツキノワグマ主体の低山ハイク | ポリス OC‑17 マグナム | 軽量で護身用としても兼用可能 |
トレイルラン・ULハイク | TW‑100 オリジナル | 最軽量・コンパクトで荷物を圧迫しない |
安全な使用手順(要点)
- 右利きは左腰、左利きは右腰にホルスターを配置。
- ヒグマを視認したら即座にスプレーを構え、安全ピンを抜く。
- 10 m内に接近されたら後退しつつ3 mで初弾噴射。
- 効果を確認しつつ追加噴射を準備。突進が止まらなければ連続噴射。
- 使用後は必ず水で手や顔を洗浄し、残量と期限をチェック。
まとめ
- 最終手段として信頼できるのは射程と持続時間に優れる上位3製品。
- 軽量性や費用を重視する場合はポリス OC‑17またはTW‑100でも一定の効果が期待できる。
- どのモデルでも、正しい構え方と練習が不可欠。必ず使用手順を事前にシミュレーションし、使用期限を管理することが安全登山への第一歩です。
熊撃退スプレーで助かった事例
<ジョギング中にクマ 命救ったのは常備していたスプレー>九死に一生を得た男性が語る一部始終「これがないと…今ごろ、私は生きていないかもしれない」 北海道美唄市
概要
北海道ビバ市の展望台でジョギング中だった関さんは、今月17日夜に体長約1.5 mのクマと至近距離(約10 m)で遭遇しました。関さんは事前に携帯していた熊よけスプレーを3 mほどまで接近したクマに向けて噴射し、クマは沢へ逃走。関さんは負傷なく下山しました。
熊出没と被害の現状
- 道内のクマ目撃件数は年間2,000件超。
- 2025年6月だけで773件と過去最多を記録。
- 過去5年間で死亡7人・多数負傷の事故が発生し、遭遇リスクが高まっています。
熊よけスプレーの特徴と需要増
主なスペック | 内容 |
---|---|
有効成分 | カプサイシン(唐辛子の辛味成分) |
噴射距離 | 最大約12 mの商品も流通 |
形状 | 大容量型・携帯型などバリエーション豊富 |
店頭動向 | 売り切れ商品が出るなど購入者が急増 |
鈴や笛のみでは不安を感じ、携帯スプレーを併用する登山者や市街地ランナーが増加しているとのことです。
使用時の注意点と講習会のポイント
- 安全弁(オレンジ色のピン)を確実に外す。
- 正しいグリップ:缶を縦にし、人差し指でレバーを押す。
- 腰や胸元に装着し、瞬時に取り出せる位置で携行。
- 定期的に訓練し、慌てて噴射できない事態を防ぐ。
札幌で行われた講習会では、実際に射撃姿勢や噴射トリガー操作を体験し、手応えを確認する参加者が多数見られました。
噴射威力の体感レポート
記者が中身を安全液に入れ替えたスプレーでテストした結果、
- 視界が真っ白になり、
- 強烈な刺激臭が遅れて到達。
このためクマは顔面へ直接命中せずともガス成分だけで退散するケースが多いと解説されています。
スプレーの役割と限界
- **人が実質的に使用できる唯一の「飛び道具」**として評価。
- かつて一般的だった刃物での防御は現実的でないため、スプレーが**「最終手段」**と位置づけられています。
- 所持しているだけでも心理的に冷静さを保ちやすい利点があります。
廃棄・処分方法
状態 | 正しい処分法 | 重要ポイント |
---|---|---|
使い切った缶 | 穴を開けず、透明または半透明袋に入れて家庭ゴミへ | 内部に残圧がなくても穿孔禁止 |
未使用・残量あり | ゴミ収集場に出さず、清掃事務所または消防署へ無料引き取りを依頼 | 収集車内での発火・破裂事故を防止 |
今月、廃棄場に捨てられていた缶を誤って噴射し、17人が咳や喉の痛みで避難する騒動が発生した事例も報告されています。
まとめ
- 遭遇リスクの上昇により熊よけスプレーの需要が急増。
- 正しい携行・安全弁解除・照準訓練が不可欠。
- 適切な廃棄方法を守り、二次被害を防止。
万が一の対面時に備え、**「備え・習熟・処分」**の三段階を徹底することが、自身と周囲の安全を守る最善策といえます。
全体のまとめ
- ヒグマとの遭遇件数が急増しており、熊撃退スプレーは登山・キャンプ時の最終手段として欠かせません。
- 比較対象は 10,000 円以下で入手できる5製品(カウンターアソールト、フロンティアーズマン、UDAP、ポリス OC-17、TW-100)です。
- 射程9〜10 m・噴射約10 秒以上の上位3製品は、ヒグマ対応の安心感が高いです。
- 軽量性と価格を重視する場合は、ポリス OC-17とTW-100が携行しやすく費用も抑えられます。
- 効果的な噴射距離は約3 mで、風向きを確認しながら2〜3 秒連続噴射すると忌避効果が最大化します。
- ホルスターは利き手と逆側の腰に装着し、安全ピンの解除と構え動作を繰り返し練習しておくと安心です。
- 公式使用期限は製造後4年ですが、温度変化の少ない日陰で保管すれば8〜10 年機能した事例もあります。
- 使用後は必ず手や顔を水で洗い、缶の残量と期限を点検し、定期的に予備を更新してください。
- 廃棄時は使い切った缶を穴開けせず透明袋で家庭ゴミへ、残量がある缶は清掃事務所・消防署で無料回収が推奨されます。
- 「備え・習熟・処分」の3段階を徹底することで、熊撃退スプレーは命を守る最終防衛線として確かな効果を発揮します。
熊撃退スプレーのよくある質問
熊が出没による人身被害の多い都道府県はありますか?
環境省の資料によると、2019年~2024年の熊による人身被害件数が多い都道府県トップ5は、北海道、青森県、岩手県、秋田県、新潟県、福島県、長野県がほぼ占めています。
本州はツキノワグマですが、北海道はより巨体のヒグマで気性も荒いと言われています。北海道は地域によってはヒグマ出没が頻度が多く社会問題になっています。

熊鈴と併用すべき?
クマと出会わない対策が第一。鈴・ラジオで存在を知らせ、スプレーは最終手段です。
クマの専門家の方曰く熊鈴の効果は
- 無風の開けた場所で最大300 m。
- 強風・沢音・密林では大幅に減衰。
- 「威嚇」ではなく“こちらの存在を知らせる手段” と割り切る。
と言われています。熊鈴は鈴型ではなく、音の大きなベル型が推奨です。
ただ、過去に人を襲って食べた熊は熊鈴の音を聞くと逆に寄ってくるという話もあり、過去にそういう事件があって解決していない山域では熊鈴は避けたほうが良いという意見もあります。
熊撃退スプレーの成分は何?

主成分はカプサイシンおよび関連カプサイシノイドでOC(Oleoresin Capsicum)と呼ばれます。これらは唐辛子に含まれる辛味成分で、哺乳類の粘膜や眼球のTRPV1受容体を強烈に刺激し、瞬時に痛覚・熱覚を引き起こします。
OCは溶剤(水溶性と油性がある)に溶かされ、ガス(窒素or二酸化炭素or代替フロンなど)と共にスプレー缶に詰めれれています。

最強の熊撃退スプレーはどれですか?


スペック的にも実績的にも「カウンターアソールト CA290」が最強だと思います。詳しくは下記ページをご参照。


売れている人気の熊撃退スプレーはどれですか?





価格が手頃でコンパクトな『ポリスマグナム B-609』が非常に人気です。ただしヒグマは非対応です。詳しくは下記ページをご参照。


カプサイシノイド濃度 が最大で2%なのはなぜですか?
米国環境保護庁(EPA)登録製品では総カプサイシノイド濃度 1〜2% が標準とされています。これは人体に対する非致死性と、野生動物に対する即効的な忌避効果のバランスを取った値であり、2%を超える処方は規制対象となり一般流通しません。


熊に遭遇した時の対処法ってあるの?



約50年クマ研究されてきた日本ツキノワグマ研究所 米田一彦さんの『熊に遭遇した時の対処法』の動画(約35分)が非常に有用です!
冬季は噴射力が落ちる?
気温0 °C付近でガス圧低下が起きる。内ポケット携行で温度を保つと良い。
人間にご誤噴射したらどうなる?


猛獣対策の熊撃退スプレーは対人用の護身用の催涙スプレーの何倍も強力な劇薬です。噴射物が僅かに目に入る・皮膚に付着するだけで数時間の痛みが続くようです
緊急時でも周囲に人がいる状況での使用も最大限の配慮が必要で、安易に噴射して自分にかかって動けなくなった例もあるようです。
誤噴射や被爆による応急処置
- 内容物が目に入った場合:すぐに流水で15分以上やさしく洗眼し、コンタクトレンズは5分以内に取り外す。
- 皮膚や衣服に付着した場合:衣類を脱ぎ、ただちに流水で15分以上洗い流す。
- 症状が改善しない場合は本製品を持参のうえ医療機関を受診する
海外や日本での誤噴射事故も複数件あります。


熊撃退スプレーって本当に必要?
その昔は仕事や研究調査で積極的にクマの生息域に入る方が携行するものでした。ところが近年は里山・市街地にも出没し被害が多くなる年もあり、出没頻度が多い地域では市町村がクマ撃退スプレーを推奨し、補助金がでている地域もあります。




熊に熊撃退スプレーを噴射している動画はありますか?
海外に実際に噴射している様子の動画がありました。熊が木に登ってるのはちょっと怖いですね。
熊スプレーは飛行機で運べますか?
スプレー缶は飛行機で荷物として運べません。例えば、東京から北海道まで行く場合は、熊撃退スプレーは「現地で購入」か「手持ちのスプレーを陸送」が必要になります。
以下の動画で輸送方法について解説されていて、参考になります。
熊撃退スプレーを使えば万が一襲われても助かりますか?
熊の専門家の方は「100%はないけれど90%助かる」と言われています。
過去、業務で9回襲われてますが、通常の5倍~10倍激しく攻撃してきた熊でも熊スプレーで撃退できた(以下の動画をご参照)
熊が近づいてきた時、熊撃退スプレーはどの距離で噴射したらよいですか?
5m~3m程度まで引き付けて噴射するのが推奨、と言われています。熊撃退スプレーのスペックは無風状態での測定値で、現実には風の影響を受けますので、確実に熊に届く距離が5m~3m程度と言われています。
10mだと風で飛ばされて効果がありません。5m,3m,2mと段階的に噴射します。最初の5mの距離での噴射でほとんどの熊が逃げます。
使用期限切れは使える?
刺激成分が劣化し効果が落ちる恐れがあるため推奨されていません。
使用期限の切れた熊撃退スプレーの処分方法は?
万が一用ですので、全く使用せずに使用期限を過ぎるケースがほとんどだと思います。
熊撃退スプレーは劇薬ですので、僅かに成分が目や皮膚に付着するだけで痛みが生じます。安全に処分する方法の動画がモンベルで紹介されていましたので、下記動画をご参考にしてください。


関連リンク
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【2025年】最強の熊撃退スプレーを含む9製品の比較表と人気ランキング
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