2019年、山岳系の寝袋・シュラフの大御所、モンベルからダウンハガー800 ハーフレングスが発売されました。
出典:モンベル
現状、下記3モデルとなっています。
- #1 快適睡眠-5℃~、657g
- #3 快適睡眠3℃~、439g
- #5 快適睡眠-8℃~351g
登山で、寝袋(シュラフ)に入る時、そもそも防寒着(フリース・ダウンジャケットなど)あるのだから、身体の上部の保温は防寒着に任せて、軽量化できますよね、という発想です。
ダウンをみぞおち部まで封入し、上部は中綿を入れず生地のみの構造になっています。みぞおち部より上部の生地量が減り、中綿を使わない分だけ、軽量化され、収納サイズも一回り小さくなっています。
軽量化のため、サイドジッパーもありません。(足裏部分にジッパーがあり、多少温度調節が可能なようです)
この発想の寝袋は以前からあった
パタゴニアから2016年にハイブリッド・スリーピング・バッグが発売されました(2019年現在も販売されています)
出典:パタゴニア
1グラムでも軽量化したい、無駄を省きたい(重複した機能を削減したい)、といったニーズのあるアルパインクライミング(一見、これ本当に登れるの?と思われるような岩壁をロープやカラビナで安全を確保しながら登っていく)向けに開発された寝袋です。
アルパインクライミングは、そもそもリスクの高い山行スタイルのため、道具選びもシビアになってきます。
アルパインクライミングがわからない方は、下の動画をご参考に。
ハイブリッド・スリーピング・バッグは、海外メーカーのパタゴニアの外国人向け寝袋ゆえ、日本人には大きすぎる(寝袋内部に必要以上に隙間が空く)という声があがっていました。
今回モンベルで発売されたハーフレングスモデルは、日本人の体格にあった、同系統のコンセプトの寝袋になります。
どの程度軽量・コンパクトになっているのか
通常のダウンハガー800の重量(収納袋込み)で
- #1 984g
- #3 600g
- #5 450g
ハーフレングスは、
- #1 657g(-327g,-33%)
- #3 439g(-161g,-26%)
- #5 351g(-99g,-22%)
となっています。
収納サイズもその分だけ小さくなっています。(圧縮袋を使えば、メーカー表示のサイズよりある程度小さくなりえるため、メーカーのカタログ表記のサイズ比較は割愛します。)
実際に入ってみた感想
モンベルのお店で実際に最も需要が多いと予想される#3を試着してみました。
何度も見慣れたモンベルの寝袋のため、ついついサイドジッパーを探してしまい、「あ、このモデルは無いんだった」と思いながら、上部から潜り込みました。
みぞおち部分から上が、薄いナイロン生地のため、違和感あります。
出典:モンベル
カタログ画像では、ドローコードが首元だけ表示されていますが、実際には、シェル部分とダウン封入部分の切り替わりの部分の内側にもあります。
実際に寝てみて、そのドローコードが2つとも伸縮性のあまりない紐であることに違和感を感じました。
特に、お腹部分内側のドローコードは、締めすぎると手を内側に入れる時に、腕を食い込んできました。
いろいろ試してみましたが、このドローコードの締め具合の調整が難しく感じました。
実際に寝袋で長時間寝ている時、スマホによる天気やルート確認や普段の寝相の影響(就寝時にいつも手が腹部より下にある、という人はあまりいないと思います)で、シェル部分とダウン封入部分を行ったり来たりすると思うのですが、ドローコードを締めすぎるとダウン封入部分に手を入れた時食い込む、抜くとガパっと空間が空いてしまう状態になりました。
個人的には、このお腹部分内側のドローコードに関しては、腕の出し入れしてもフィットするゴム紐が良かったのではないかと感じました。(私がこれを山で使うとしたらまっさきにゴム紐に交換してしまいそう)
また、店内での試着ですが、シェル部分とダウン封入部分の温度差が明確に感じられました。上半身はインサレーションを着用して使うことを想定していますが、課題となってくるのは手の保温対策です。
通常、インサレーションジャケット(ダウンジャケットなど)は、手首までの保温で、手は別途手袋等で保温、もしくはインサレーションジャケットのポケットに入れて寝ることになると思います。
手は、表面積が大きい身体の末端部分のため、冷えやすく暖まりにくい部分ですので、ハーフレングスを実践で使いこなすには、この手をどのように保温するか、工夫が必要ですし、寝るときの姿勢もいくらか制限されると思います。(特に一桁以下の気温では)
そういう独特の個性を十分理解した上で、少しでも軽量・コンパクトにしたい方には、朗報の新商品かもしれません。
ぜひ、お近くのモンベル店舗で、試してみてください☆
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著者PROFILE
2009年末から寝袋と関連装備に特化したこのサイトを開設。いつの間にか運営10年を超える老舗サイトに。ファミリーキャンプから無積雪期登山、厳冬期登山、バイクのキャンプツーリングに自転車旅行、車中泊など、アウトドアを幅広く経験。寝袋の宿泊数は100泊以上~500泊未満。狭い業界ですが、まだまだ知らないこと沢山あり、日々勉強中です☆
谷川岳の雪洞で宿泊
今まで様々な状況下で寝てきましたが、100泊以上経験してわかったのが、『保温力に余裕のある寝袋を用意すること』です。
雪山テントは換気にも注意(テントが埋まると酸欠に)
雨風や断熱材で守られた家と違い、アウトドアフィールドでの宿泊は天候や外気温の変化を大きく受けます。事前の天気予報より、当日の気温が-5℃程度低かった、などは日常茶飯事です。また、多くのキャンプ場は、最寄りの市街地よりも標高が高い事が多く、天気予報で知ることのできる最寄りの市街地の最低気温よりも気温が低いことが多いです。
自然の中で睡眠をとる体験は素晴らしいですが、寝袋の保温力が足りないと真夜中に早朝に目が冷めます。これは外気温は日の出前の早朝4~5時あたりが最も気温が下がり、また体温も下がっているためです。一度このタイミングで目が冷めてしまうと、身体が芯から冷え切っているため、ここからなかなか眠ることができません。そして、寝不足の状態になります。
楽しいアウトドア体験するはずだったのが、思わぬ寝不足でボーーっとしてしまうのは、もったいないです(しかも連泊でこれが続くとかなりキツイです)。少し汗ばむくらいの保温力の寝袋を選んで、ぜひ素敵なアウトドア体験を満喫してください☆
寝袋と(キャンプ用の)マットは2つで1つです。
キャンプ用のマットの役割は主に『断熱』と『寝心地を快適にする』の2つです。
『断熱』について・・・アウトドア用の寝袋の中綿として、化繊やダウンが使われていますため、小さく圧縮して収納し持ち運ぶ事ができます。寝袋を収納袋から出して広げると、徐々に中綿が膨らみますが、人間が寝袋に入ったときに身体と地面に挟まれた中綿はぺちゃんこに潰れるため、断熱力がほとんどなくなります。大概の地面は冷たく、身体の重みで密着した部分から体温が逃げ(ヒートロス、熱損失)て、底冷えします。この現象は、体温と地熱の温度差が大きい春・秋・冬ほど熱損失量も増えます。
これを防ぐため、キャンプ用のマットを使います。キャンプ用のマット体重がかかっても断熱効果が得られるよう設計されています。
『寝心地を快適にする』について・・・最近、畳の上で寝たことはありますか?痛くて寝れなかったという方もいるのではないでしょうか。昨今の快適用品の普及により、強い刺激に敏感になっています。よほどふかふかの芝生以外、寝袋のみで寝ると地面の凸凹や石があたって痛くてまともに寝れません。その衝撃を吸収する役割としてキャンプ用マットが使われます。キャンプ用マットは大きくクローズドセルマット(銀マットなど)とエア注入式の2種類あり、寝心地はエア注入式の方が良いです。
テントの中で寝袋の下に敷くマットは、様々な用途に合わせて、多数の商品があります。皆さんの用途にあった、快適に寝れるマットが見つかりますように☆