イスカの寝袋・シュラフの主要なモデルの特徴の紹介、選び方のポイント、人気・売れ筋の口コミ・評価等をまとめました。
イスカ(ISUKA )は昭和47年(1972年)創業の日本の寝袋・シュラフの専門メーカーです。
イスカの特徴
日本の登山用品店で販売されている寝袋といえば、モンベル、イスカ、ナンガの日本メーカー3社が大半を占めています。
それぞれのメーカーで独自の思想を持って製造され、独特の個性があるのですが、イスカの寝袋に対する個人的な印象は、
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職人気質で、堅牢堅固
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です。(堅牢堅固:守りが非常に堅く、容易に破られたり動じたりしないさま。)
全体構造
イスカの寝袋は、身体を包み込み、適度な余裕をもたせた立体的な構造になっています。どの寝袋メーカーもある程度立体的な構造になっているのですが、イスカの寝袋はカチカチッと設計されてい、シルエットも綺麗です。
モンベルのようなストレッチ性による快適さはありませんが、体を優しく包み込む立体的な構造で、寝袋内の空間が適度に調整されているため、寝袋に入ってすぐに暖かく感じます。
また、寒さに敏感な足元部分には多めのダウンが封入され、適度なゆとりをもたせた逆台形形状になっています。広すぎず、狭すぎず、快適に寝れるように工夫されて、利用者から高い評価を得ています。
ショルダーウォーマーは秀逸
個人的にイスカの寝袋の素晴らしいと感じる点の一つが、ショルダーウォーマー(首元と肩を包むマフラー)のジッパー側の連結構造です。
寒さが厳しくなる、3シーズン用モデル、冬季モデルに採用されているショルダーウォーマーは、冷たい外気の侵入を防ぎ、体温で温めた寝袋内部の空気が、体の動きによって簡単に外に逃げてしまうのを防ぎます。
登山用のマミー型の寝袋は気密性が高く、首元に口が1つ空いた袋のようなもので、足を動かしたり、寝返りによって首元から空気が出入りします。体温と外気温の差が小さい夏などは、この僅かな空気の流入があまり気になりません。しかし、外気温が氷点下近くになってくると、時間をかけて温めた空気が外に逃げて氷点下の空気が寝袋内部に侵入し、温度が下がるのが体感できるようになります。体温と外気温の差がもっとも広がる厳冬期の雪山テント泊では、ショルダーウォーマーによる遮断能力が暖かい快適睡眠を維持するために重要になってきます。
イスカの寝袋は、ショルダーウォーマーのジッパー側にある、ベルクロによる連結が強く、寝袋内で体をうごかしても不意に外れることがない構造になっています。また、ベルクロのフック側はそのまま露出していると徐々に糸ゴミ等を噛み込んで接着力が劣化するのですが、イスカのは未使用時は閉じて露出しない作りのため、劣化しにくい構造になっています。
ドローコードにゴム紐を利用しているのも、使い勝手が良いです。身体へのフィット感が良く、多少の体の動き(例えば片腕を少し出すなど)でも、ゴムの伸縮が吸収してくれるため、伸びない紐に起こりがちな毎度のドローコードの締め直しも少なくなります。
ジッパーの種類と構造
ジャムストッパーという技術で、ジッパーが寝袋の生地を噛み込むのを防止しています。
また、他メーカーではロック(引手をつまむ方法でのみ開閉)するジッパーを採用していますが、イスカはロックなしのジッパーを採用しています。
そのため、ジッパーの両端を開くだけで、ジッパーがスライドしていきます。
緊急時(雪崩など)に速やかに寝袋から脱出できるようにと、このジッパーが採用されているようです。
首元までジッパーを締めれば、ベルクロで勝手に開かないようにできます。
ただし、暑くて腰あたりまでジッパーを開けた場合、身体を動かした拍子にジッパーがどんどん開いてしまいますので、ジッパーの開閉具合による温度調節は難しいです。
丈夫な収納袋
主要モデルのAirシリーズ等の収納袋には、CORDURA(コーデュラ)という、引き裂き・破裂・摩耗強度に優れた高耐久生地を採用しています。
寝袋を収納した時に、かなり圧縮して収納するため、収納袋に高い圧力がかかります。さらに、コンプレッションして圧縮すれば、より高い圧力が袋にかかりますが、イスカの収納袋は強靭な作りで、過酷な使用にも耐える構造になっています。
今までにいくつかの寝袋メーカーの収納袋を見てきましたが、モンベル、イスカの2社は、それぞれ方向性は異なりますが完成度が高いと感じます。
モンベルの収納袋はストレッチ性があるため、収納時の途中での詰まりが発生しにくく初心者や力の弱い女性や子供でも収納しやすく、収納後の形状も多少変えられます。イスカは収納のある程度の力と慣れは求められますが、生地が伸びない分コンプレッションしたときに横に力が逃げず、小さく収納しやすいです。
ラインアップと選び方
イスカの寝袋のランナップを見ると、
- エア
- エアSL
- パフ
- ピルグリム
- ダウンプラス
- アルファライト
- ベーシック
の7モデルに分かれています。
用途別に見ると、
軽量・コンパクト(高級ダウンと軽量生地)で価格も高く、長時間背負って持ち運ぶ登山やバックパッカー向けモデル
- エア
- エアSL
- パフ
- ピルグリム
価格が手頃で、車で持ち運ぶキャンプ、車中泊、防災向けモデル
- ダウンプラス
- アルファライト
- ベーシック
にざっくり2分することができます。
もちろん、登山向けモデルを車中泊に使用することができますが、車中泊にはそこまでの性能は必要としません。キャンプ用のモデルを登山に使うことができますが、保温力に対して重量と収納サイズが大きくザックに他の荷物が入らなくなってくるため、そういう選択をする方はあまりいないと思われます。
予備知識として、イスカの寝袋のネーミングは、封入しているダウン量を多用しています。例えば、エア130Xであれば、ダウンを130g、エア150Xであればダウンを150g使用しています。そのため製品名の数字を見れば、だいたいの保温力が想像できるようになります。
それでは各モデルについて、詳しく見ていきたいと思います。
エア(Air) モデル
エアモデルは、イスカの各モデルの中でも最軽量、高品質、軽量な最高品質モデルです。そのため、価格も最も高くなります。
特徴
中綿には800FPのグースダウンを使用しています。
生地には優れた引き裂き強度を持ち、耐摩耗性、耐熱性を持ち、15×30デニールの「ナイロン66」を採用。さらに強力な超撥水加工を施すことにより、テント内の結露や壁面への接触による濡れを防いでいます。
保温力や構造の違いで8種類あります。
重量や収納サイズなど細かな性能の違いを気にする登山者向けのモデルのため、需要の多い保温力のエア180X、280X、450X、630X、810Xには、レギュラーサイズだけでなく、レギュラーよりも全長が10cm短い小柄な男性、女性、子供向けのショートサイズも用意されています。小柄な方がレギュラーサイズを使うと、頭の位置は呼吸のためフード位置やショルダーウォーマーの位置で決まってしまうため、足元がガバガバと余ってしまい、あたたまるまで時間がかかります。メーカーでは、身長が165cm以下の方にはショートモデルを推奨しています。
人気・売れ筋と評判・口コミ
私はイスカの在庫管理したことないので詳細はわかりませんが、経験上、日本国内では、夏山用、3シーズン用、雪山用の3つが売れ筋と思います。下位モデルのエアSLのラインアップを見てもそれがわかります。
夏山用、3シーズン用、雪山用の中でも、最も需要が多いのは・・・3シーズン用です。
登山用として、夏山用を購入しても、人気の日本アルプス等の2000~3000m級のテント泊では、7、8月ぐらいしか使えません。(6月は梅雨でほとんどの方は登山せず)。9月中旬に入ると2000m級の山では一面凍るような氷点下になることもあります。そうなると、夏用を買っても保温力が足りず、寒いのでまた数万円だしてもう少し保温力の高い3シーズン用を買う・・・というのがもったいないため、これからテント泊入門者の多くの方が、3シーズン用を選択します。
3シーズン用として人気で定番 エア450X(レギュラーモデル・ショートモデル)
氷点下対応した3シーズン用の寝袋を購入すれば、残雪の6月ぐらいから紅葉真っ盛りの10月ぐらいまで対応できます(とはいっても両端は防寒着等で保温力の調整が必要です)。
amazonのカスタマーレビューもほぼ五つ星と非常に評価が高いです。
北アルプス8月2500m OK!(2015/8/15):晴天&無風&シングルウォールテント。快適に、眠れました。胸元が、少し冷たく感じましたが、ショルダーウォーマーを装着(開口部をベロクロ止めしてドローコードを引く) すれば、快適になりました。天気予報の気温情報から、Air250xのコンパクトさにひかれましたが、山上のリスクを考慮すれば、480xがベストセレクトとなります。補足, 他社コンプレッションバック(15cm x 35cm)に詰めることはできませんでした。付属のスタッフバッグが、ジャストサイズです。暖かい(2015/7/18):残雪期で使用したが暖かくて問題なし。夏場は暑いかもしれないので夏用に別のが欲しい。サイズに関してですが(2013/1/11):まず、自分は身長164cm、小太り体型です。長袖シャツとタイツ姿で入ってみたところ、足元にはかなりの余裕が感じられ、上半身も窮屈な感じはありませんでした。商品タグには165cm以下の人に最適と書いてありましたが本当だと思います。身体を真っ直ぐにして仰向けに寝ると長さがぴったりでした。
夏用モデルは、保温力と形状の異なったエア130X、150X、180X、280Xがあります。経験上、登山用で夏用モデルを選ぶ方は、既に3シーズン用を持っていて、より軽量コンパクトにしたい方、「私は夏しか山に登らない」と登山スタイルが決まっている方が多いです。また、夏のバイクツーリング、自転車旅行しながらのキャンプなど、積載力の限られる用途で選ぶ方も多いです。
フードなし、ありの2タイプの形状の寝袋が用意されています。
最軽量モデルのため、サイドのジッパーがありません。
ジッパー開閉による温度調節はできません。冬期のインナーシュラフとしても利用可。とにかく軽量化したい方向け。
沢登り、サイクリスト、海外旅行向け。
保温力はエア130Xと一緒です。ダウン量が+20gですが、重量が+60gになってます。ジッパーの追加で40g重くなることがわかります。
個人的には、よほど軽量化にこだわらないのなら、暑い夏こそジッパーによる調節ができる方が便利かと思います。
エア 180X(参考使用温度8℃,重量430g,ショートモデルあり)
エア150Xにフードが付いたものです。夏の中級登山のテント泊向け。
エア 280X(参考使用温度2℃,重量550g,フードあり,ショートモデルあり)
夏のアルプス等の3000mクラス、春秋の中級登山向けです。
amazonで利用者の口コミもある程度掲載されているため、それを参考に選ばれると良いでしょう。
雪山用は、そもそも雪山登山者自体が少なく、その中でもテント泊までする人は限られています。
エア630EX(参考使用温度-15℃,重量1060g,レギュラーモデル・ショートモデル)
春山といわれる残雪期(3月、4月、5月)登山であれば、エア630EXが目安です。独自のショルダーウォーマーを採用しています。
エア810EX(参考使用温度-25℃,重量1320g,レギュラーモデル・ショートモデル)
厳冬期(12月、1月、2月)登山であれば、エア810EX ぐらいの保温力を選ぶと良いでしょう。
エア1000EXは、ヒマラヤや極地に対応したモデルになります。
☆現在、他のモデルについての記事も作成中で、近日公開予定です。
著者PROFILE
2009年末から寝袋と関連装備に特化したこのサイトを開設。いつの間にか運営10年を超える老舗サイトに。ファミリーキャンプから無積雪期登山、厳冬期登山、バイクのキャンプツーリングに自転車旅行、車中泊など、アウトドアを幅広く経験。寝袋の宿泊数は100泊以上~500泊未満。狭い業界ですが、まだまだ知らないこと沢山あり、日々勉強中です☆
谷川岳の雪洞で宿泊
今まで様々な状況下で寝てきましたが、100泊以上経験してわかったのが、『保温力に余裕のある寝袋を用意すること』です。
雪山テントは換気にも注意(テントが埋まると酸欠に)
雨風や断熱材で守られた家と違い、アウトドアフィールドでの宿泊は天候や外気温の変化を大きく受けます。事前の天気予報より、当日の気温が-5℃程度低かった、などは日常茶飯事です。また、多くのキャンプ場は、最寄りの市街地よりも標高が高い事が多く、天気予報で知ることのできる最寄りの市街地の最低気温よりも気温が低いことが多いです。
自然の中で睡眠をとる体験は素晴らしいですが、寝袋の保温力が足りないと真夜中に早朝に目が冷めます。これは外気温は日の出前の早朝4~5時あたりが最も気温が下がり、また体温も下がっているためです。一度このタイミングで目が冷めてしまうと、身体が芯から冷え切っているため、ここからなかなか眠ることができません。そして、寝不足の状態になります。
楽しいアウトドア体験するはずだったのが、思わぬ寝不足でボーーっとしてしまうのは、もったいないです(しかも連泊でこれが続くとかなりキツイです)。少し汗ばむくらいの保温力の寝袋を選んで、ぜひ素敵なアウトドア体験を満喫してください☆
寝袋と(キャンプ用の)マットは2つで1つです。
キャンプ用のマットの役割は主に『断熱』と『寝心地を快適にする』の2つです。
『断熱』について・・・アウトドア用の寝袋の中綿として、化繊やダウンが使われていますため、小さく圧縮して収納し持ち運ぶ事ができます。寝袋を収納袋から出して広げると、徐々に中綿が膨らみますが、人間が寝袋に入ったときに身体と地面に挟まれた中綿はぺちゃんこに潰れるため、断熱力がほとんどなくなります。大概の地面は冷たく、身体の重みで密着した部分から体温が逃げ(ヒートロス、熱損失)て、底冷えします。この現象は、体温と地熱の温度差が大きい春・秋・冬ほど熱損失量も増えます。
これを防ぐため、キャンプ用のマットを使います。キャンプ用のマット体重がかかっても断熱効果が得られるよう設計されています。
『寝心地を快適にする』について・・・最近、畳の上で寝たことはありますか?痛くて寝れなかったという方もいるのではないでしょうか。昨今の快適用品の普及により、強い刺激に敏感になっています。よほどふかふかの芝生以外、寝袋のみで寝ると地面の凸凹や石があたって痛くてまともに寝れません。その衝撃を吸収する役割としてキャンプ用マットが使われます。キャンプ用マットは大きくクローズドセルマット(銀マットなど)とエア注入式の2種類あり、寝心地はエア注入式の方が良いです。
テントの中で寝袋の下に敷くマットは、様々な用途に合わせて、多数の商品があります。皆さんの用途にあった、快適に寝れるマットが見つかりますように☆
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