<2024年更新!>寝袋(シュラフ)内でハクキンカイロと改良ZIPPOカイロを使用した時、どのような温度変化を示すのか、実験してみました。
著者PROFILE
経歴:大手アウトドアショップで寝袋・マットのコーナーを中心に約4年間の接客経験に加え、独自の調査・研究を重ね、寝袋・マットの情報を中心としたこのサイトを運営して10年以上。無積雪登山・雪山登山・クライミング・アイスクライミング・自転車旅行・車中泊旅行・ファミリーキャンプなど幅広くアウトドアを経験。(詳細プロフィール) 名前:Masaki T
実験の目的
ハクキンカイロは寒く冷え込む時期に様々なアウトドアシーンで使われる暖房器具です。使い捨てカイロほど手軽ではないですが”熱量(カロリー)は使い捨てカイロの約13倍”と言われてます。
発熱量が大きいだけでなく、ベンジンを注油し“繰り返し使用”するため、使用後にゴミが出ないのが良いです。
発熱の原理の詳細は以下になります。
ハクキンカイロは、気化したベンジン(炭化水素・CmHn)が火口のプラチナ触媒で酸素(O2)と低温燃焼(130℃~350℃)する熱を活用した暖房器具になります。炭酸ガス(CO2)と水(H2O)に完全酸化分解します。水は水蒸気となって空気中に放出されます。
化学反応式では
CmHn + (m+n/4)O2 → mCO2 + (n/2)H2O
となるようです。
前置きが長くなりましたが、ハクキンカイロの燃焼には空気中の酸素が必要です。
今回の実験は、酸素が潤沢とは言えない空間である寝袋の中で、熱量(カロリー)は使い捨てカイロの約13倍と言われるハクキンカイロが通常通りに発熱(燃焼)するのか?を検証するための実験です。
※この実験は、寝袋内でのハクキンカイロの使用の安全を保証するものではありません。
実験に使用した物
ZIPPOカイロ(改),ハクキンカイロ
左)ZIPPOカイロ ハンディウォーマー改 右)ハクキンカイロ
ZIPPOカイロ ハンディウォーマーは、おそらく2010年前後に購入したものです。
クライマー(岩壁を登り)の方から「寒い時期のクライミングの後に手を暖めるのに良い」と聞いて、なるほどどんなものかと思って購入しました。その後ほとんど使わずタンスの肥やしになっていました。
その後、2018年に写真右のハクキンカイロを購入。使ってみるとZIPPOよりずっと温かいことがわかりました。一体どこが違うのか、調べるとZIPPOカイロ ハンディウォーマーと火口の作りが異なり、それが発熱の違いとわかりました。ハクキンカイロ純正の換え用火口を購入し、ZIPPOカイロに付け替えました。
左下)ハクキンカイロ火口 右上)ZIPPOカイロ火口
実験した結果、経年劣化の影響もあると思いますがが、明らかにハクキンカイロ火口の方が赤くなり発熱します。
今回の実験では、
- ハクキンカイロ(スタンダード)
- ハクキンカイロ火口に付け替えたZIPPOカイロ ハンディウォーマー
を使用します。
ZIPPOオイル
ハクキンカイロ用のベンジンは数種類ありますが、その中でも最も入手しやすいのがZIPPOオイルです。
ZIPPOオイルは、他のカイロ用ベンジンに比べても価格は高いが、使用時のベンジン臭が少なく(それでも実際使うとある程度のベンジン臭いがある)、燃費も良いとあるサイト(2019年3月31日閉鎖されてしまった)に記載されていました。
ZIPPOオイルはライター用オイルとして、コンビニでも入手可能(近くのホームセンター安く購入できました)のため、今回の実験ではZIPPOオイルを使いました。
RC-5 USB温度データーロガー
- 測定温度範囲:-30°C~+70°C;
- 温度最小表示:0.1°C
- 記録容量:32000ポイント(MAX)
- 測定精度:±0.5 °C(-20℃~+40℃); ほか、+1 ℃
- 記録時間間隔:10秒~24時間
- 防水:IP67
- センサー:内部NTC熱抵抗
- 電源:リチウム電池(CR2032)×1個(付属)
- サイズ:84×34×14mm
- 重量:30g
RC-5 USB温度データーロガーは、温度計で、専用ソフトで指定した時間間隔の温度を32000ポイントまで内部に記録することができる温度測定器です。測定温度範囲:-30°C~+70°Cのため、沸騰した直後のお湯ではなく、沸騰する手前のお湯をナルゲンボトルに入れました。
モンベル U.L.スーパースパイラルダウンハガー#2(現在ダウンハガー800 #2)
私が購入した当時は、U.L.スーパースパイラルダウンハガー#2という名前だった、800FPグースダウンを使用したモンベルの山岳用の寝袋です。その後一部リニューアル&名前変更で、その後ダウンハガー800 #2となり、2020年付近でランナップが大幅にリニューアルされ廃盤に。
当時のカタログで快適睡眠温度が-4℃、3.5シーズン対応の保温力があります。
ただ、購入して数年経過&何度も使用してきているため、保温力は多少低下していると思います。
実験の手順
以下、実験の手順です。
2つのカイロを用意。
ハクキンカイロにZIPPOオイルを入れる
計量カップで12時間分入れる
ZIPPOオイルを脱脂綿が詰まったタンクに入れる
火口をライターであぶる。これで触媒燃焼が始まる
まもなくハクキンカイロの触媒燃焼で火口が赤くなる
すぐに熱くて本体を手で持てなくなるので、フリースケースに入れる
ZIPPOカイロハンディウォーマー(火口はハクキンカイロ製)もZIPPOオイル12時間分を充填し、着火。
フリースに入れたカイロの上にRC-5温度ロガーをのせ、靴下に入れる
一つ(ZIPPOカイロ改)は、ハクキンカイロを寝袋の中へ
ハクキンカイロは隣のマットの上に置く。
その後そのまま放置し、温度変化を計測。
ZIPPO改とハクキンカイロは火口は同じとはいえ別の製品です。そこで、以上の手順を、入れ替えて測定しました。
- 1回目)寝袋の中にZIPPO改。マットの上にハクキンカイロ。
- 2回目)寝袋の中にハクキンカイロ。マットの上にZIPPO改。
測定結果まとめ
寝袋にハクキンカイロとZIPPOカイロ改を入れた時の温度変化
ZIPPO改、ハクキンカイロをRC-5温度ロガーと一緒に靴下の中へ入れ、それぞれをマットの上と寝袋の中に入れたときの温度変化を測定した結果をまとめたグラフです。
RC-5温度ロガー自体がある程度の厚みがあり、カイロの熱の伝わりがRC-5温度ロガーの片側からにはなり、厳格な測定環境とはいえませんが、ある程度の参考にはなると思います。寝袋の中に入れた方が熱がこもりやすいため、よりRC-5温度ロガー全体に熱を伝えやすい環境といえます。
また、RC-5温度ロガーの測定温度範囲は-30°C~+70°Cとなっているため、70℃以上の温度は製品保証外の測定温度になります。寝袋の中(ハクキンカイロ)の9時間後の温度は実際にはRC-5の設定上限値89.9℃を超えNCとなりましたが、それだとグラフが見にくいので9時間5分の測定値の温度89.9℃の値を入れています。
考察
測定装置や環境ともに完全とはいえませんが、今回の測定結果より、ハクキンカイロとZIPPOカイロ改ともに、マットの上に置いたときより寝袋の中に入れた方が温度が上昇しています。寝袋に入れると徐々に温度が上昇しピークを迎えて急激に温度が下降していく傾向は同じです。マットに置いたときより早く温度低下するのは、燃料が早く切れたためと思われます。
また、今回の実験目的である、酸素が潤沢とは言えない空間である寝袋の中でハクキンカイロが通常通りに発熱(燃焼)するのか?については、問題なく燃焼する、それどころかある程度空気があり熱がこもりやすい環境ではより高温になる、と言えるでしょう。
補足ですが、寝袋の足元にカイロを入れた後、そのまま触らず放置しています。寝袋の重みで中の空間はほぼぺちゃんこの環境下での実験しています。
発熱に必要な酸素量はそれほど多くないのかもしれません。
また、燃料であるZIPPOオイルをしっかり12時間分測定して、入れていますがより高温になったものほど(より触媒燃焼したものほど)早くに温度が下がって(燃料切れ)を起こしています。
そして、ZIPPOの火口をハクキンカイロ用に換えたものと、ハクキンカイロの違いを見ると、全体的にハクキンカイロの方が温度が高くなっています。
この違いは、実際に使っていて以前から感じていたことですが、測定結果をみるとやはりそうだったか、という感じです。
この温度の違いは、火口の個体差なのか、蓋の通気口の形状(通気孔の大きさ、位置などによって、カイロの温度と持続時間が調節されている。ZIPPOは○型、ハクキンカイロは孔雀の型)の違いなのか、フリースケースの違い(ほとんど差を感じませんが)なのか、その他なのかわかりません。
ただ、なんとなくZIPPOカイロとハクキンカイロのどちらかを買うか迷ったら、暖かさを求めるならハクキンカイロ純正を選んだ方が良いかもしれません。(見た目と名前はZIPPOの方がカッコいいですが…)
ZIPPOカイロは私が購入した時と仕様が変更されているかもしれませんので、最近の購入者レビューを参考にしてみてください。
著者PROFILE
2009年末から寝袋と関連装備に特化したこのサイトを開設。いつの間にか運営10年を超える老舗サイトに。ファミリーキャンプから無積雪期登山、厳冬期登山、バイクのキャンプツーリングに自転車旅行、車中泊など、アウトドアを幅広く経験。寝袋の宿泊数は100泊以上~500泊未満。狭い業界ですが、まだまだ知らないこと沢山あり、日々勉強中です☆
谷川岳の雪洞で宿泊
今まで様々な状況下で寝てきましたが、100泊以上経験してわかったのが、『保温力に余裕のある寝袋を用意すること』です。
雪山テントは換気にも注意(テントが埋まると酸欠に)
雨風や断熱材で守られた家と違い、アウトドアフィールドでの宿泊は天候や外気温の変化を大きく受けます。事前の天気予報より、当日の気温が-5℃程度低かった、などは日常茶飯事です。また、多くのキャンプ場は、最寄りの市街地よりも標高が高い事が多く、天気予報で知ることのできる最寄りの市街地の最低気温よりも気温が低いことが多いです。
自然の中で睡眠をとる体験は素晴らしいですが、寝袋の保温力が足りないと真夜中に早朝に目が冷めます。これは外気温は日の出前の早朝4~5時あたりが最も気温が下がり、また体温も下がっているためです。一度このタイミングで目が冷めてしまうと、身体が芯から冷え切っているため、ここからなかなか眠ることができません。そして、寝不足の状態になります。
楽しいアウトドア体験するはずだったのが、思わぬ寝不足でボーーっとしてしまうのは、もったいないです(しかも連泊でこれが続くとかなりキツイです)。少し汗ばむくらいの保温力の寝袋を選んで、ぜひ素敵なアウトドア体験を満喫してください☆
寝袋と(キャンプ用の)マットは2つで1つです。
キャンプ用のマットの役割は主に『断熱』と『寝心地を快適にする』の2つです。
『断熱』について・・・アウトドア用の寝袋の中綿として、化繊やダウンが使われていますため、小さく圧縮して収納し持ち運ぶ事ができます。寝袋を収納袋から出して広げると、徐々に中綿が膨らみますが、人間が寝袋に入ったときに身体と地面に挟まれた中綿はぺちゃんこに潰れるため、断熱力がほとんどなくなります。大概の地面は冷たく、身体の重みで密着した部分から体温が逃げ(ヒートロス、熱損失)て、底冷えします。この現象は、体温と地熱の温度差が大きい春・秋・冬ほど熱損失量も増えます。
これを防ぐため、キャンプ用のマットを使います。キャンプ用のマット体重がかかっても断熱効果が得られるよう設計されています。
『寝心地を快適にする』について・・・最近、畳の上で寝たことはありますか?痛くて寝れなかったという方もいるのではないでしょうか。昨今の快適用品の普及により、強い刺激に敏感になっています。よほどふかふかの芝生以外、寝袋のみで寝ると地面の凸凹や石があたって痛くてまともに寝れません。その衝撃を吸収する役割としてキャンプ用マットが使われます。キャンプ用マットは大きくクローズドセルマット(銀マットなど)とエア注入式の2種類あり、寝心地はエア注入式の方が良いです。
テントの中で寝袋の下に敷くマットは、様々な用途に合わせて、多数の商品があります。皆さんの用途にあった、快適に寝れるマットが見つかりますように☆
ハクキンカイロはベンジン(炭化水素・CmHn)を触媒燃焼させて、その燃焼熱をカイロの熱として利用しています。
当社のプラチナ触媒はガラス繊維にプラチナ(Pt)の微粒子を独自の方法で担持させたものです。微粒子のプラチナ(Pt)は、自己の体積の100倍以上の酸素を吸着させる能力があり、しかも吸着した酸素は極めて反応しやすい状態になって、すぐれた酸化活性を発揮します。
触媒を用いないで燃焼させると25ccのベンジン(炭化水素・CmHn)は、数分で燃え尽きてしまいますが、プラチナ触媒を用いると、24時間暖かさを持続することができます。
また、触媒を用いないと700~800℃という高温が必要ですが、プラチナ触媒を用いると、130℃~350℃という低温で炭酸ガス(CO2)と水(H2O)に完全酸化分解させることができます。
さらに低温での燃焼ですからNOX(窒素酸化物)の発生の心配もありません。[出典:ハクキンカイロ]