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ある方から質問を頂き、多くの方が疑問に感じる内容でもあったため、記事にしました。 

質問「タイベックやゴアテックスを「シュラフ」の生地として使えば、荷物も減るのでは?」

質問

質問なのですが、「シュラフ」のほかに「シュラフカバー」が売られているようですが、「シュラフカバー」を「シュラフ」に使えばいいのではないかと(一体化)思うのですが、なぜわざわざカバーとして商品化されているのでしょうか?
記事に書かれているメリットは納得しますが、例えばタイベックやゴアテックスを「シュラフ」の生地として使えば、荷物も減るのではと考えてしまいます。
「ゴアテックス 寝袋」で検索しても、「シュラフカバー」しかヒットしないので、不思議に思ってます。

 

回答「様々な理由で使われていないシュラフが大多数です」

確かにゴアテックスなど防水透湿性素材をシュラフ本体の生地として使えば軽量化できますが、様々な理由で使われていないシュラフが大多数です。

防水透湿性素材をシュラフ本体の生地として使われている製品は、僅かではありますが存在しています。

ナンガ 「オーロラ」モデル

ナンガ 防水透湿性素材 オーロラテックス

多孔質ポリウレタン防水コーティング加工を施したナイロン生地。防水性を高めると蒸気透湿性が低下するという問題を高レベルで解決した素材。2レイヤ地で20,000mm・透湿性6,000g/m2/24hrs、という高レベルの防水透湿性能を持っています。[出典:ナンガ]

イスカ 「パフ」モデル

厳冬期の国内山岳、ヒマラヤや極地遠征にも高い保湿性能をお求めの方に最適なモデル。

ゴア ウインドストッパー:寝袋やダウンパーカーに特化して、その性能向上を目的に開発された画期的な防寒素材です。[出典:イスカ]

ゴア ウインドストッパーとは、ゴアテックスで有名なゴア社の防風・高透湿素材です。マテリアルの性能は公式には公表されていませんが、防水性(耐水圧)もある程度持っています。

因みにパフモデルに関して、以前メーカーに問い合わせたところ、「ウインドストッパーでは長時間濡れていると水が徐々に染み込んでくるため、防水に関しては別途ゴアテックスのシュラフカバーを使用して下さい」と返答ありました。

 

以上、僅かではありますが防水透湿性素材がシュラフの表地として使われているものがありますが、その他大多数の製品がナイロンもしくはポリエステルの撥水加工生地が使用されています。

タイベックについては、撥水が弱く生地自体の耐久性がそれほど無い(摩耗に弱い)ため、シュラフ本体の生地には不適ですので、その他、防水透湿性素材がシュラフ本体の生地としてあまり使われない様々な理由を中心に以下に掲載しました。

防水透湿性素材がシュラフ本体の生地としてあまり使われない様々な理由

  • 重量が重くなる&ニーズが少ない
  • 完全防水ではない(縫い目の穴あり)
  • シュラフとしての製品寿命が短くなる可能性がある
  • メンテナンスが面倒

重量が重くなる&ニーズが少ない

ナイロンやポリエステル生地のより、防水透湿性素材を使ったほうが重量が重くなります。

防水透湿性素材には、

  • 表地(ナイロンorポリエステル)+防水透湿メンブレン+裏地の3層構造
  • 表地(ナイロンorポリエステル)+防水透湿メンブレン+極薄裏地の2.5層構造
  • 表地(ナイロンorポリエステル)+防水透湿メンブレンの2層構造

があり、単なるナイロンorポリエステル生地より単位面積あたりの重量は増えます。

ナンガの同程度のシュラフを比較すると、どの程度重量が増えるのかわかります。(約245gの重量増)

  • DOWN BAG 450(生地:40dnナイロンタフタ,ダウン量:450g,総重量:約890g)
  • AURORA 500(生地:表地:オーロラテックス、裏地:40dnナイロンタフタ,ダウン量:500g,総重量:約1,185g)

シュラフカバーは、違うページでも記載しているように、連泊や悪天候時には有効ですが、1泊登山の場合必要としない場合も多々あります。

シュラフカバーの長・短所(結露)、選び方、人気・おすすめ一覧

テント泊する登山者(ある程度体力のある方)は、なんらか仕事を持っていて土日休みなど1泊以上はとりにくい、山にそれほど時間を費やせない方々も多数います。シュラフ市場の需要として、そこまで必要としない防水透湿性素材よりも、軽量・コンパクトになるナイロン・ポリエステル生地で十分というのも考えられます。

完全防水ではない(縫い目の穴あり)

実は、防水透湿性素材を使ったシュラフは、完全防水ではありません。縫製で糸が通った穴が多数あるためです。

ダウンシュラフは、ダウンの偏りを防ぐため隔壁といってメッシュ生地で空間を分けていて、隔壁をつくるために表地に多数の縫い穴が発生します。

防水透湿性素材を表地に使っても、この縫い穴が発生するため、ここから水が侵入します。テント内での結露程度では縫い穴からの水の侵入はそれほど問題にならないと思いますが、雨風ある中でもタープの下で寝るなど、長時間にわたって寝袋に雨が直接かかる可能性が高い場合、縫い穴から水が入る可能性があります。

シュラフとしての製品寿命が短くなる可能性がある

シュラフは数ある登山装備の中でも、比較的寿命が長い装備です。

登山で一般的なダウンシュラフの素材の寿命を考えてみましょう。

使用頻度やメンテナンス程度によりますが、

  • ダウン 耐用年数10年以上(徐々に復元力(ロフト)は低下していきます)
  • ナイロン・ポリエステル生地 耐用年数5~10年程度

ぐらいは行けるのかなと思います。(20年前購入したダウンジャケットまだ使えます)

ダウンはとにかく水濡れ放置は厳禁で、ナイロン・ポリエステルは使用頻度で寿命が変わります。シュラフは基本的にテント内のある程度清潔で強い紫外線が直接当たらない環境で長時間使われるため、しっかりメンテナンスすれば10年程度は使えます。(ただし、ダウンの膨らむ力が徐々に弱まり保温力が低下していく、というのはあります)

それに比べて、防水透湿性素材は、短い寿命になります。防水透湿性素材といっても、ゴアテックスやその他ポリウレタン系防水透湿性素材など様々ですが、一般的に言われているのは

  • ポリウレタン系防水透湿性素材 耐用年数5年程度
  • ゴアテックス&ウインドストッパー 耐用年数5年以上

ポリウレタン系防水透湿性素材は、加水分解により5年ぐらいで水が染み込んでくるようになる可能性があります。ゴアテックスは「10年持った」という話を耳にするくらい、その他防水透湿性素材よりは高耐久です(そのため、多くのアウトドアメーカーのハイエンドモデルウェアではゴアテックスが使われています)。ゴアテックスと類似構造のウインドストッパーも同程度と思われます。

もし、シュラフ本体の表地に防水透湿性素材を使うと、シュラフの寿命≒防水透湿性素材の寿命となり、シュラフとしての寿命が短くなる可能性が高いです。(補足:防水透湿性素材の透湿性・耐水圧は初期値が公表されていますが、その後の使用や経年劣化で性能は徐々に下がっていきます)

因みに、ゴアテックス&ポリウレタン系防水透湿性素材の劣化は外見からはほとんど分かりません。レインウェアとして着用した場合は水が染み込んで衣服がベチャベチャになり、もう防水透湿性素材として機能していないことがわかりますが、シュラフの表地として使用した場合は裏側はダウン+生地あり、その染み込みを直接確認できないです。防水透湿膜(メンブレン)が劣化しても、その上のナイロンorポリエステル層は撥水機能があり、耐水圧が実用に耐えうるほど残っているのか、判断しにくいです。購入後まもなくであれば、大丈夫でしょうが、数年経過したき、どの程度の防水透湿性があるかわからない不透明な状態のものを、その性能を頼りにする環境下で使うのは、それなりのリスクを伴います。

因みにあるブログに、ナンガのオーロラテックスの劣化についての問い合わせ内容を公開されていましたのでご参考に。

⇒ https://ameblo.jp/nanataro-coleman/entry-12439535067.html

冬キャンプも盛んになり、シュラフ問題に直面するキャンパーさんも多いと思います。
イスカ、ナンガ、モンベルといった冬山登山にも対応したシュラフを販売しているメーカーの中、ダウンシュラフにカバー無しでもいける防水加工(ポリウレタン加工)のオーロラシリーズを販売するナンガ社に問い合わせてみました。
ポリウレタンと言ったらテントの経年劣化でベタついたり剥がれたり。そのポリウレタン加工に寿命がどれほどあるのか?が疑問にありましたので
↓↓↓↓↓↓↓↓
この度は弊社製品をご検討いただきありがとうございます。
お問い合わせいただいた内容について、下記のとおり回答させていただきます。

■問い合わせ内容:
シュラフ購入にあたり、シュラフカバー不要とのポリウレタン加工についてお伺いし
ます。
ダウンシュラフの場合、シュラフカバー必須の知識でした。シュラフカバー不要のポ
リウレタン加工でテントのポリウレタン劣化のように剥がれやベタつきなど起こりま
せんか?

■お問い合わせへの回答
オーロラテックスの防水加工(ポリウレタンコーティング)については、使用の環境
や年数によって劣化して剥がれる事も起こり得るかと存じます。
そのため弊社では修理を無料で行う「永久保証」というサービス行っております。
(ダウンシュラフのみ)
経年劣化による生地の損傷についても保証が適用されますのでご安心いただければと
思います。

下記リンクに永久保証についてのご案内がございますのでご確認いただければと思い
ます。
https://nanga.jp/knowledge/warranty/

以上。ご確認よろしくお願い致します。
今後も弊社製品をよろしくお願い致します。

 

メンテナンスが少し面倒

防水透湿性素材は水を通しませんから、シュラフを洗濯する時、洗濯水に浸りにくくなります。

ナイロンorポリエステルの表地のシュラフでも、生地の高い撥水力によりとても洗いにくい(なかなか洗濯水が入っていかない)のですが、防水透湿性素材なら更に入っていかないのが用意に想像されます。

選択後の脱水についてです。レインウェアを洗濯機で洗ったことはあるでしょうか。脱水したはずなのにレインウェアはベチャベチャだったのではないでしょうか。高い耐水圧を持った防水透湿性素材は、洗濯機の脱水程度では水を通過せず、残ります。

シュラフに防水透湿性素材を使うと、洗濯後のシュラフを脱水する時にレインウェアと同じような水が抜けない現象が、起こりえます。

内部に水が残った分だけ、乾燥機での乾燥時間が長くなると思われます。

 

まとめ

私もその昔、「シュラフ本体に防水透湿性素材が使われないのはなぜだろう」と疑問に思ったことがありますが、長年シュラフに関わる中でその理由がわかってきました。

同様の疑問を持っている方も多数いると思いますので、参考になれば幸いです。

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