ドイツが誇る、1世紀以上の歴史を持つ老舗バックパックブランド、ドイター。その長い歴史の中で培われた技術と経験、そして山への深い愛情が結晶したかのような存在が、ここに紹介する「フューチュラ」シリーズです。このシリーズの最大の特徴である、背中の蒸れを劇的に軽減する画期的なシステムは、一度体験した多くの登山愛好家を虜にしてきました。
しかし、その人気ゆえにラインナップも豊富です。いざ手に取ろうとすると「21SL」、「24SL」、「30SL」といった、似ているようで異なるモデルたちが、静かにその個性を主張しています。この違いが分からず、最適な一つを選ぶのに悩んでしまう方も少なくないでしょう。

この記事では、経験豊富なアウトドア専門家の視点から、それぞれのモデルが持つ個性と役割を、丁寧に紐解いていきます。あなたのアウトドアスタイルに完璧に寄り添う、最高のパートナーを見つける旅へ、ご案内できれば幸いです。
記事のポイント
- フューチュラシリーズに共通する、卓越した背面システムの秘密
- 「標準モデル」と「SLモデル」が、なぜ異なるフィット感を生むのか
- 具体的なパッキング例を交え、容量ごとの最適な用途をリアルに提案
- 詳細な比較表やFAQで、あらゆる疑問に答えます
著者PROFILE


経歴:大手アウトドアショップで寝袋・マットのコーナーを中心に約4年間の接客経験に加え、独自の調査・研究を重ね、アウトドア情報を発信し15年以上。無積雪登山・雪山登山・クライミング・アイスクライミング・自転車旅行・車中泊旅行・ファミリーキャンプなど幅広くアウトドアを経験。(詳細プロフィール) 名前:Masaki T
ドイター フューチュラシリーズに共通する、揺るぎない魅力と哲学


フューチュラ 21SL


フューチュラ 25SL


フューチュラ 24SL


フューチュラ 30SL
まずはじめに、今回ご紹介するすべてのモデルに共通している、フューチュラシリーズについて深く掘り下げてみましょう。それは、単なる機能性を超えた、背負う人に寄り添うテクノロジーと、自然と共に歩むブランドとしての哲学に裏打ちされています。
まるで背負っていないかのような快適性「エアコンフォートセンシックシステム」




フューチュラシリーズの魂とも言えるのが、この「エアコンフォートセンシック」背面システムです。これは、軽量で柔軟性に富んだスチール製のラウンドフレームでバックパックの背面をアーチ状に保ち、そこに高強度のメッシュパネルをピンと張ることで、背中とバックパック本体との間に確実な空間を生み出す構造になっています。







他メーカーのザックでも同様の構造のものがありますが、ドイターのフォーチュラは、背中に乗るメッシュパネルとバックパック本体との間が広いです。かなり広いため通気しやすく、背中が蒸れにくい構造になっています。





また、背面の構造も上下左右から空気が流れる構造になっています。
他メーカー製の類似構造だと、下からの通気はあんまり考慮されていなかったりするのですが、フューチュラは下からも通気するようになっています。



この空間を風が通り抜けることで、発汗による背中の不快な蒸れを最大で25%も抑制するという驚異的な通気性を実現しています。夏の暑い日や、急な登りで汗をかいた時でも、背中はさらりとしており、体力の消耗を抑え、体温調整を容易にしてくれるのです。
しかし、このシステムの真価は通気性だけにとどまりません。注目すべきは、アクティブフィット・ショルダーストラップと、可動式のバリフレックス・ヒップフィンです。ショルダーストラップは、使う人の肩幅や体型に自然に馴染むように設計されており、一点に荷重が集中するのを防ぎます。


そして、腰で荷重の大部分を支えるヒップフィンは、体の動きに滑らかに追従することで、荷物の揺れを最小限に抑え、抜群の安定感をもたらします。これらが三位一体となって機能することで、まるでバックパックが体の一部になったかのような一体感が生まれ、長時間の山行でも疲れにくい、魔法のような背負い心地を提供してくれるのです。
地球への愛情も忘れない、サステナブルなものづくりという名の誠実さ
ドイターは、美しい自然の中で使う道具を作るブランドとして、そのフィールドを守ることに強い責任感を持っています。その姿勢の表れの一つが、有害なフッ素化合物(PFC)を使用しない、環境に配慮した撥水・防汚加工です。これは自然界で分解されにくいPFCが環境へ与える負荷を考慮した、未来への投資ともいえる選択です。
さらに、製品の主要な素材には、ペットボトルなどを原料としたリサイクル素材を50%以上使用しています。また、ドイターは公正な労働条件を推進する独立機関「フェア・ウェア・ファンデーション(FWF)」のリーダーステータスを長年獲得しており、製品が倫理的な環境で作られていることの証明にもなっています。私たちが手にする一つのバックパックが、自然環境と、それを作る人々にも配慮されて生まれてきたという事実は、その道具への愛着を一層深いものにしてくれるでしょう。
ドイター フューチュラ21 SL/24/25 SL/30 SLの具体的な違いとは?
それでは、いよいよ本題である各モデルの違いについて、スペック、フィット感、そして最適な用途という3つの観点から、詳細に分析していきましょう。
まずは基本スペックを比較表でチェック!
百聞は一見に如かず。まずはそれぞれの基本スペックを、より詳細な項目を加えた比較表でご覧ください。数字をじっくりと見比べることで、各モデルの個性や得意なフィールドがより鮮明に浮かび上がってくるはずです。
モデル名 | 容量 | 重量 | サイズ(高さ×幅×奥行) | 推奨用途 |
---|---|---|---|---|
フューチュラ 21 | 21L | 約1200g | 約50 × 28 × 18 cm | 日帰りハイク |
フューチュラ 24 | 24L | 約1250g | 約52 × 28 × 20 cm | 軽登山、通勤登山 |
フューチュラ 25 | 25L | 約1330g | 約55 × 28 × 20 cm | 日帰りトレッキング |
フューチュラ 30SL | 30L | 約1400g | 約58 × 28 × 24 cm | ロングハイク |
フィット感の鍵を握る「SLモデル」と「標準モデル」の構造的な違い


比較表の「SL」という文字が、フィット感を決定づける最も重要な要素です。これは単に小さいモデルというわけではなく、設計思想そのものが異なります。



SLモデル(スリムライン)の緻密な設計 「SLモデル」は、平均的な女性の体型データを基に、人間工学に基づいて設計されています。しかし、その恩恵は女性だけに留まりません。
- 短い背面長: SLモデルは、標準モデルに比べて背面長(バックパックの上下の長さ)が短く設定されています。これにより、小柄な方でもバックパックの底が腰骨の下に下がってしまうことなく、ヒップフィンを骨盤の正しい位置で締めることができます。これが荷重を適切に腰へ分散させるための第一歩です。
- S字型にカーブした細身のショルダーストラップ: ストラップは、幅が狭く、縁が柔らかいソフトエッジ加工が施されています。さらに、胸の膨らみを避けるようにS字のカーブが強めにつけられており、脇の下や胸部への圧迫感を軽減します。なで肩の方でもストラップがずり落ちにくいという利点もあります。
- 円錐形状のヒップフィン: 女性の骨盤は男性に比べて傾斜しているため、それに合わせてヒップフィンが斜め上方向にフィットするように、円錐形の立体的なデザインになっています。これにより、骨盤を優しく、しかし確実にホールドし、バックパックの荷重を効率よく下半身に伝えます。
標準モデルは誰のため? 一方、SLのつかない「フューチュラ 23/26/27/32」は、標準的な体型の男性に合わせて設計されています。



標準モデル(メンズ用)はサイズが一回り大きいため、同じ形でもSLモデルより容量が+2L大きいです。
標準モデル:23/26/27/32
SLモデル:21SL/24SL/25SL/30SL
SLモデルに比べて背面長が長く、ショルダーストラップの幅も広いため、肩幅がしっかりしている方や、高身長の方が背負った時に、より安定したフィット感が得られます。



基本的にSLモデルは女性用、標準モデルは男性用に設計されています。パット見はわからなくても細かな違いがあります。
迷った際は、店舗で実際に荷物を入れた状態で背負い比べ、専門のスタッフに相談することをお勧めします。
用途で選ぶ最適な容量 – あなたの冒険に寄り添うのは?
それぞれのモデルが、どのような冒険のステージでその真価を発揮するのか、具体的なシーンを想像しながら見ていきましょう。
フューチュラ 21 SL:軽快さを楽しむデイハイクの最高の相棒












シリーズで最もコンパクトなこのモデルは、「軽快さ」が最大の魅力です。高尾山や筑波山、近郊の里山など、アプローチが良く、装備も比較的少なくて済む日帰りハイキングに最適です。
<パッキング例> レインウェア上下、500mlペットボトル2本、行動食(おにぎり、エナジーバー)、ヘッドライト、小型の救急セット、タオル、地図。これらを収納しても、まだ少し余裕があるでしょう。その軽さは、鳥の声や木々のささやきを、より深く楽しむ心の余裕を生んでくれると思います。
フューチュラ 24:日帰り登山の新たなスタンダードモデル












「日帰り登山用のザックで迷ったら、まずこれを試してみて」と自信を持ってお勧めできるのが、このフューチュラ24です。21Lでは少し心許ない、標高が少し高い山域での活動に安心感をもたらしてくれます。
<パッキング例> 21SLの装備に加え、山頂で温かいコーヒーを飲むための小型クッカーとバーナー、冷え込んだ時用の薄手フリースやダウンジャケット、少し多めの食料。これらを追加しても無理なく収まります。特にフロント部分に設けられた大きなストレッチポケットは秀逸で、脱いだ上着や濡れたレインウェアを一時的に挟んでおくのに非常に便利です。これから登山を本格的に始めたいという方の、最初の本格的なザックとしても最適な選択肢の一つです。
フューチュラ 25 SL:プラスαの安心感を提供する多才な万能選手








24Lの標準モデルとほぼ同じ容量でありながら、SLフィットを採用したのがこの25SLです。SLフィットが体に合う方にとって、これほど使い勝手の良いモデルはないかもしれません。日帰り登山はもちろんのこと、例えば一眼レフカメラと交換レンズを持ってのフォトハイキングや、スケッチブックを持っての山歩きなど、趣味の道具をプラスで持ち運びたい時に、その「プラス1L」の余裕が心強い味方になります。



また、その洗練されたデザインは山だけでなく、1泊2日程度の旅行や、荷物が多めになりがちなタウンユースでも自然に溶け込みます。
フューチュラ 30 SL:小屋泊や長期旅行までも見据えた頼れる存在












30Lという容量は、あなたのアウトドアの可能性を格段に広げてくれます。夏の北アルプスや八ヶ岳での山小屋泊なら、この容量で十分に対応可能です。
<パッキング例> 日帰り装備一式に加え、山小屋で過ごすための着替え一式、洗面用具、サンダル、行動日数が延びる分の食料。これらをしっかりパッキングできます。また、装備が多くなりがちな雪の残る春先の山行や、防寒着がかさばる冬の低山ハイクでも頼りになります。旅好きの方なら、数日間の海外旅行のメインバッグとしても活躍してくれるでしょう。より遠くへ、より長く。そんな冒険心に満ちたあなたのチャレンジを、力強くサポートしてくれる懐の深いモデルです。
あなたのフューチュラ選びをさらに深めるために
ドイター フューチュラ21 SL/24/25 SL/30 SLの違いとは?の関連動画



言葉や写真だけでは伝わりきらない、実際の質感や背負った時の雰囲気、ポケットの使い勝手などを確認するには、動画が非常に有効です。ぜひ、以下の動画を参考にして、イメージを膨らませてみてください。
メーカー公式
メンズ向けですが
非常にわかりやすく解説!
ドイター フューチュラ21 SL/24/25 SL/30 SLの違いとは?のよくある質問
Q. レインカバーは付属していますか?
A. はい、ご紹介したすべてのフューチュラシリーズのモデルには、視認性の高いカラーの専用レインカバーが本体下部の専用ポケットに内蔵されています。出し入れも簡単で、急な雨でも慌てずスマートに対応できるのは、とても心強いポイントです。


Q2. SLモデルは男性でも本当に使えますか?
A. 可能ですが、設計思想が異なるので、実店舗で試着して確認することをおすすめします。
Q. ハイドレーションシステムには対応していますか?
A. はい、すべてのモデルが3.0Lまでのドイター製ハイドレーションシステム「ストリーマー」(または他社製の同等品)に対応しています。バックパック内部の背中側に専用のポケットがあり、ショルダーストラップの付け根から給水チューブを出すための排出口(H2Oの刺繍が目印)が備わっています。
Q. サイドのポケットには何が入りますか?
A. 両サイドには伸縮性の高いストレッチメッシュポケットが備わっています。ナルゲンボトルのような太めの1Lボトルや、折りたたみ傘、トレッキングポールなどを収納するのに便利です。行動中に頻繁に出し入れするものを入れておくのに最適です。
Q. 修理やパーツの交換は可能ですか?
A. はい、ドイターはアフターサービスも充実しています。正規取扱店を通じて、バックルなどの破損したパーツの交換や、生地の破れなどの修理(有償の場合あり)を依頼することが可能です。長く大切に使い続けられるという点も、ドイターを選ぶ大きなメリットの一つです。
全体のまとめ
- フューチュラは、背中の蒸れを劇的に減らす「エアコンフォート」システムが魂です。
- SLモデルは、背面長が短く、女性や小柄・細身の男性に最適なフィット感を提供します。
- フューチュラ21SLは、軽快さが魅力で、気軽に楽しむ日帰りハイクの最高の相棒です。
- フューチュラ24は、日帰り登山に最適な容量と機能を備えた、信頼のスタンダードモデルです。
- フューチュラ25SLは、SLフィットを求める方の、趣味の道具も運べる万能選手です。
- フューチュラ30SLは、夏の小屋泊や長期旅行など、冒険の幅を広げる頼れるパートナーです。
- 最高のフィット感を得るには、性別にとらわれず、店舗で実際に背負ってみることが不可欠です。
- 全モデルに専用レインカバーが標準装備されており、いかなる天候でも安心感が違います。
- 環境と人に配慮したサステナブルな製品を選ぶことは、未来への投資にも繋がります。
- どのモデルを選んでも、あなたのアウトドアライフがより豊かで快適になることは間違いありません。
実売価格



フューチュラシリーズの実売価格は、モデルや販売店、時期によって変動します。長く使える大切な道具ですので、価格だけでなく、フィッティングなどのサービスが充実した正規取扱店での購入もおすすめです☆
Amazon、楽天では大型イベントセール、タイムセール、値引きクーポン、ポイントアップキャンペーンで実質売価は変動します。
フューチュラ 21SL
amazon・楽天の口コミ
- フィット感:21リットルは秋冬登山では、若干小さく荷物がいっぱいいっぱいになってしまいますが、長時間歩くような普段のお出かけでも使いたく、こちらに。背面パネルのせいで、背中がカーブしている収納部で荷物が入れづらいと思うかもしれませんが、荷物が中でぶれなくなり、バックパックがより振られなく済みます。下に収納したものは取りづらいかもしれませんが、、、小物などは前面側に収納もできるため、あまり苦にはならなかった。ただ、ウエストポケットが付いていても良い方はワンサイズ上の25リットル購入された方が良いかと思います。私的には荷物が重くなると登山の負荷もかかるため、21ℓで収まるくらいに荷物をコンパクトにすれば良いかと思っています。
フューチュラ 24SL
amazon・楽天の口コミ
- 軽めの登山用に:フィット感半端ないです。両腕もスムーズに動かせるし、背中が蒸れない、中にモノを詰めていても重さを感じないです。買って良かったです
フューチュラ 25SL
amazon・楽天の口コミ
- 日帰りのハイキング・登山にちょうどいい:妻の誕生日プレゼントに送りました。日帰りの登山にちょうど良いサイズで、使い勝手がいいです。基本的には同サイズの男性用と同じ造りになっていて、ウェストのベルトにジッパーのポケットが付いています。小銭入れなどをここに入れておけば、リュック以外にバッグを持つ必要がなくなるので便利です。また、メッシュのバックプレートが入っているので、夏場など汗をかいたときに、荷物が湿らないのはいいですね。
フューチュラ 30SL
amazon・楽天の口コミ
- good:子供が使うので購入。使い心地いいようです。