先日、「ダウンシュラフは薄着で寝ると効果的なのか?」と質問があったので、そのことについて経験を踏まえて記載してみたいと思います。
結論を先に書くと「外気温と体温差が小さい時期であれば、薄着で就寝で十分かもしれませんが、外気温が10度未満の時期は温かい服装で寝るのがおすすめ」です。
寝袋で寝る時の服装は薄着の方が温かい???
この内容は、結構昔から個人のブログ記事だけでなく、シュラフメーカーのWebサイトでも記載されることがある内容です。普通に考えたら厚着の方が温かいはずなのですが、なぜ、このように記載されるのか、もう少し詳しく考察してみたいと思います。
薄着の方が寝袋内の温度は上がりやすいが・・・
ダウンジャケットなどのインサレーションジャケットは断熱力が高く熱が外に漏れにくくなります。
上半身は、ある意味、身体の主要な熱源(発熱量が多い部分)です。ダウンジャケットを着て寝ると、発熱源の上半身の熱が寝袋内に伝わりにくくなり、寝袋内の温度がそれほど上がりにくくなります。
ジャケットで覆われている部分はもちろん温かいのですが、それ以外の露出した手・薄着の下半身を取り囲む空気がそれほど上がらず、結果的にそれほど暖かく感じない、となる可能性があります。
つまり、寝袋内の温度を上げるには、上半身は厚着しすぎない程度に留める(例:フリースを着るだけ)ことで、適度に寝袋内の温度を上げて、全身が温かい空気に包まれるやすくなります。
ただし、この話はいくつかの条件が重なった時に有効な話と思います。
- ①寝袋の保温力が十分に高い
- ②外気温が低すぎない
- ③寝袋から出たり入ったりしない
①寝袋の保温力が十分に高い
薄着で寝た場合、外気温に対して十分に保温力がある(寝袋とマット自体に断熱力がある)に薄着で就寝可能です。夏用の寝袋を秋に使って薄着で寝ると、保温力不足でただただ寒くて寝れないだけになります。
②外気温が低すぎない
寝袋で寝る時の外気温(寝袋の外側の気温)が経験上ですが1桁以下(10℃未満)になってくると、就寝時に寝袋内部に直接侵入してくる冷気が気になってきます。
気密性が高く保温力を発揮しやすい構造のマミー型でも顔部分は呼吸のために露出しています。寝返りした時にそこから寝袋の内側と外側で空気が出入りします。ある寝返りをした時に、バフーーーっと寝袋内の体温で温められた空気が外に出て、また違う寝返りした時に外側の冷たい空気がバフーーーっと寝袋内部に入り込んできます。この空気の出入りは、ショルダーウォーマー(ネックバッフル)が付いていないモデルでは出入りしやすく、ネックバッフル付きモデルではある程度抑制されます。
ショルダーウォーマー(ネックバッフル)付きのマミー型寝袋
一般的に氷点下対応のマミー型寝袋には、このショルダーウォーマー(ネックバッフル)が付いていて、3シーズン用ではほとんど付きません。
厳冬期の八ヶ岳のテント泊を例にすると、夜中に外気温が-15℃程度になり、わずかに冷気空気が入ってくるだけで、寝袋内の温度が容易に下がってしまいます。
③寝袋から出たり入ったりしない
断熱力の高い一般家屋と違い、キャンプでは外と薄い生地で仕切られているのみで、テント内と外の気温差がそれほど高くありません。
過去に、テントの内と外の気温の温度を温度データロガーで測定したことありますが、テント内と外の温度差は約3℃で、テントの保温力はその程度、という結果を得ました。
また、上のグラフからもわかるように、夜中の夜明けの時間帯が最も気温が下がります。
何度かキャンプすると、夜中に起きてトイレへ行った経験がある方も多いと思います。薄着で寝ていると、例え寝袋内が温かくても、寝袋から出てとても寒い外に行かねばなりません。この時に薄着だと、どれだけ身体が温まっていても、一瞬で身体が冷えます。キャンプでの薄着の就寝は、外気温が低く、かつトイレなど夜中に起きる可能性が高い状況では避けるのが無難です。
個人的意見
外気温と体温差が小さい時期であれば、薄着で就寝で十分かもしれませんが、外気温が10度未満の時期は温かい服装で寝るのがおすすめです。外気温が氷点下の場合にはなおさらです。
以下、雪山で寝る時の私の服装実例です。
重ね着のポイントは、上半身から足先までインサレーションでしっかり重ね着することです。厚着する、となった場合、上半身のみを用意する方も少なくないですが、氷点下付近になってくると、下半身もしっかり保温していないと夜中にトイレ行っただけでかなり身体が冷える&寒いです。上記の例は、私が何度も雪山でテント泊など経験を重ねるうちに至った服装です。
具体的な装備に関しては、別のページに記載していますので、興味のある方は参考になさってください☆
参考サイト
著者PROFILE
2009年末から寝袋と関連装備に特化したこのサイトを開設。いつの間にか運営10年を超える老舗サイトに。ファミリーキャンプから無積雪期登山、厳冬期登山、バイクのキャンプツーリングに自転車旅行、車中泊など、アウトドアを幅広く経験。寝袋の宿泊数は100泊以上~500泊未満。狭い業界ですが、まだまだ知らないこと沢山あり、日々勉強中です☆
谷川岳の雪洞で宿泊
今まで様々な状況下で寝てきましたが、100泊以上経験してわかったのが、『保温力に余裕のある寝袋を用意すること』です。
雪山テントは換気にも注意(テントが埋まると酸欠に)
雨風や断熱材で守られた家と違い、アウトドアフィールドでの宿泊は天候や外気温の変化を大きく受けます。事前の天気予報より、当日の気温が-5℃程度低かった、などは日常茶飯事です。また、多くのキャンプ場は、最寄りの市街地よりも標高が高い事が多く、天気予報で知ることのできる最寄りの市街地の最低気温よりも気温が低いことが多いです。
自然の中で睡眠をとる体験は素晴らしいですが、寝袋の保温力が足りないと真夜中に早朝に目が冷めます。これは外気温は日の出前の早朝4~5時あたりが最も気温が下がり、また体温も下がっているためです。一度このタイミングで目が冷めてしまうと、身体が芯から冷え切っているため、ここからなかなか眠ることができません。そして、寝不足の状態になります。
楽しいアウトドア体験するはずだったのが、思わぬ寝不足でボーーっとしてしまうのは、もったいないです(しかも連泊でこれが続くとかなりキツイです)。少し汗ばむくらいの保温力の寝袋を選んで、ぜひ素敵なアウトドア体験を満喫してください☆
寝袋と(キャンプ用の)マットは2つで1つです。
キャンプ用のマットの役割は主に『断熱』と『寝心地を快適にする』の2つです。
『断熱』について・・・アウトドア用の寝袋の中綿として、化繊やダウンが使われていますため、小さく圧縮して収納し持ち運ぶ事ができます。寝袋を収納袋から出して広げると、徐々に中綿が膨らみますが、人間が寝袋に入ったときに身体と地面に挟まれた中綿はぺちゃんこに潰れるため、断熱力がほとんどなくなります。大概の地面は冷たく、身体の重みで密着した部分から体温が逃げ(ヒートロス、熱損失)て、底冷えします。この現象は、体温と地熱の温度差が大きい春・秋・冬ほど熱損失量も増えます。
これを防ぐため、キャンプ用のマットを使います。キャンプ用のマット体重がかかっても断熱効果が得られるよう設計されています。
『寝心地を快適にする』について・・・最近、畳の上で寝たことはありますか?痛くて寝れなかったという方もいるのではないでしょうか。昨今の快適用品の普及により、強い刺激に敏感になっています。よほどふかふかの芝生以外、寝袋のみで寝ると地面の凸凹や石があたって痛くてまともに寝れません。その衝撃を吸収する役割としてキャンプ用マットが使われます。キャンプ用マットは大きくクローズドセルマット(銀マットなど)とエア注入式の2種類あり、寝心地はエア注入式の方が良いです。
テントの中で寝袋の下に敷くマットは、様々な用途に合わせて、多数の商品があります。皆さんの用途にあった、快適に寝れるマットが見つかりますように☆
実は外気温が氷点下になってくるくらいになると、空気が乾燥している(冷たい空気は内包している水蒸気量が少なく、呼吸で吸い込むと空気が温められると同時に身体の水分を奪っていく)ために、夜中に1~2度ほど水分補給することが多いです(水が凍らないようにお湯を保温瓶にいれて、枕元に置いておきます)。
その時、寝袋のジッパーを少し開けて、両手と上半身を外に出すことになります。この時に寝袋内部の熱も逃げるだけでなく、寝袋の外に上半身が出ますから、ある程度しっかりと厚着していないと、身体が冷えてしまい再度就寝することが難しくなってしまいます。
また、雪山ではその乾燥対策ゆえに、夕食では多量の水分を補給でき、かつ身体も温まる”鍋料理”を食べることが多いです。水分摂取量が多いため、キンキンに冷えた夜中に起きて雪の上をキュッキュッと鳴らしながらトイレまで移動することもあります。